きょうも、イコおねえちゃんといっしょに「あかさかあくとシアター」にいった。
それは、ぶたい「フラガール」をみるためです。片瀬那奈ちゃんがしゅやくをやっているので、イコおねえちゃんはしごとをやすんで、「あかさかあくとシアター」はぜんぶみるといった。ぼくは「そんなのむりじゃん!」とおもったけど、イコおねえちゃんはかいしゃをヤメてしまって、ほんとうにまいにち「あかさかあくとシアター」にいくようになったので、ぼくはびっくらこいただ。
イコおねえちゃんは、ぶたい「フラガール」がないひと、ぶたい「フラガール」がよるしかないひいがい、ぜんぶやすみにしてしまった。それではせいかつしてゆけないから、イコおねえちゃんは、まいにち、ぶたい「フラガール」がはじまるまえに「たからもの」をうりはじめました。たいせつなほんやレコードも、どんどんうった。きょうは、エレキベースまでうってしまった。ちゅうがっこうのときから、ずっと「あたくしは、ベーシストなんだよ」といっていたのに、うっちゃった。
「くりぼう、おねえちゃんはさ、もう片瀬那奈ちゃんのグッズいがいはぜんぶいらないんだよ」といったけど、「りんごちゃんベース」をうったあとで、イコおねえちゃんはないていたのを、ぼくはみてしまいました。でも、イコおねえちゃんはすぐにわらった。そしていった。「くりぼう、さっきのがっきやさんもいってたでしょ?あのベースはへんなおとしかでないって。だから、すぐにあたらしいのをかってあげるから、だいじょうぶ」
イコおねえちゃん、ぼくはベースはひけないよ。ひくのは、未亜おじさんじゃん。「あっ。もしかして、イコおねえちゃんは『未亜おじさんのベース』をうっちゃったの?」と、ぼくはきいた。イコおねえちゃんは「えっ?なんのことかしら?」といって、まちがいなく「未亜おじさんのたいせつなベース」をうったおかねでかった「カロリ」をいっきにのみほして、こういった。
「だって、未亜たんだって、そうしろっていってくれっがらっ!」
「おまいは、ねもとはるみサンかよ。」とぼくはおもったけど、たしかに、未亜おじさんは「イコおねえちゃんのいいなり」だから、これでいいのだ。てか、さっきのは「うそなき」かよ。
げきじょうについて、いちばんさいしょにはいったイコおねえちゃんは、タバコをすいながらなんども「うっぴーサン」にでんわをした。イコおねえちゃんは、「もう、うっぴーったらなにやってんのよっ!きょうは『ていこくにこいっ!』っておしえたでしょ?アレでわかんないなら、とっとと那奈ヲタなんかやめちまえっ!」と、ぶたいで片瀬那奈ちゃんがやっている「まどかせんせい」そっくりないいかたで、はきすてました。
「フラガール」のかわいいバッチがもらえることになっていたから、イコおねえちゃんははやくいった。でもさ、それなら、ちゃんと「うっぴーサン」にせつめいすればいいのにね。ぼくがそういったら、イコおねえちゃんは「うっぴーは、ほかのれんちゅうとはちがうのっ!那奈ちゃんにおたんじょうびまでおぼえられているひとなんだから、ぜんぶいわなくっていいのっ!」といかりくるっちゃったので、ぼくはだまりました。でも、やっぱり「うっぴーサン」はかけつけて、ちゃんとバッチをもらっていました。よかったです。
12かいめの「ひらやままどかせんせい」をやった片瀬那奈ちゃんは、きれいでした。ぼくは、12かいもみたのに、きょうの片瀬那奈ちゃんがいちばんきれいだとおもった。
げきがおわったら、すぐにイコおねえちゃんとうっぴーサンがでぐちにいって、れいのばしょへむかいました。もう、こえもかけずに、まっすぐに片瀬那奈ちゃんのくるまがあるところへ、ひとごみをかきわけてまっしぐらにいきました。
フラガールズのおねえちゃんたちが、たくさんでてきた。シュガーちゃんがだれかをおみおくりしていた。ぼくたちのほうに、そのおじさんがきた。そしたら、イコおねえちゃんは、「あっ。こうかみサンじゃん!」といって、そのおじさんとなにかはなしていました。うっぴーサンは、なぜかあきれてそのばめんをみていた。なぜだろう?
「はなよりだんご」のおにいさんがでてきて、ちかくで「ルーキーズ」のイベントにきていたひとたちがきづいてしまって、いっぱいやってきた。
「きみこちゃんのおにいさん」は、げきもみていないひとたちにかこまれても、ぜんぜんイヤなかおをしないで、サインをしたり、いっしょにしゃしんをとったりして、じぶんでくるまをうんてんしてかえっていきました。「きみこちゃんのおにいさん」は、げきのなかでもやさしくって、片瀬那奈ちゃんをすきみたいだったので「ぼくとおんなじだ」とおもっていたのだけど、げきがおわっても「ほんとうにやさしいおにいさん」だとわかりました。うっぴーサンが「こーゆーときに、ほんとうのすがたがみえますね。あべつよしクンは、りっぱです」というと、イコおねえちゃんも「うん、かれはすばらしいね」といったけど、そんなのぼくだってわかったよ。だって、そんなのあたりまえじゃん。「きみこちゃんのおにいさん」は「ふつうのひと」なんだよ。なのに、なぜ、イコおねえちゃんとうっぴーサンはほめているんだろう?
「べんとうやさん」のくるまが、ずっとあって、おかあさんも、ふくださきちゃんも、「くまさん」も、だれもでてきませんでした。シュガーちゃんが、またでてきて、ぼくらをみていた。女子マネちゃんもでてきて、くるまからにもつをもってへやにはいった。そしたら、さっきシュガーちゃんといっしょだったおねえさんがでてきて、かかりのおじさんになにかいった。
それで、かかりのおじさんが、ぼくらにきかづいてきて、こういった。「片瀬さんは、きょうはべつのでぐちから、もうかえられたそうです。だから、もうまっていなくていいそうです。」
イコおねえちゃんとうっぴーサンは、それをきいたら、あんまりガッカリはしていなかった。あめがふってきていたのです。つよしクンいがいにだれもでてこなくって、いつもはすぐに「おべんとうのはいたつ」にいく「キチホンさん」ですらでてこなかったし、あしたはげきがおやすみだから、きっとみんなでどこかへいったのだと、ぼくはりかいした。
でも、かかりのおじさんがおしえてくれなかったなら、ぼくたちはずっとあめにうたれながら片瀬那奈ちゃんをまっていたでしょう。ぼくは、おもった。きっと、片瀬那奈ちゃんが、シュガーちゃんと女子マネちゃんにいったんだと。「あたしのファンがまっているでしょ?だから、もういないっておしえてあげて。そうしないと、みんなずっとまっていてくれるから」と。
うそぢゃないよ。だって、片瀬那奈ちゃんは、そういうひとです。ぼくは、しってる。那奈ちゃんが、すてきだってことだけは、わかる。「このせかいのなぞ」を、なんにもしらないけど、それだけは、しっている。それだけが、ぼくの「真理」です。
初出「COPY CONTROL AGAIN」 (くりぼう)