
1977年10月21日(米国キャピトル)・同年11月19日(英国パーロフォン)・同年11月5日(日本オデオン)にリリースされた、ビートルズのコンピレーション・アルバム「LOVE SONGS」は、その名の通り「LOVE SONG」を集めた内容でした。このアルバムは2025年現在でも、1976年6月にリリースされたコンピレーション・アルバム「ROCK’N'ROLL MUSIC」と同様に、公式盤としては未CD化です。しかしながら、その内容はと云うと、単に既発曲を並べただけではなく、アルバム「ROCK’N'ROLL MUSIC」の米国盤はサー・ジョージ・マーティンがリミックスしているし、アルバム「LOVE SONGS」も誰がやったのかは不明ながら、英国盤と米国盤では従来とは別のリミックス音源が収録されていたのです。故に、それらの編集盤は「ミックス違い」と云う観点からは重要作なので、盤起こしのパイレート盤CDがリリースされていて、アルバム「LOVE SONGS」に関しては前回に2種類を紹介しました。それで、あたくしはもう1種類を持っているので、今回はそれを紹介します。それは「MOONCHILD RECORDS」から出たCD2枚組全55曲入りの「LOVE SONGS」です。「MOONCHILD RECORDS」と云うブートレグ業者は、日本を拠点にしていて、2017年頃から「ブートレグのコピー盤」を大量にリリースしていて、価格がCD2枚組やCD3枚組でも新品が税込み千円と云う破格な安値で音質も良いブツで評判になりました。2023年位まではイケイケドンドンで乱発していたのですけれど、最近は新作の話が聞こえて来なくて、摘発されちゃったのでしょうか。
内容は、CD1が、1「HER MAJESTY」、2「YESTERDAY」、3「I'LL FOLLOW THE SUN」、4「I NEED YOU」、5「ONE AND ONE IS TWO」、6「GIRL」、7「BABY IT'S YOU」、8「I'LL BE ON MY WAY」、9「IN MY LIFE」、10「WORDS OF LOVE」、11「LOVE OF THE LOVED」、12「YOU LIKE ME TOO MUCH」、13「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、14「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」、15「SOMETHING」、16「SOLDER OF LOVE」、17「AND I LOVE HER」、18「IF I FELL」、19「LIKE A DREAMERS DO」、20「I'LL BE BACK」、21「GOODBYE」、22「TELL ME WHAT YOU SEE」、23「ASK ME WHY」、24「YES IT IS」、25「MICHELLE」、26「I'M IN LOVE」、27「IT'S ONLY LOVE」で、CD2が、1「YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL」、2「LONG LONG LONG」、3「I'VE JUST SEEN A FACE」、4「EVERY LITTLE THING」、5「BAD TO ME」、6「FOR NO ONE」、7「OH! DARLING」、8「HOW DO YOU DO IT」、9「SHE'S LEAVING HOME」、10「FROM ME TO YOU」、11「THE LONG AND WINDING ROAD」、12「CRYING, WAITING, HOPING」、13「THIS BOY」、14「ALL MY LOVING」、15「THINGS WE SAID TODAY」、16「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」、17「HELLO LITTLE GIRL」、18「TWO OF US」、19「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」、20「I WILL」、21「TO KNOW HER IS TO LOVE HER」、22「DON'T LET ME DOWN」、23「THE HONEYMOON SONG」、24「TILL THERE WAS YOU」、25「JULIA」、26「AIN'T SHE SWEET」、27「FANCY ME CHANCES」、28「P.S. I LOVE YOU」です。
ジャケットには、1968年のアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」が「A DOLL’S HOUSE」と云う仮題だった時に描かれて、後に「THE BEATLES BALLADS」のジャケットにもなったジョン・パトリック・バーンによる美しいイラストが使われています。が、しかし、選曲がトンデモで、一応はオリジナルのアルバム「LOVE SONGS」全25曲を収録してはいるのですけれど、他の曲を30曲も増やしていて、しかもそれらをオリジナル選曲とごちゃ混ぜにしてしまったのです。オリジナルは「YESTERDAY」で始まりますが、こちらではその前に1曲目として「HER MAJESTY」が入っていて、いきなり「ジャーン!」と始まるステレオ・ミックスながら、最後は途切れずに完奏しているヴァージョンです。その後、2「YESTERDAY」、3「I'LL FOLLOW THE SUN」、4「I NEED YOU」の3曲がオリジナル通りに並んでいるものの、5曲目の「ONE AND ONE IS TWO」は、1964年にザ・ストレンジャーズ・ウィズ・マイク・シャノンに提供した曲のポール・マッカートニーによるデモ音源です。6「GIRL」はオリジナル通りですが、7曲目に1963年の「BABY IT'S YOU」が加わり、8曲目の「I'LL BE ON MY WAY」は、1963年にビリー・J・クレイマー・ウィズ・ザ・ダコタスに提供した曲を「BBC」でビートルズがセルフ・カヴァーした音源です。そして、9「IN MY LIFE」、10「WORDS OF LOVE」とオリジナル選曲に戻り、11曲目の「LOVE OF THE LOVED」は、1963年にシラ・ブラックに提供する曲を、ビートルズが1962年1月1日にデッカ・オーディションで演奏した音源です。
つづいて、12曲目に1965年の「YOU LIKE ME TOO MUCH」が加わり、13「HERE, THERE AND EVERYWHERE」でオリジナル選曲になり、14曲目に1963年の「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」が加わり、15「SOMETHING」でオリジナルに戻り、16曲目は「BBC」音源の「SOLDIER OF LOVE」で、17「AND I LOVE HER」、18「IF I FELL」とオリジナルに戻り、19曲目の「LIKE DREAMERS DO」は、1964年にアップル・ジャックスへの提供曲を、1962年1月1日にビートルズがデッカ・オーディションで演奏した音源です。20「I'LL BE BACK」でオリジナルに戻り、21曲目の「GOODBYE」は、1969年にメリー・ホプキンへ提供した名曲のポールによるデモ音源です。22「TELL ME WHAT YOU SEE」でオリジナルに戻り、23曲目は1963年の「ASK ME WHY」が加わり、24「YES IT IS」、25「MICHELLE」、とオリジナルに戻り、26曲目の「I'M IN LOVE」は1963年にフォーモストへ提供した曲のジョン・レノンによるデモ音源です。そして、27「IT'S ONLY LOVE」でオリジナルに戻り、CD1は終わります。CD2も同じ様にごった煮状態で、1「YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL」とオリジナル選曲で始まるものの、2曲目が1968年の「LONG LONG LONG」で、3曲目が1965年の「I'VE JUST SEEN A FACE」と来て、4「EVERY LITTLE THING」でオリジナルに戻り、5曲目の「BAD TO ME」は、1963年にビリー・J・クレイマー・ウィズ・ザ・ダコタスへ提供した曲のジョンによるデモ音源です。
6「FOR NO ONE」でオリジナルに戻り、7曲目は1969年の「OH! DARLING」が加わり、8曲目は1962年にサー・ジョージ・マーティンがデビュー曲候補にしてビートルズに拒否された「HOW DO YOU DO IT」です。9「SHE'S LEAVING HOME」でオリジナルに戻り、10曲目は1963年の「FROM ME TO YOU」が加わり、11「THE LONG AND WINDING ROAD」でオリジナルに戻り、12曲目の「CRYING, WAITING, HOPING」は、1962年1月1日のデッカ・オーディション音源です。13「THIS BOY」でオリジナルに戻り、14曲目に1963年の「ALL MY LOVING」が加わり、15曲目に1964年の「THINGS WE SAID TODAY」が加わり、16「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」でオリジナルに戻り、17曲目の「HELLO LITTLE GIRL」は、1963年のフォーモストへの提供曲の、1962年1月1日のデッカ・オーディションでビートルズが演奏した音源です。18曲目には1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」からの「TWO OF US」を加えて、19「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」、20「I WILL」でオリジナルに戻り、21曲目の「TO KNOW HER IS TO LOVE HER」は、1962年1月1日のデッカ・オーディションで演奏した音源です。22曲目は1969年の「DON'T LET ME DOWN」が加わり、23曲目の「THE HONYMOON SONG」は「BBC」音源で、24曲目には1963年の「TILL THERE WAS YOU」が、25曲目には1968年の「JULIA」が加わっています。
26曲目の「AIN'T SHE SWEET」は、1961年のトニー・シェリダンとのレコーディングで、ビートルズが単独で演奏した音源で、27曲目の「FANCY ME CHANCES」は、1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」音源です。そして、28「P.S. I LOVE YOU」と、オリジナル選曲で〆ています。ジャケットには「The Best Sellection of Love Songs and Ballads recorded by the Beatles between 1962 and 1970」と掲載されているのですけれど、実際には「AIN'T SHE SWEET」が1961年のレコーディングなので、間違っています。それから、確かに「LOVE SONG」や「BALLAD」を集めてはいるものの、選曲者は「提供曲のビートルズ・ヴァージョン」とか「デビュー前のデッカ・オーディション」などに重きを置いて選んでいる様で、なかなか、どうして、奇怪な選曲となっております。何せ、出だしが「ジャーン!」なんですから、コレはもう、狙って面白主義選曲をして遊んでいるのでしょう。選曲されたのは、ほんの一部を除いて公式盤からのコピーなので、コレはブートレグと云うよりもパイレート盤の範疇に入る音源集です。その音源は、ステレオ・ミックスとモノラル・ミックスが混在していて、デモ音源やオーディション音源はモノラル・ミックスなのですけれど、例えば公式盤「LOVE SONGS」では疑似ステレオだった「YES IT IS」と「THIS BOY」がモノラル・ミックスだったりして、どこから引っ張って来たのか、よく分かりません。そして、デッカ・オーディション音源に関しては、同じ「MOONCHILD RECORDS」からステレオ・ミックスが出ているので、また何れ紹介します。
(小島イコ)