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2009年04月05日

FAB4-015:FROM ME TO YOU

Greatest Hits From Me to You: Songs the Beatles Covered and Covers of the Fab Four's Songs


 w & m:LENNON / McCARTNEY

 P:ジョージ・マーティン
 E:ノーマン・スミス(3/5)
 2E:リチャード・ランガム(3/5)
 録音:1963年3月5日、MIX:1963年3月14日

 1963年4月11日 シングル発売(最高位1位)
 パーロフォン R 5015(モノ)


「1963年3月5日」

此の日は、そのまんま海賊盤のタイトルにもなっている程、所謂ひとつの「ビートルマニア」にとっては「特別な日」のひとつです。何故なら、此の日のセッションをすべて収録した音源が流出したからです。そーゆートンデモ音源が聴ける様になったのは、此の連載でもお世話になって居る「ビートルズ/レコーディング・セッション(THE BEATLES RECORDING SESSIONS)」なる書物が上梓された頃(1990年前後)からでした。

著者のマーク・ルウィソーンはEMIに残る膨大な未発表音源を聴く事を許され、彼らのレコーディング過程を死に物狂いで探求し、書物にしたのです。でも、悪いスタッフはいるわけでコッソリと秘蔵音源をコピーし、海賊盤業者へ売ったのでしょう。「ウルトラ・レア・トラックス」(1988年頃に出現!)と題された其れを聴いた時の衝撃を忘れられない片は、あたくしの「同志」です。其れは、所謂ひとつの「海賊盤業界」での「革命」でした。其れまでの「ブートレグ」とは、所詮は「紛い物」に過ぎず、音質も劣悪で音源の信憑性も薄い、正に「コアなマニアが騙されて買う如何様商品」でした。騙されて文句を云いたくとも、そもそも「海賊盤」の存在や売買が「非合法」なわけで、結局は消費者が泣き寝入りするしか無かったのです。其処に、本物の「レア・トラックス」が出現しました。紛れも無い本物のマスターテープから流出した「ビートルズのボツ音源集」に、僕らは目眩がした。其の衝撃は、後に公式発売された未発表音源集「アンソロジー」よりも上だったと思います。

さて、デビュー・アルバムを一日でやっつけたビートルズは、休む間もなく「ヘレン・シャピロの前座」でツアーをしていました。そんな時、未だアルバムも発売されていないのに三枚目のシングルを録音しなければならなくなったのです。ジョンとポールは、ツアー移動中バスの中で新曲を捏ち上げなければなりませんでした。其れが此の曲「FROM ME TO YOU」です。書いた日の五日後には録音です。つまり、此れは間違い無く「レノン・マッカートニー」作品なのです。完全なる合作です。

デビュー・アルバムを一日で録音させられた当時の彼らですから、シングルなんて当然、一発録りです。A面の「FROM ME TO YOU」、B面になる「THANK YOU LITTLE GIRL(仮題)」を続けざまに13テイクずつ演奏します。此の頃の録音は、全部「2トラック」です。午後のセッションで、カタチが出来ちゃいました。其れで、夜のセッションではもう壱曲録音します。其の曲は、結局「ボツ」になっちゃうんだけど、1969年に蘇るのでした。そう、其の曲とはサイコーなロケンロール・ナムバー「ONE AFTER 909」でした。

彼らの三枚目のシングル曲である「FROM ME TO YOU」は、遂に正真正銘、英国で首位を獲得します。今回は、本当ですよっ!ちゃんと「1」にも入ってます。「LIVE AT BBC」で聴けるように、ラジオ番組「FROM US TO YOU」のテーマ曲として歌詞を変えて使われてもいます。でもさ、此の曲って結構、渋いでしょ?マイナー進行だしさ。もうね、絶対に前作シングル「PLEASE PLEASE ME」と、此れが発売されるたったの20日前に発売されたアルバム「PLEASE PLEASE ME」による「絶対的な保証」が成した事だと思いますよ。つまり、もう英国のみんなはこう思ったんだよ。

「ビートルズには、ハズレは無いっ!」

当時其の動向を伺って居た米国人が、おそらくたった一人だけいました。

其の名は、「デル・シャノン」

日本では「街角男」として有名な彼は、ほぼリアルタイムで此の曲をカヴァーしました。英国公演で「街角男」の前座を務めた新人バンドに興味を持ち、おそらく世界で最初に「ビートルズをリアルタイムでカヴァーした」のです。しかも其れを「ビートルズ全米制覇」以前にスマッシュ・ヒットさせました。そんな「先見の明」を持つ「街角男」が、時は流れ「不幸な最期(拳銃自殺)」を迎える直前には、ジョージ・ハリスンと共にバンドを組んでいたのです。そして、たぶん最初に「ミックス違い」に気付いたのが此の曲だったと思います。いや、当時は「別テイク」だと思っていました。現在の様に研究本など無かった時代です。正に「耳こそはすべて」でした。ま、イントロにハモニカが入っているかいないかの些細な違いなのだけど、最初に其の違いに気付いた時の興奮は、今でも忘れられません。


(小島藺子/姫川未亜)


初出:「COPY CONTROL AGAIN」2008-6-17
REMIX-1:「COPY CONTROL」2008-9-14

(and this is REMIX-2 by 小島藺子)



posted by 栗 at 22:08| FAB4 | 更新情報をチェックする