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2004年11月04日

「月刊・未亜 」mia30〈17歳〉

Babe(通常)  (CCCD)


次の瞬間、ぼくはパーティー会場に居ました。まだパーティーは始まっていない様で他に誰も居ません。其処は、大広間で長いテーブルの上には御馳走が山と積んで在ります。美しいワルツが流れて居て、シャンデリアがキラキラと輝いて居ます。ぼくはずっと何も食べて居なかったので「いただいちゃえ!」と大きな肉にガブリと噛み付きました。「これは旨いや」と近くに在ったワインを「ゴクリ」と呑みます。すると、どうでしょう。ぼくの隣には女のコが立って居ます。「あれれ?きみは誰?」と言ってぼくは自分の姿を見ると、長い耳のうさぎになって居ました。

「アナタハ、ナニモノナノ?」と彼女は言いました。ぼくは泣きそうな声で「ぼくは、さっきまでぼくだったんだけど、今は誰なのか分らないんだよ。だって今のぼくは、どうみてもぼくじゃない、只のうさぎだろ?」と言いました。彼女は黄金の林檎を食べると「うさぎ」を陵辱しました。

気が付くと「うさぎ」のぼくは野原で寝て居ました。すると目の前を、そいつが走っています。そいつはもう一匹ではなく行列をなして、ゾロゾロと走りながら歩いています。そして一番最後にはグリフィンが居ました。みんなでぼくを蔑んでいます。もうどうでもいいなって思いました。かつて「ぼく」だった「うさぎ」は、グリフィンと岩山の頂上まで競争することになりました。うさぎは耳を回転させて空を飛びました。きっと負けたらおしまいなのだろうなぁとうさぎは覚悟していました。


N:「此れは何?」
M:「ぼくが17歳の頃に書いた文章だよ」
N:「つづきは?うさぎはどうなったの?」
M:「うさぎは運良くグリフィンに勝ったって処で、絵物語は未完のままさ」


うさぎみたいな奴を連れて、ぼくが幻の街に現れたのに理由なんてなかった。きっとぼくは「うさぎ」を捨てられなかっただけなんだろう。指先ひとつで消してしまえる「うさぎ」を、ぼくは持っていたかっただけなんだろう。ぼくよりも先に彼女を求めて走る「うさぎ」を、ぼくは憎んだ。ぼくは結局「うさぎ」を埋めてしまった。彼女は「うさぎ」をつくったけれど、それだけだったのだから、ぼくに罪はない。そうだ、ぼくは悪くない。電車に揺られていると「あいつ」が隣に居た。気味の悪い声で話掛けてきた「あいつ」は、グリフィンだった。


N:「意味がわからないよ」
M:「ぼくが24歳の頃に描いた話だよ」
N:「つづきは?グリフィンはどうなったの?」
M:「彼女がグリフィンを殺したって処で、未完のままさ」


こいつとは気が合うんだ。急に思い立って海に行くことにしたのも、こいつとなら楽しいだろうって思ったからだ。海には彼女が待って居た。ぼくらは泣いた。こんな夢の様な時をずっと待っていたんだ。こいつが砂の上で転げて居るうちに、ぼくは海に走って居た。こいつは、ぼくを激しく怨んだけれど仕方ないことだ。海面から飛び立つ彼女を観たのは同時だったかもしれない。彼女は「此の世のモノではなかった」其れは知って居る気だったけれど、ぼくらは撃たれた。ぼくらはただ、海辺でひたすら呑んで居た。こいつは二三発ぼくを殴った。まぁ、其れは当然のことだろう。


N:「此れは何時の話?」
M:「ぼくが30歳の頃に経験した話だよ」
N:「あなたのことなんか、どーでもいいのよ。彼女はどうなったの?」
M:「今、僕の目の前に居るよ」


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ブライアン・ウイルソンの「SMiLE」を聴いて、ぼくは不可思議な気分になった。彼が24歳の頃に思い描いた音楽が、果たして此れだったんだろうか?いや、此れは此れで発表されるべき音楽だし、確かに感動した。でも、ぼくらは余りにも待ち過ぎた。此の作品が1967年に発表されていたらって幻想を抱き続けてしまった。沢山のブートを買って夢を見てしまった。挙げ句に、嗚呼あの当時のビーチボーイズで完成していたらなぁ、なんて思ってしまう。

此れはぼくが10代の頃の感想だけれど、「ペット・サウンズ」は面白くなかった。ぼくは「スマイリー・スマイル」に惹かれた「変なやつ」だった。「ペット・サウンズ」が素晴らしいと思ったのは20代になってからで随分と遅れていたのだけれど「SMiLE」指向のひとなんだから仕方ないのだと思う。いやもっと言うなら、ぼくはあの頃、初期のビーチボーイズが好きだったんだ。

ぼくはビーチボーイズのライヴを観たことが在る。当然ブライアンは居なかったけれど、カールの美声で多くの名曲を聴けたことを誇りに思っている。ブライアンがまた来日して「SMiLE」を演奏するのは嬉しいけれど、果たしてぼくはカール以外の声で「GOOD VIBRATIONS」を生で聴く必要が在るんだろうか?

ぼくには愛するひとが居る。ぼくはただ見て居るだけかもしれないけれど、ぼくは君たちを愛して居るんだ。でも、愛するひとが沢山居るってことは、きっと素晴らしいことなんだろう。ぼくはやっと此処まで来れたんだなぁ、と思うと嬉しいよ。


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 イコ:つまり「月刊・未亜」はおわりなんだな?

 未亜:はぁ?てか、姐御は完全引退のはずですけど、見たよ壮絶な最期。

 イコ:あたしが消えるわけねぇーだろ。消えるのはおまいだ罠。

 未亜:あのね、イコなんてマイナーなの。あたしはみんなのアイドルじゃけんのぉ。

 イコ:おーおー、ならええよ、全部バラす。おまいが如何に最低な奴かってな。

 未亜:やればぁ?んなこたぁみんな知ってます。ええ、ぼかぁ最低ですよ。へらへら。

 イコ:次回からは「イコXへび娘。」で行くんで、417くんよろぴく☆

 へび:あーい。

 未亜:姐御、腹話術やってんじゃねぇーよ。

 イコ:あーい。

 未亜:あーい。

 イコ:さて、しゃべってるのは誰かしら?ケラケラ

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初出「hilite」 (小島藺子/姫川未亜)



posted by 栗 at 00:15| MIAMIA | 更新情報をチェックする