
ジョン・レノンが、1975年2月17日(米国)・同年2月21日(英国)にアップルからリリースした、5作目で最後のソロ・アルバム「ROCK'N'ROLL」は、全てがロックンロール・クラシックスのカヴァーで構成されています。このアルバムは二つの異なるレコーディング・セッションを元にしていて、ひとつは1973年10月から12月にかけて行われたフィル・スペクターとのセッションで、もうひとつは1974年10月21日から25日にかけての再レコーディング・セッションです。まず、フィル・スペクターとのセッションは、ジョン・レノン(ヴォーカル、ギター)、ジェシ・エド・デイヴィス(ギター)の他に、フィル・スペクター(ギター、ピアノ)、ピーター・ジェイムソン、スティーヴ・クロッパー、アート・マンソン、ウィリアム・ペリー、ルイス・シェルトン、デール・アンダーソン、ラリー・カールトン、デヴィッド・コーエン、ジム・カルヴァート(以上、ギター)、ホセ・フェリシアーノ、マイケル・ヘイゼルウッド(以上、アコースティック・ギター)、レイ・ナポリタン、ボブ・グラウブ、トーマス・ヘンズリー(以上、ベース)、ジェフ・バリー、アンディ・トーマス、マイケル・ウォフォード、マイケル・ラング、バリー・マン、マイケル・メルヴォイン(以上、ピアノ)、マック・レベナック (ドクター・ジョン)、マイケル・オマーティアン、レオン・ラッセル(以上、キーボード)、ハル・ブレイン、ゲイリー・マラバー、フランク・キャップ、ジム・ゴードン(以上、ドラムス)、ニノ・テンポ(サクソフォーン、キーボード)、ボビー・キーズ、ジョセフ・テンパーリー、ジム・ホーン、プラス・ジョンソン、ロナルド・ランギンガー、ドン・メンザ、ジーン・シプリアーノ(以上、サクソフォーン)、ウィリアム・パーキンス、ロバート・ハーダウェイ(以上、木管楽器)、アンソニー・テラン、コンテ・カンドリ、チャック・フィンドリー(以上、トランペット)、ジュリアン・マトロック(クラリネット)、ジョセフ・ケルソン(ホルン)、ゲイリー・コールマン、アラン・エステス、スティーブン・フォーマン、テリー・ギブス(以上、パーカッション)、と云う50名近いミュージシャンが参加した模様です。
フィル・スペクターの手法は、同時に大勢のミュージシャンに一斉に演奏させるスタイルではありますけれど、それにしたってこれでは最早オーケストラであって、1979年にポール・マッカートニーが行った「ロケストラ」もビックリです。しかしながら、このセッションでの音源を元にした曲は、アルバム「ROCK'N'ROLL」では「YOU CAN'T CATCH ME」と「SWEET LITTLE SIXTEEN」と「BONY MORONIE」と「JUST BECAUSE」のたったの4曲しか使われておらず、100時間もあると云われているフィル・スペクターとのセッションは謎だらけなのです。ジョンはフィル・スペクターとのセッション音源がほとんど使い物にならないと分かって、1974年10月21日から25日にかけてのたったの5日間で残りの9曲をレコーディングしていて、そちらのレコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、ギター)、ジェシ・エド・デイヴィス(ギター)、エディ・モトー(アコースティック・ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、ケニー・アスチャー(キーボード)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、アーサー・ジェンキンス(パーカッション)、ジョセフ・テンパリー(サクソフォーン)、フランク・ヴィカリ(サクソフォーン)、デニス・モラウズ(テナーサックス)と、コンパクトにまとめています。そうして、A面が、1「BE-BOP-A-LULA」、2「STAND BY ME」、3「MEDLEY : RIP IT UP / READY TEDDY」、4「YOU CAN'T CATCH ME」、5「AIN'T THAT A SHAME」、6「DO YOU WANNA DANCE」、7「SWEET LITTLE SIXTEEN」で、B面が、1「SLIPPIN' AND SLIDIN'」、2「PEGGY SUE」、3「MEDLEY : BRING IT ON HOME TO ME / SEND ME SOME LOVIN'」、4「BONY MORONIE」、5「YA YA」、6「JUST BECAUSE」の、全13トラック全15曲入りでリリースされたのでした。
しかしながら、モーリス・レヴィが勝手にリリースしたブートレグ「ROOTS」では、他に、ロージー&ジ・オリジナルズの「ANGEL BABY」と、ロネッツの「BE MY BABY」の2曲が収録されていて、ジョンの死後の1986年にリリースされたアルバム「MENLOVE AVE.」には、ジョンとフィル・スペクターの共作オリジナル曲である「HERE WE GO AGAIN」と、「ANGEL BABY」と、アーサー・クルーダップの「MY BABY LEFT ME」(「SINCE MY BABY LEFT ME」)と、テディ・ベアーズの「TO KNOW HIM IS TO LOVE HIM」(「TO KNOW HER IS TO LOVE HER」)が発掘されていて、それらは全てがフィル・スペクターとのセッション音源を元にしています。更に、1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」には、ジーン・ヴィンセントの「AIN'T SHE SWEET」(1961年のトニー・シェリダンとのレコーディングで、ビートルズのみでレコーディングされて、1969年のアルバム「ABBEY ROAD」のセッションでも披露)と、「SLIPPIN' AND SLIDIN'」と「PEGGY SUE」と「BRING IT ON HOME TO ME / SEND ME SOME LOVIN'」の別テイクと、遂に公式盤で登場した「BE MY BABY」が収録されました。その箱には、リンゴ・スターに譲ったプラターズの「ONLY YOU(AND YOU ALONE)」のジョンがヴォーカルのテイクも収録されています。そして、未だに公式盤には未収録ですが、バディ・ホリーの「THAT'LL BE THE DAY」や、チャック・ベリーの「THIRTY DAYS」や、エディ・コクランの「C'MON EVERYBODY」なども演奏されています。そしてレッド・ツェッペリンの「WHOLE LOTTA LOVE」のイントロを、ジェシ・エド・デイヴィスかジョンか分かりませんが、ふざけて演奏していたりもします。いずれ、アルバム「ROCK'N'ROLL」の箱もリリースされて、全貌が明かされる日が来るのでしょうか。でも、なんちゃってリミックスは、やめてね。
(小島イコ)