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2009年03月23日

FAB4-002:P.S. I LOVE YOU

オリジナル・サウンドトラック 『P.S. アイラヴュー』 MEET THE BAD BOYS


 w & m:McCARTNEY / LENNON

 P:ロン・リチャーズ(9/11)、ジョージ・マーティン('63-2/25)
 E:ノーマン・スミス
 2E:A.B.リンカーン('63-2/25)
 録音:1962年9月11日
 MONO MIX:1962年9月11日
 STEREO MIX:1963年2月25日

 1962年10月5日 シングル発売
 パーロフォン 45-R 4949(モノ)

 1963年3月22日 アルバム発売、パーロフォン PMC 1201(モノ)
 1963年4月26日 ステレオ盤発売、パーロフォン PCS 3042
 (「PLEASE PLEASE ME」 B-2)


デビュー・シングルのB面も、ポールの曲が選ばれました。矢張り当時の慣例から、ビートルズも「ポール・マッカートニーとザ・ビートルズ」として売り出したかった上層部の思惑が伺えるチョイスです。初期の彼らでは、明らかにジョンの才能が突出していたのですが、何せ「天下無敵のジョン・レノン」です。EMIサイドが用意して居たデビュー曲候補の「HOW DO YOU DO IT」を歌わせたら「他人の曲なんかやってらんねーっ!」とばかりに投げっ放しでやる気を見せません。ちなみに「HOW DO YOU DO IT」は「Gerry & the Pacemakers」に回されジョージ・マーティンのプロデュースで英国1位の大ヒット曲となりますので、マーティンの選曲センスは全く間違っていなかったわけです。ただ、ジョン・レノンが「こんな曲でデビューするのは御免だ!」と嫌がったのですよ。

其の点、ポールはお利口サンでした。持って生まれた社交性を駆使し、まんまと自作曲でデビュー・シングル両面を埋める事に成功します。でも、ジョンはもっと上手でした。此の時のセッションで、彼は次のシングルとなり、初のナンバー1を獲得する曲を既に披露していました。其の曲は「PLEASE PLEASE ME」と云います。今更当たり前すぎて説明するのもアレなんですけど、「LENNON / McCARTNEY」(デビュー当時は「McCARTNEY / LENNON」だった!)とクレジットされた曲の大部分は、どちらか片方が書いた作品です。彼ら二人は、未だ10代の頃に「此れからは片方だけで書いた曲もすべて合作として発表しよう」と云う取り決めをしました。此の連載では「太字で記した方が主に書いた」としています。「P.S. I LOVE YOU」は、所謂ひとつの「此のB面を聴け!」的な名曲です。こっちをA面にするって話も出たそうですが、此れはB面だからこそ光る曲なのです。イントロなしで唐突に始まり、ジョンのコーラスをバックに間奏すらなく朗々と一気に歌い上げるポール節炸裂!の可愛い作品です。

確かに、後の例えば「I WILL」(1968)などに代表される「ホラね、書けちゃった、ボク☆」ってな感じの、所謂ひとつの「マッカ節」の発芽は此のB面にこそ在ります。されど、何故に「LOVE ME DO」がA面だったのか?其れを探究せずに「屑曲じゃん!」で済ましたらお終いですよ。1962年の世界で、「LOVE ME DO」みたいな曲は無かったわけです。此の愛らしいB面は、夢見るアメリカン・ポップスへのオマージュです。彼等はブルージーでマイナー進行の黒人音楽への憧憬をA面にした。されど、其の革新性は無視され、レノンのドスの効いた「ラヴミドゥー!」入りの眞なる姿では音盤化されなかったのです。「20世紀最大の音楽チーム」と歴史に遺った「レノン/ マッカートニー」には、長い下積み時代に書き貯めた膨大なストックが在りました。其の中から、彼等が選んだのが「LOVE ME DO」だったのです。其れは、大いなる挑戦でした。

ポール作品が両面を独占したビートルズの英国オリジナル・シングル盤は、後にも先にも此れのみです。其れがよっぽど嬉しかったのか、1990年になって彼は「P.S. LOVE ME DO」と云う怪作を発表してしまいます。ハンドマイク片手に楽器を持たず喜々として歌うポールを観て、多くの心あるビートルマニアはガックリと肩を落としました。あっ。此の曲でもリンゴは太鼓を外されて、アンディ・ホワイトが担当しています。リンゴはマラカスを不機嫌そうに振っております。デビュー盤で二曲ともドラムを叩いていない事実が、後の名演までも「本当はリンゴじゃなく、セッション・ドラマーが叩いている」なる噂を呼ぶ事になるのでした。


(小島藺子)


初出:「COPY CONTROL AGAIN」2008-6-12
REMIX-1:「COPY CONTROL」2008-8-31

(and this is REMIX-2 by 小島藺子)



posted by 栗 at 01:44| FAB4 | 更新情報をチェックする