
ジョン・レノン全曲解説も無事に終了しましたので、これからは、毎度お馴染みのビートルズのパチモンCDについて書きます。なるべく、ブートレグには行かず、パイレート盤について書く心算ではありますが、多分、ブートレグにも言及する事となるでしょう。今回取り上げるのは「ビートルズ小辞典」で、実は14年位前に一度取り上げています。それを再び取り上げるのは、この「ビートルズ小辞典」が余りにも無茶苦茶なパチモンで、多分、中古盤ならセットで280円位で転がっていると思われるので、見つけたら是非とも買って頂きたいからなのです。ビートルズに限らず、洋楽のパチモンは以前は1977年縛りだったのが、現在では1967年縛りとなっていて、所謂ひとつのパイレート盤と云われる公式盤からのコピー盤は、1967年までの音源しか使えません。それで、ビートルズの音源は、かつては1970年の解散まで収録出来ていて、「赤盤」と「青盤」をCD3枚組にしたパチモンが公式盤でCD化されるよりも前に、既に1987年から1988年にかけてリリースされた初CD音源を使って編集(何故か「A DAY IN THE LIFE」の後に入っている意味不明な音源も入れたり、「GET BACK」と「LET IT BE」がアルバム・ヴァージョンだったりして、それなりに面白い)されていました。ところが、1992年からは1967年までの音源しかコピー出来なくなってしまい、ビートルズのパチモンもアルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」までしかコピー出来なくなってしまったのです。つまりですね、例えば1968年の「HEY JUDE」や、1969年の「SOMETHING」や、1970年の「LET IT BE」と云った超有名曲も収録出来なくなってしまい、1967年までと云う中途半端なところまでしか入っていない、些か困ったちゃんなパチモンCDを出すしかなかったわけです。ちなみに、著作権に厳しい海外では、1962年縛りの様で、ビートルズはデビュー・シングルしかパチモンに出来ません。
そこで登場したのが、CD3枚組の「ビートルズ小辞典」なのです。これは、ビートルズのヒット曲をアルファベット順に並べているので、小辞典と云うわけで、各20曲入りで全60曲が選曲されています。CD1は、1「A HARD DAY'S NIGHT」、2「ALL MY LOVING」、3「ALL YOU NEED IS LOVE」、4「AND I LOVE HER」、5「BLACKBIRD」、6「CAN'T BUY ME LOVE」、7「DAY TRIPPER」、8「DIZZY MISS LIZZY」、9「DON'T LET ME DOWN」、10「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」、11「DRIVE MY CAR」、12「EIGHT DAYS A WEEK」、13「ELEAOR RIGBY」、14「FROM ME TO YOU」、15「GET BACK」、16「GIRL」、17「HELLO GOODBYE」、18「HELP!」、19「HEY JUDE」、20「I AM THE WALRUS」の、全20曲入りです。
CD2は、1「I FEEL FINE」、2「IF I FELL」、3「IN MY LIFE」、4「I SAW HER STANDING THERE」、5「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、6「LADY MADONNA」、7「LET IT BE」、8「LONG TALL SALLY」、9「LOVE ME DO」、10「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、11「MAGICAL MYSTERY TOUR」、12「MATCHBOX」、13「MICHELLE」、14「MONEY(THAT'S WHAT I WANT)」、15「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」、16「NOWHERE MAN」、17「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、18「OH! DARLING」、19「PAPERBACK WRITER」、20「PENNY LANE」の、全20曲入りです。
CD3は、1「PLEASE MISTER POSTMAN」、2「PLEASE PLEASE ME」、3「P.S. I LOVE YOU」、4「ROCK AND ROLL MUSIC」、5「ROLL OVER BEETHOVEN」、6「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、7「SHE LOVES YOU」、8「SHE'S A WOMAN」、9「SOMETHING」、10「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、11「THANK YOU GIRL」、12「THE FOOL ON THE HILL」、13「THE LONG AND WINDING ROAD」、14「TICKET TO RIDE」、15「TWIST AND SHOUT」、16「WE CAN WORK IT OUT」、17「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、18「YELLOW SUBMARINE」、19「YES IT IS」、20「YESTERDAY」の、全20曲入りで、3枚で全60曲入りです。
ざっと眺めても、なかなか渋い選曲で、オリジナルの「赤盤」と「青盤」には未収録のカヴァー曲(「DIZZY MISS LIZZY」、「LONG TALL SALLY」、「MATCHBOX」、「MONEY(THAT'S WHAT I WANT)」、「PLEASE MISTER POSTMAN」、「ROCK AND ROLL MUSIC」、「ROLL OVER BEETHOVEN」、「TWIST AND SHOUT」)や、シングルB面曲(「SHE'S A WOMAN」、「THANK YOU GIRL」、「YES IT IS」)や、独自の選曲(「BLACKBIRD」、「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」、「IF I FELL」、「OH! DARLING」)などが入っています。それで、なんと、1968年以降の曲も入っていて、「HEY JUDE」も「SOMETHING」も「LET IT BE」も聴けるのです。他にも「LADY MADONNA」や「OB-LA-DI, OB-LA-DA」や「BLACKBIRD」や「GET BACK」や「DON'T LET ME DOWN」や「THE LONG AND WINDING ROAD」や「OH! DARLING」まで、ガッツリと普通なら収録不可能な曲が入っているのです。コレはですね、アルファベット順にして誤魔化して収録したのではないのです。なんと、まあ、1968年から1970年までの楽曲は、ブートレグから引っ張ってくると云う荒技を使っているのです。1990年前後に人気だった「Yellow Dog」の「UNSURPASSED MASTERS」と云うブートレグがあってですね、ソレがパチモンとしてハーフオフィシャル盤にもなっていたので、それからコピーすればセーフだと云うわけですよ。
故に、例えば「LADY MADONNA」は出だしが切れているヴァージョンだし、「HEY JUDE」は5分余りの短縮ヴァージョンだし、「BLACKBIRD」は鳥のさえずりをオーバーダビングする前の音源だし、「OB-LA-DI, OB-LA-DA」はイントロ前にトチるし、「GET BACK」と「DON'T LET ME DOWN」と「LET IT BE」と「THE LONG AND WINDING ROAD」は「THE GET BACK SESSIONS」音源だし、「SOMETHING」は「take 37」なのです。事情を知らずにオールタイム・ベスト盤だと思って買った初心者が、いきなり、カウント入りでまだ3番の歌詞がない「LET IT BE」とか、「THE LONG AND WINDING ROAD」のオーケストラとコーラスが入っていないヴァージョンとか、アウトロが延々とつづく「SOMETHING」とか、途中でポールがファルセットになっちゃう「OH! DARLING」などの、「高音質別テイク(と紹介文に書いてある)」を聴かされるわけですよ。まあ、ベスト盤だと思って公式盤のボツ音源集「ANTHOLOGY」を買ってしまう(実際に中学生位の女の子二人が間違えて買ってしまう現場にいて、よっぽど「それはベスト盤じゃありませんよ」と云いたくなった)よりはマシですけれどね。それから、基本的には1962年から1967年の曲は公式音源からコピーしているのですけれど、何故か1963年の「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」も「高音質別テイク」で収録されています。脱力感が漂う解説と、目がチカチカするカタカナ歌詞カード付で、3枚組箱入りで税込み280円ならば安い買い物なのでオススメです。
(小島イコ)