w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン(1963、1966)
E:ノーマン・スミス(1963、1965)ジェフ・エマリック(1966)
2E:ジェフ・エマリック(1963)、ロン・ペンダー(1965)、マイク・ストーン(1966)
録音:1963年10月17日
MONO & STEREO MIX:1963年10月21日
STEREO MIX:1965年6月8日、1966年11月7日
1963年11月29日 シングル発売(最高位英米1位)
パーロフォン R 5084(モノ)
前出の通り彼らのセカンド・アルバム「WITH THE BEATLES」には、大ヒット・シングル曲が全く収録されませんでした。アルバムと同時期に録音されたのは「FROM ME TO YOU」、「SHE LOVES YOU」、そして「I WANT TO HOLD YOUR HAND(抱きしめたい)」と、それぞれのB面曲です。デビュー盤「PLEASE PLEASE ME」の二番煎じでも十二分に売れたはずですから、其の6曲に新録8曲でアルバムにすれば事足りたし、みんなそうやってアルバムを作っていました。されど、ビートルズにはそんなこたぁ出来なかったっ!
此の世界制覇を成し遂げた楽曲は、彼らにとって初めての「4トラック・レコーディング」でした。ゆえに、音の感じが「WITH THE BEATLES」とは全く違っています。ま、つまり此処までは全部「2トラック」だったわけでして、其れもすぎょい話です。本国英国では「WITH THE BEATLES」が発売された僅か一週間後にリリースされました。当時のファンにとっては夢の様な展開です。全曲新録音のアルバムを買って聴き狂っている時に、超ド級の新曲が発売されたのです。翌1964年、彼らは遂にアメリカを制覇します。全米チャートで英国のバンドが首位を獲得したのは二度目でした。初回のトーネイドーズによる「テルスター(1962年、プロデュース:ジョー・ミーク)」はインストでしたから、歌ものとしては史上初の快挙でした。
ビートルズの「世界規模での人気爆発!」は、正に此の「抱きしめたい(なんと云う素晴らしい邦題!)」から始まりました。ゆえに「WITH THE BEATLES」と同じジャケット写真を使った米国キャピトルでのデビュー盤「MEET THE BEATLES !(1964年)」でも、日本デビュー盤「ビートルズ!(1964年)」でも、A面一曲目は此の曲でした。ロバート・フリーマン撮影の有名すぎるハーフシャドウの四人のモノクロームのポートレートを使った三つ子の様な英米日の三枚のアルバムの中で、特にリアルタイムで聴かれた日本人にとって最も愛着が在るのが日本デビュー盤「ビートルズ!」でしょう。
かつては各国盤が勝手に編集されて居て、特に初期は米国や日本以外でも様々な編集盤が出ています。其の中でも、選曲に於いてベストなのが「ビートルズ!」だと思います。内容は、1963年までのベスト盤と云って良いでしょう。「LOVE ME DO」から「抱きしめたい」までの英国オリジナル・シングルA面5曲を完全収録し、他の9曲は「PLEASE PLEASE ME」と「WITH THE BEATLES」から選りすぐりの全14曲!モノラルで「盤落としだった!」なんて噂も在りますが、世界制覇前夜の彼らを壱枚に凝縮した名編集盤だと思います。実際、此処までの連載中に最も繰り返し聴いたのが「ビートルズ!」でした。敬愛する「キヨシちゃん」こと「忌野清志郎」先生は語ります。「ビートルズはさ、信じられたんだよ。だってさ、ストーンズのアルバムを買うと、曲がダブってんだよ。詐欺じゃねーかって思ったよ。ビートルズはダブらないんだよね。だから、信じたんだ」
此の曲は、後に語るドイツ語版も含めて、基本的にはすべて同一テイク(第17テイク)が元になっています。ゆえに、テイク違いは在りません。現在、最も容易にCDで聴けるのは「1966年のステレオ・ミックス」で、其れは未CD化の英国公式ベスト盤「オールディーズ(1966年)」の為に作られたミックスです。1963年当時、いや、解散間際まで彼らのシングル曲の多くは英国オリジナル・アルバムには収録されなかったのです。そして、其れらの楽曲はモノラルでした。初の「4トラック」に挑んだ「抱きしめたい」ですら、ステレオ・ミックスを制作したものの発売されなかったのです。其れでですね、米国じゃアルバムに入れたいわけですよ。てなると「疑似ステレオ」ってのを捏ち上げなきゃならんわけだ。「レコーディング・セッション」での記録だけで三回もステレオ・ミックスが行われていますから、無法の世界だったCD化以前の各国盤では「なんじゃ、こりゃ?」的なミックスも多発しました。此の曲で最も有名なのは、演奏と歌が左右に別れた「オーストラリア再発シングル盤」でしょう。
此れは、掛け値なしの文句なしの名曲です。こんな会心作をアルバムには収録しなかった「志の高さ」と「自信」は何だ?レノン色が強く感じられますが、紛れも無い「レノン・マッカートニー」の合作です。ジョン・レノン23歳、ポール・マッカートニー21歳、遂に彼らは天下を穫りました。アメリカ上陸し、憧れのゴフィン&キングに逢います。そして、此の曲の歌詞を「空耳」したボブ・ディランに出逢う事となりますが、其れはもう少しだけ後のお話です。それにしても、邦題を「抱きしめたい」と意訳したセンスは抜群ですね。但し、其の素晴らしいセンスが発揮されたのは此の曲だけでありました。何せ、B面は「こいつ」ですからね。
(小島藺子)
初出:「COPY CONTROL AGAIN」2008-7-2
REMIX-1:「COPY CONTROL」2008-10-2
(and this is REMIX-2 by 小島藺子
初出:「COPY CONTROL AGAIN」2008-7-2
REMIX-1:「COPY CONTROL」2008-10-2
(and this is REMIX-2 by 小島藺子
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