w & m:CHUCK BERRY
P:ジョージ・マーティン
E:ノーマン・スミス
2E:ジェフ・エマリック(10/18)、トニー・クラーク(10/26)、マイク・ストーン(11/4)
録音:1964年10月18日(take 1)
MONO MIX:1964年10月26日
STEREO MIX:1964年11月4日
1964年12月4日 アルバム発売(「BEATLES FOR SALE」 A-4)
パーロフォン PMC 1240(モノ)、PCS 3062(ステレオ)
1964年10月18日、ビートルズは追い詰められていました。8月11日に「BABY'S IN BLACK」で始まったセッションは、続いて8月14日の「I'M A LOSER」、「MR. MOONLIGHT」、「LEAVE MY KITTEN ALONE」と、明らかに「ジョン・レノン劇場」として進みます。然し乍ら、1964年の彼等は余りにも多忙でした。次に彼等がアルバム録音を敢行出来たのは、9月末です。10月に入っても全英ツアーが始まり、最早オリジナルを中心とした新作をクリスマスまで間に合わせるのは不可能となります。既に、オリジナル楽曲は10曲が録音終了していましたが、半数は未だ未完成の状態でした。しかも例によって「I FEEL FINE」と「SHE'S A WOMAN」はシングル化するのでアルバムには収録しない事になったのです。傑作カヴァー「LEAVE MY KITTEN ALONE」もボツになりました。時間が無い!!レノンは、決めた。「カヴァーだ、残りはカヴァーでやろう!」と。
そして、彼は「英雄:チャック・ベリー」の其の名も「ロケンロール音楽」を、正真正銘のスタジオ実演一発録りで決めました。此の日は後述しますが、ポールにもジョージにも基本的には一発録りをさせました。此のカヴァーは、ビートルズの四人にピアノ担当のマーティンを加えたの五人でライヴ録音されたのです。オーバー・ダビングなど全く無く、生演奏そのまんまが記録されました。オリジナルのチャック・ベリーを聴いた事が在るのなら、此のジョン・レノン主導による「1964年のビートルズ」のカヴァーが如何に凄いのかがお分かりでしょう。確かに、此の世界に「ロケンロール」を創造したのはチャック・ベリーです。3コードの其れを演れば、所詮はチャック・ベリーの模倣に過ぎません。チャック・ベリーこそが「ロケンロール」を発明した創始者です。だからこそ、レノンは後に「マイ・ヒーロー!」と紹介し、只のファンになってしまい、「お前の歌だぜ!」と云われて一緒に歌った「JOHNNY B GOOD」で涙目になってしまいました。
されど、レノンは間違いなく「英雄」を超えました。此の楽曲は多くのレノンによるカヴァー同様に「ビートルズのオリジナル作品」と思われている人も多く存在するでしょう。来日公演の一曲目も此れでした。「世紀の天才歌手:ジョン・レノン」の才気を見せ付ける美しい奇跡の名唱です。「BEATLES FOR SALE」は、奇妙な作品集になりました。オリジナルでは基本的には暗い内省的な「ジョン・レノン劇場」で在り、カヴァーでは溌剌としたみんなのアイドル「ジョニー」が居ます。何にせよ、ジョニーは絶対的な王者でした。最早、彼の類い稀なる声だけで音楽になってしまった。此の時代に多くのビートルマニアが熱狂したのは「ジョン・レノンの声」です。
(小島藺子/姫川未亜)
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