9月9日は「九ちゃんの日」です。
あたくしは昔「坂本九のCDを置いてないお店ではCDを買わない」と公言していたことがある。其れは「坂本R」や「坂本F」のコーナーがあるうえ「さかともE」のコーナーまであった時代の話だ。
おい!なんで肝心の「九」がないんだよ。ふざけんな、店は此処だけじゃねぇーんだよ、いいいよいいよ他所で買うって。いや、別に「九」が欲しいんじゃないんだよ、うん、でも「九」を置いてない処では買わないんだ。なんで?だってさ、ジョン・レノンだって#9なんだよ、え?わけわかんない?いいよ、もう。
もっともっと遥か大昔、カッコつけて「FEN」ばっか聴いていた頃があったんだ。ビルボード新旧のヒット曲がガンガン聴けて、DJ が英語だから逆に耳障りも良く(よーするに音楽の邪魔にならなかった)そんなこんなで間違って英語を専攻したりもしたんだ。でも確かに、あの頃は「洋楽と洋画がすべて」だった。
そんな捻くれた10代のあたくしが「FEN」で「唯一聴いた日本語のうた」が「スキヤキ」だった。あの時の衝撃は忘れられない。考えてみてほしい。DJ も掛かる曲も全部英語なんだよ、ずっと其ればかり聴いて過ごしていたんだよ。少なくとも、ひとりの時間は頭の中は「英語でいっぱい」だったんだ。
突然♪うえほぉむふいて あるこぉおんうぉうぉ ぬあみだが こぼれぬぁいよほほに♪と「明らかに英語ではない」しかも「在る意味、日本語でもない」不可思議なうたが流れた。そのうたは当然知っていたけれど、そして外国でも有名だとかアメリカでもチャートで一位になったくらいの知識はあったけれど、本当に同じ処で他のアメリカン・ポップスと肩を並べているんだってことが分かってしまった。
前後の曲と比べてもまったく見劣りしなかったし、いや、なにより感動してしまったんだ。「おい!FEN で、日本人が、日本語で歌ってたぞ!!」と、PRIDE で小川を応援するみたいに、オリンピックでナショナリズムに燃えるように、あたくしは単純に興奮してしまった。
だからせめて日本のCD屋さんなら、ベスト盤くらいは置いてほしい。「世界のサカモト」は、教授だけじゃないんです。
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)