ポールの名曲「MY LOVE」(1973) と「EBONY AND IVORY」(1982) は、共に3月29日に発売されたと「レコード・ダイアリー2005」に書いてあった。大したことじゃないかもしれないけれど、ポール史を考えると一寸だけ意味があるね。
「MY LOVE」は、WINGSとしては初の全米1位になった曲。信じ難いことだけど、当時は「ビートルズを解散させたのはポールだ」なんて話がまかり通っていて、アルバムは酷評つづきで「ポールもうだめぽ」と云われていたのだよ。今でこそ宅録「McCARTNEY」や傑作「RAM」、荒削りな「WILD LIFE」と評価されているけどさ、リアル・タイムじゃゴミ扱いだったのよ。ジョンやジョージは当然ボロクソに貶してたけど、あのリンゴごときにまで「ポールは自分の才能をスポイルしてる」とか云われててな。でも、「MY LOVE」みたいなのを出されたら、どいつもこいつも文句云えなくなっちゃったわけだ。んでもって、今度は「ポールは甘いバラッドしか書けない」と批判されるんだけどさ。「MY LOVE」のひとつ前には、御下劣ロケンロール「Hi,Hi,Hi」を出して放送禁止喰らってるっつーの。ぶぉけっ!
「EBONY AND IVORY」は、WINGS解散後初の全米1位になった曲で、よーするにジョンがいなくなってソロになったポールの再出発ってことだな。其処でスティーヴィーと組むわけだけど、今でこそ、こーしたコラボは珍しくないけどさ、当時はそりゃもう大騒ぎだったんだよな。此れはポールの単独作品で、ソロもあるんだけど、相方にスティーヴィーってのがスゲーなぁと思うよ。ベタすぎることをやれるってのも才能なんだよね。よーするに此処一番って時には、キチンと名曲を書いてしまえるひとなんですよ。うん。
そんな日に全女が崩壊したりもするわけだが、お友達の御誕生日だったりもするんだな。
愛するきみへ「F+/A」を贈ろう。僕は「MY LOVE」で、此の不安定で美しいコードを覚えたんだ。
初出「COPY CONTROL」 (姫川未亜/小島藺子)