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2006年03月22日

「素晴らしき世界」

スウィンギン・キャラバン


1.「いっひっひっ」

小島麻由美の一年半ぶりの新作アルバムが、一週間前に発売されていました。あたくしは勝手に「NIAGARA TRIANGLE VOL.1」の30周年盤と同じ「321」のナイアガラ記念日に発売されると勘違いしていて、本日ノコノコと買いに行きましたよ。すると、もうとっくに出てたって話じゃまいか。で、ナイアガラより先にコジマユを開封すると、7月のライヴ先行もとっくに始まっているって。そー云えば、最近、コジマユの公式も見てなかったと思い、慌てて覗くと「ミニ・ライヴ」や「ゲスト出演」もがんがんやっているじゃないですか。18日に渋谷で別のコジマさんを観ていた時も、隣の原宿でミニ・ライヴをやっていたんですね。どうやら、あたくし、バレンタイン・ライヴ告知以来2ヶ月くらい見てなかったみたいですよ。

 「 コ ジ マ ユ 正 直 す ま ん か っ た 」 

新作「スウィンギン・キャラバン」は、バックも御馴染みのメムバーで、プロデュースも毎度のことながらコジマユのダーリン(これってオフレコらしいのだけど、何故隠すのか不明です)で、一聴して「小島麻由美」と分る独特の世界が展開されています。

それなのに、なぜ、こんなにも「胸がときめいて」しまうのだろう。どの曲も、いつか聴いたメロディー。何度もレコードで、ライヴで聴いた懐かしさすら感じる「コジマユの声」。当然ながら、新作では「ラストショット!」や「サマータイム」の様な、曲の展開がくるくる変わる「コジマユ・ミュージカル」とでも呼びたい新機軸もしっかりとあります。「トルココーヒー」の「これでもかっ!」と畳み掛けるリフレインや、「みずうみ」の淡くて脆い美しさにも、益々磨きがかかっています。それでも、ここで聴ける「小島麻由美」は「KOJIMA MAYUMI’S PAPERBACK」のおまけCDで聴ける10代のデモ音源での瑞々しさを、いまだ保ち続けているのです。

10曲で「39:15」。CDをセットして、この表示をみるだけでも、あたくしは小島麻由美の新作を買って良かったと思います。そこから始まるのは、あたくしにとって「愛する音楽のすべて」なんです。「コジマユの美意識」は、決してあたくしを裏切らない。愛しの小島麻由美さん、素敵な新作をありがとう。7月のライヴで、またお逢い致しましょう。


2.「素晴らしき世界」

小島麻由美の新作「スウィンギン・キャラバン」は、傑作だと思います。最近のあたくしにしては、珍しくヘビロ状態になってしまいました。現在までの彼女のアルバムは僅か那奈枚です。他にライヴ盤とシングル・コンピ盤がそれぞれ1枚ずつ在ります。ライヴは当然すべて別テイクでスタジオ未発表曲入り、シングル集もアルバムとは別テイクを含む上に、至上の名曲「ぱぶろっく」など「何故ボツ音源だったのか分らないレア・トラック入り」ですので、この9枚はすべて必聴盤であります。更に言うなら、その「Me And My Monkey On the Moon〜Singles and Outtakes〜」以後に出たシングルにもすべてアルバム未収録曲や別テイクが満載なので、新たなコンピ盤でも出ない限りはすべて疎かには出来ません。

何故なら、小島麻由美には「駄作」や「捨て曲」がないからです。それを自ら証明したのが、昨年発売された「KOJIMA MAYUMI’S PAPERBACK」でした。あんなもんは、ただの「落書き帳」です。しかし、それを書いたのが「小島麻由美」だから「作品」になってしまったのです。最近は、どいつもこいつも「アーティスト」を名乗りますけど、あたくしが日本の大衆音楽家で紛れも無い「アーティスト」だと思うのは、「小島麻由美」しかいません。何故なら、彼女は「曲を書いて歌うことでしか生きていけないひと」だからです。今回の作品を聴いて、あたくしはあの「ブライアン・ウイルソン」を彼女に重ねてしまいました。

ブライアンの娘たちは、かなり変わった父親のことを恨んでいた時期もあったそうです。でも、自分たちも同じ音楽の世界に身を投じて、父親を許す気持ちになったのだそうです。曰く「あたしたちのパパは、美しい音楽を作るために生まれて来たの。」

小島麻由美も「美しい音楽を作るために生まれ」そして「生きている」のでしょう。なにより感動するのは、小島さんだって舞台裏では創作の苦悩もあるとは思うのに、そんなことはまったく感じさせないトコですね。無理をしているって思わせないんだから凄い。以前、半引退状態になった時期もあったのですけど、ホントに「花火をみてた」だけだったんじゃないのか?と思いますよ。きっと、そうだったんでしょう。

あたくしは英語のうたが大好きです。でも「小島麻由美」を聴いていると「この国に生まれてよかった」と、しみじみ思えるのです。「嗚呼、世界は美しい。」そんな幻が、本当だって信じられるんです。


(小島藺子/姫川未亜)

初出「COPY CONTROL」2006-3-21〜3-22 全2回連作



posted by 栗 at 21:01| ONDO | 更新情報をチェックする