
さて、「B-EACH TIME L-ONG 40th Anniversary Edition」のつづきですけれども、断っておきますが、あたくしは今回はCD1になっているオリジナルの「B-EACH TIME L-ONG」と云う変則的なベスト・アルバムは、素晴らしい作品だと思っています。大瀧師匠の作品に関しては、ある程度はディープなファンなので、余り悪口は云いたくはありません。大瀧師匠は、生前はありきたりなベスト・アルバムをリリースする事はなくて、コロムビア時代の1978年8月25日にリリースしたベスト・アルバム「DEBUT」は、全12曲中、5曲が新録ヴァージョンで、4曲がリミックス音源で、3曲がライヴ・ヴァージョンと云う、全曲が既発ヴァージョンとは違っていました。この1985年6月1日にリリースした夏向けのベスト・アルバム「B-EACH TIME L-ONG」も、全12曲中歌入りの11曲全てにはインストゥルメンタル・アルバム「NIAGARA SONG BOOK」と「NIAGARA SONG BOOK 2」からのストリングスを前奏に付けていて、「Bachelor Girl」は初収録で、「白い港」と「Bachelor Girl」の前奏は、先の「SONG BOOK」シリーズにはこの時点では未収録だったので初出音源でした。更に、同1985年12月には冬向けのコンピレーション・アルバム「SNOW TIME」をプロモーション盤限定で配布(1996年3月21日に一部内容を変えて選書盤で市販)していて、前半が歌入りで後半がインストゥルメンタルと云う構成でした。
故に、大瀧師匠が亡くなって、2014年12月3日にオールタイム・ベスト・アルバム「Best Always」がリリースされた時には、その中途半端な内容に、心底ガッカリしたものです。それで、どうせ出すなら大瀧師匠が自ら編集した「B-EACH TIME L-ONG」をリイシューしろ、と云ってきたわけですけれど、いざ、こうしてリイシューされると、何だかなあ、となるわけですよ。いえね、CD1はいいんですよ。ストリングスの前奏と歌の繋ぎ方は、初版から毎回グレードアップしているみたいで、たぶん、大瀧師匠が生きていてもそうしたでしょう。選曲もいいし、3曲は元々リミックスされていたし、3作から公平に選曲(と云っても全体のバランスを考えると3人の共作だった「NIAGARA TRIANGLE VOL.2」からは多いけど全曲好きだから良し)をしていて、音のバランスも整えているし、文句なんかありません。問題は、売り方なんですよ。単体としては1991年3月21日以来、なんと、34年ぶりのリリースなわけで、そこはやっぱり、オリジナルのCD1だけの通常盤を出すべきだったんじゃないでしょうか。その問題のCD2は、「Niagara Memory, Melody, Medley “Summertime, Each time ’84”」と題されていて、SIDE A「オリーブ諸島のペーパーバックSummer Motelのスケッチ×4のナックルボールの昼の夢」と、SIDE B「雨のジェットColorの中の恋するペパーミントの夢で逢えたら」と云う、ふざけた副題が付いています。
内容は、1「オリーブの午后」、2「カナリア諸島にて」、3「夏のペーパーバック」、4「Summer Breeze〜Velvet Motel〜木の葉のスケッチ〜Summer Breeze」、5「FUN×4」、6「恋のナックルボール」、7「真夏の昼の夢」、8「雨のウェンズデイ〜銀色のジェット〜雨のウェンズデイ」、9「Water Color」、10「ガラス壜の中の船」、11「恋するカレン」、12「ペパーミント・ブルー」、13「夢で逢えたら」の、全13トラック入りです。メイン・タイトルから考えれば、1984年6月に店頭用に配布されたプロモーション・カセットテープのCD化音源なのでしょう。翌年の本編である「B-EACH TIME L-ONG」の元になった様な構成で、歌入り曲とインストゥルメンタル曲が緻密に編集されていて、こりゃあ、もう、あたくしも含めたディープなファンやナイアガラーは破顔一笑の代物です。ストリングスだけをバックに歌を乗せた「真夏の昼の夢」なんて、もう1977年の時点で大滝詠一さんが抜群に歌が上手かった事実を思い知らされて、ウットリしました。これに関しては、以前に「没後に捏造か?」と書いたものの、どうやら大瀧師匠が作っていたと云う事なのでしょう。単純に曲を繋げただけではなく、意外な編集がされていて、こりゃあ、もう、堪りませんなあ、だったのですけれど、最後の「夢で逢えたら」が大滝詠一さんの歌入りで、一気に夢から覚めましたよ。あのね、これって、門外不出で大瀧師匠が亡くなってから発見されたんじゃなかったんですか?それじゃあ、他の曲もやっぱり何か手を加えているんじゃないか、と疑念が浮かびます。こう云う小細工をするから、今のソニーとナイアガラは信頼出来ないんですよ。妙にマニアックな内容を通常盤に入れて小出しにするのは、あわよくばそれをキッカケにナイアガラーになってもらって、ヴァージョン違いの泥沼に入ってもらおうとしているじゃないでしょうか。麻薬じゃないのだから、勘弁して下さいよ。
(小島イコ)