w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ノーマン・スミス
2E:ケン・スコット(9/29)、マイク・ストーン(9/29、11/4)、トニー・クラーク(10/26)
録音:1964年9月29日(take 19)
MONO MIX:1964年10月26日
STEREO MIX:1964年11月4日
1964年12月4日 アルバム発売(「BEATLES FOR SALE」 B-5)
パーロフォン PMC 1240(モノ)、PCS 3062(ステレオ)
1964年9月29日、過密スケジュールをこなし、約一ヶ月半振り(同年8月14日以来!)アビイロード・スタジオで「BEATLES FOR SALE」の録音に臨めた彼等は、未だ前作同様に「全曲オリジナル作品で!」と強く望んでいたと思われます。其の証拠に、此の日録音されたのはB面で仲良く並ぶ三曲「EVERY LITTLE THING」、「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」そして「WHAT YOU ARE DOING」の「レノマカ新作!」でした。しかも御丁寧にアルバムの曲順通りに進められており、時間的余裕の無さが明らかに感じられます。
結局、19テイクにも及んだ此のジョン・レノン作だけが何とか完成し、「EVERY LITTLE THING」は前出の通り翌日に手を加えられ、「WHAT YOU ARE DOING」に至っては、なな、なんとアルバムのモノラル・ミックスが行われた10月26日に「リンゴのうた」と同様にギリギリで最録音されます。其れに関しては、次項で大いに書き倒しましょう。如何にも此の時期のジョンらしい斜に構えた作風です。路線はA面での「負け犬宣言!新生ジョン・レノン」です。19テイクも重ねたものの、未だ未だジョンは納得がいかなかったでしょう。此のジョン・レノン作品には、原石状態で放り出された様な感も在ります。一寸デモっぽいって云うのか、裸なジョンが感じられます。されど「LOST LENNON TAPES」が魅力的な様に、ジョン・レノンには「未完成」をも「作品」にしてしまう「天賦の才能」が在ります。
此のアルバム用に、ジョージが「YOU KNOW WHAT TO DO」と云うオリジナルを書きデモを録音した事実は、現在では「アンソロジー 1」で容易に聴けます。当時のジョージは「WITH THE BEATLES」収録の「忘れたい過去」の駄曲「DON'T BOTHER ME」での屈辱からか自作は其れっきりになり、得意のカヴァー曲や兄貴:ジョニー作品で逃げていました。でも、追っかけジョージは懸命にジョンに学び習作を続けてもいました。次作アルバム「HELP !」では、満を持してジョージ作品が二曲も採用されます。其れが、ジョンが教え手助けをした成果だった事が現在では知られています。ジョンはジョージを可愛がっていました。実際、解散間際でも「ジョージの曲が俺やお前の書いた曲より採用率が低いのは問題だろ?」と相棒ポールに詰め寄るジョン発言が遺されています。
「I NEED YOU」と「YOU LIKE ME TOO MUCH」がアルバム「HELP !」に採用されますが、其の中のひとつで在る「YOU LIKE ME TOO MUCH」が、此の「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」にとても良く似ています。「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」でも、ジョージがジョンに寄り添うように歌っており、「YOU LIKE ME TOO MUCH」でジョンはエレクトリック・ピアノでアシストしています。未完成で放り出した「パーティー」を「そのまま」に出来ず、ふたたびジョージ作品として焼き直したのではないのかしら?と思えてなりません。其れが「ジョンらしいリベンジ」だったと思えるのです。
(小島藺子)
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