なんとなく、連載っぽくなって来ました。「J-POP」が日常化して、ロックやポップスばかりか「R&B」だろーが「RAP」だろーが「HIP HOP」だろーが「HOUSE」だろーが、すべからく「洋楽に日本語を乗せることなんて、当たり前」の時代に「何を御託を並べてるんだ?」と御思いの方もいらっしゃるでしょう。「日本語ロック論争」なんて30年以上も前の話を、今頃蒸し返してなんになるんだよ?と。でもあの「avex グループ」である「avex io」から今年3月に発売された「はっぴいえんど BOX」(IOCD-40051〜8)が、いくら初回限定生産とはいえ瞬く間に店頭から姿を消したのだからね。ありゃノスタルジーで済まされる売れ方ではないわけで、たぶん僕なんかより、10代や20代の連中が現在熱狂的にBOXを聴いているんぢゃないかなぁ。
生まれた時から「日本語で歌う洋楽を源流とする音楽」を聴いて育った人たちは、「はっぴいえんど」の何処に衝撃を受けているんだろう?特に「ゆでめん」が良いと言う意見が、たまたま僕が一寸薦めてBOXを購入した若いふたりの友人双方から出たことを彼等のサイトで知った。此れは「にやり」だ。
「はっぴいえんど」と言えば、普通「風街ろまん」だろう。彼等のオリジナル・アルバムは3枚しかなく、もっと言うなら2枚目の「風街ろまん」を完成させた時点で目的を達成し解散していたも同然。勿論「風街ろまん」は傑作だし、この作品で「日本語でも洋楽と同じ音楽が出来る!」と証明されるのだが、此れはロックなのか?いや志はロックだが、其れを継承したのは「ニューミュージック」と言う今や「死語」となったジャンルだった。まぁ、別にロックにこだわるわけではないけどね。
「ゆでめん」には在った日本語と洋楽の融合による「違和感」が、「風街ろまん」には希薄なんです。だったら其れで良いぢゃないか、時は過ぎ「ニューミュージック」が「J-POP」になって、めでたしめでたし。いやぁ、そんな簡単なことぢゃない。「ゆでめん」のぎこちなさは、何だったんだ?あの「変な日本語」こそが僕らを熱くさせていたんぢゃないのか?
「ヒッパレ」や「GS」、日本語のフォークにロック、ニューミュージック、そして現在でも洋楽との決定的な違いが「僕らのJ-POP」にはある。すべてではないにしろ、こんなに他国語(特に英語)をタイトルや歌詞に多用する大衆音楽を持つのは「日本」だけだろう。ヒット・チャートを見てみよう。此処は日本なのか?外来語で済む問題なのか?
「わかるだろ you know この気持ち you know そうさ 今恋をみつけた」
(ほり・まさゆき「アイ・フィール・ファイン」1965年)
「Touch いつでも探していた Necessary I know you're my sweet 眩しい君に逢えた」
(片瀬那奈「Necessary」2003年)
「日本語ロック論争」は、まだ始まってもいない。
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)