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2009年06月05日

FAB4-071:YES IT IS

Bridge School Concerts, Vol. 1 ジョン・レノン全仕事1 ア・ハードデイズ・ナイト〜世界を抱きしめて (小学館文庫)


 w & m:LENNON / McCARTNEY

 P:ジョージ・マーティン
 E:ノーマン・スミス
 2E:ケン・スコット(2/16、2/18)、ジェリー・ボイズ(2/16)、マルコム・デイヴィス(2/23)
 録音:1965年2月16日(take 14)
 MONO MIX:1965年2月18日
 STEREO MIX:1965年2月23日

 1965年4月9日 シングル発売、パーロフォン R 5265(モノ)


「此のB面を聴けっ!」

と萩原健太氏声で怒鳴りたくもなる、ジョン・レノン作の傑作ロッカ・バラッド。此の楽曲は、長い間、オリジナル・フォーマットでは「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」のシングル盤B面でのモノラルしか聴けませんでした。彼等は、アルバム「HELP !」には此れも、後述するシングル盤「HELP !」のB面曲で在る「I'M DOWN」も収録しなかったのです。潔いぜ、ビートルズ!当然乍ら守銭奴キャピトルはそんな事は知らぬ顔で「BEATLES VI」なる編集盤に疑似ステレオを捩じ込みます。そんな経緯から、此の楽曲のリアル・ステレオ・ヴァージョンは、なな、なんと制作されてから23年後に「PAST MASTERS VOL.1」で初めて公開されたのでした。「PAST MASTERS VOL.1」には此の楽曲の兄弟みたいなレノン作の「THIS BOY(こいつ)」のリアル・ステレオ・ヴァージョンも初収録され、其れは事件でした。現在では容易に聴けますが、僕たちは其れまで血眼になって探したのです。有り難みが全く違います。

録音に5時間!も掛けた入魂作で、其の内の3時間を費やしたのが「ジョン、ポール、ジョージによる三声コーラス」です。ジョン・レノンの「THE BEACH BOYS」への、いやさ「ブライアン・ウイルソン」への赤ら様な対抗意識が伺えます。ジョージによるトーン・ペダル・ギターも哀愁に満ちて素晴らしいです。当初よりシングル候補として「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」と争った名曲なのですが、両面を制してしまったボス:ジョニーは「こっちはボツな」と敢え無く「只のB面のみ収録作」へと決断し実行しました。ジョンって、すげえ、、、理由は単純明快で「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」の方が断然革新的なサウンドだと確信したからでした。

ジョン・レノンと云う奇才は、平気で自作をボツにします。後の「ACROSS THE UNIVERSE」やアノ「JEALOUS GUY」の原曲で在る「CHILD OF NATURE」すらも、ポールやジョージの曲を世に出す為に捨てたのです。驚くべき事に「CHILD OF NATURE」は、2009年の現在でも公式音源では未発表です!そんな未発表音源が、未だ未だ沢山あるのですよ。「小野洋子さん、何卒、宜しく!」此の佳品もそんなジョンの審美眼から「埋もれた名曲」にされました。「ポールは確かに美しい旋律を書くけど、俺だって昔から『THIS BOY』とか『YES IT IS』とか書いたんだぜ。ま、たかがB面だから聴いた事ないだろうけどさ」と生前のジョン・レノンは悪戯っぽく笑って語りました。カッコいいナァ。


(小島藺子)



posted by 栗 at 12:11| FAB4 | 更新情報をチェックする