
以前に、ビートルズのブートレグ史上で革命的だった、THE SWINGIN' PIG RECORDSの「ULTRA RARE TRAX」VOL.1〜VOL.6と、Yellow Dog RECORDSの「UNSURPASSED MASTERS」VOL.1〜VOL.7を紹介しました。その時にもチラリンコと触れたのですけれど、なんとまあ、「UNSURPASSED MASTERS」はパチモンのハーフオフィシャル盤も出ていたのです。ジャケットのセンスもダメダメな盤で、ANF SOFT WARE CO. LTD.なる日本のメーカーが輸入販売元となっております。ソレだけならば、大した話ではないのですけれど、オリジナルの「UNSURPASSED MASTERS」とは、内容が微妙に異なっているのです。このシリーズはBBC音源も販売していて、そちらの元はGreat Dane Recordsの箱辺りからコピーしたのでしょう。パチモンの「UNSURPASSED MASTERS」はVOL.9まで出ていて、VOL.1〜VOL.4の4作はオリジナルの「Yellow Dog」盤と同じです。それに、オリジナルのVOL.5をVOL.6にしていて、オリジナルのVOL.6とVOL.7は未収録です。それで、パチモンだけの音源は、VOL.5とVOL.7〜VOL.9の4作と云う事になります。簡単に説明すると、VOL.5はYellow Dogの「CELLULOID ROCK」のコピー盤で、VOL.7〜VOL.9は、BLUE KANGAROO RECORDSからの「'69 REHEARSALS」VOL.1〜VOL.3のコピーです。画像はオリジナルのYellow Dog盤ですけれど、パチモン盤のジャケットは酷いので貼りたくありません。
つまり、オリジナルの「UNSURPASSED MASTERS」には収録されていない音源4作は、全てが1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」音源と云う事になっています。ざっと紹介すると、VOL.5の「CELLULOID ROCK」は、1「I'VE GOT A FEELING」、2「SHAKE, RATTLE AND ROLL」、3「MEDLEY:KANSAS CITY〜MISS ANN〜LAWDY MISS CLAWDY」、4「BLUE SUEDE SHOES」、5「YOU REALLY GOT A HOLD ON ME」、6「GET BACK」、7「THE LONG AND WINDING ROAD」、8「LET IT BE」、9「DON'T LET ME DOWN」、10「FOR YOU BLUE」、11「THE WALK」、12「TEDDY BOY」、13「TWO OF US」、14「DIG A PONY」、15「DIG IT」の、全15曲入りです。これらはアップル・スタジオでのレコーディング音源で、当時は貴重だったのですけれど、映画用のロールからの音源です。曲目だけ見ると1970年の公式盤アルバム「LET IT BE」に収録された曲が多いのですけれど、当時は幻のアルバムだった「GET BACK」に近い、ノー・オーバーダビングです。そして、VOL.7〜VOL.9は、前述の通り、BLUE KANGAROOの「'69 REHEARSALS」VOL.1〜VOL.3からのコピーです。
まず、VOL.7は「'69 REHEARSALS」VOL.1で、1「GET BACK〜MAYBELLENE〜BROWNEYED HANDSOME MAN〜SHORT FAT FANNY〜GET BACK」、2「GET BACK」、3「GET BACK〜I'LL GET YOU〜GET BACK〜I'VE GOT A FEELING」、4「OCTOPUS'S GARDEN〜LITTLE PIECE OF LEATHER〜OCTOPUS'S GARDEN」の全4トラック入りで、セッションの模様をノンストップで収録しています。VOL.8は「'69 REHEARSALS」VOL.2で、1「TWO OF US」、2「THE LONG AND WINDING ROAD」、3「LET IT BE」、4「ACROSS THE UNIVERSE〜ROCK AND ROLL MUSIC〜LUCILLE〜ACROSS THE UNIVERSE〜THAT MUST BE MY GAL〜DIG A PONY」、5「ONE AFTER 909〜DON'T LET ME DOWN」の全5トラック入りで、こちらもノンストップです。VOL.9は「'69 REHEARSALS」VOL.3で、1「DON'T LET ME DOWN」、2「DON'T LET ME DOWN」、3「OH! DARLING〜THE LONG AND WINDING ROAD〜MAXWELL'S SILVER HAMMER〜A SHOT OF RHYTHM & BLUES」、4「BACK SEAT OF MY CAR〜IT'S JUST FOR YOU〜CLEAR AS A BELL〜HELLO DOLLY〜OH! DARLING〜GET BACK〜ONCE UPON A TIME」の全4トラック入りで、やはりノンストップです。「DON'T LET ME DOWN」にポールとジョージがコーラスを入れようとするところなど、よくぞ断念してくれた、とホッとします。
これらは「THE GET BACK SESSIONS」音源であって、ダラダラと15分前後の音源を編集もせずに収録していて、ズバリ云って無茶苦茶マニアックな音源です。それが、ハーフオフィシャル盤として定価2600円から値引きして堂々と売られていたのですから、大いに困ったちゃんなのです。オリジナルの「UNSURPASSED MASTERS」は、基本的には年代順で、比較的聴き易いアウトテイクを収録しているのですけれど、パチモン盤で加えられた4作は全部「THE GET BACK SESSIONS」音源で、「CELLULOID ROCK」はまだ良いとして、主にトゥイッケナム・スタジオでのダラダラとしたリハーサルが中心の「'69 REHEARSALS」は、かなりの上級者向けだと思います。個人的には「THE GET BACK SESSIONS」音源を聴くのは好きですし、ブートレグもビートルズ関連の中でも桁違いに多く持ってはいますけれど、それは元々が膨大だからそうなっただけで、初心者のファンが「LET IT BE」とか「THE LONG AND WINDING ROAD」などの曲名だけでコレを買って聴いたなら、なんじゃこりゃ、でしょう。後にポール&リンダ・マッカートニーのアルバム「RAM」の最後を飾った「BACK SEAT OF MY CAR」なんて、ポールのピアノの弾き語りで、曲もまだ出来ていないんですから、ポカーン、となるでしょうなあ。「UNSURPASSED MASTERS」は、オリジナル盤もコピー盤も300円前後で中古盤が買えるでしょうけれど、音源的には現在ではそう珍しくもないし、オリジナル盤の方がジャケットが綺麗なので良いですよ。
(小島イコ)