
ジョン・レノンが、1974年9月26日(米国)・同年10月4日(英国)にアップルからリリースした4作目のソロ・アルバム「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」は、全米首位!・全英6位と大ヒットして、ジョン・レノン復活を印象付けました。アルバムと同日に、A面2曲目に収録されている「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT(真夜中を突っ走れ)」をシングル・カット(B面は「BEEF JERKY」)していて、このシングル「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」は、ジョンのソロで初めて全米首位!を獲得しました。米国では特大ヒットとなったわけですけれど、全英36位と英国では売れていません。レコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(リード・ヴォーカル、ギター)、エルトン・ジョン(ハーモニー・ヴォーカル、ピアノ、オルガン)、ケン・アッシャー(クラビネット)、ジェシ・エド・デイヴィス(エレクトリック・ギター)、エディ・モトー(アコースティック・ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、アーサー・ジェンキンス(パーカッション)、ボビー・キーズ(テナー・サックス)、ロン・アプレア(アルト・サックス)の「プラスティック・オノ・ニュークリア・バンド」です。
レコーディング中に突然スタジオに現れたエルトン・ジョンが客演する事になって、リハーサル音源を聴かせたところ、エルトン・ジョンが気に入ったのが「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」で、エルトンは他にB面2曲目に収録された「SURPRISE, SURPRISE(SWEET BIRD OF PARADOX)(予期せぬ驚き)」にも参加しています。ジョン本人は「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」がそれほど良い曲とは思っていなかったのですけれど、エルトンの意見を尊重して共演して、シングル・カットする事となったのです。そこで、エルトンはこの曲が全米首位!を獲得したならば、ジョンに自分のコンサートに出演してくれる様に賭けをしました。ジョンはこんな曲が大ヒットするなんて絶対に無理だと考えて、その賭けに乗ったところ、エルトンの予想通りに全米首位!となってしまい、約束通りに1974年11月28日のエルトン・ジョンのマディソン・スクエア・ガーデンでのコンサートに出演して、エルトンの計らいで楽屋にやって来たヨーコさんとジョンは再会して、その後に二人は復縁するのでした。エルトン・ジョンのコンサートでは、二人で「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」と「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」と「I SAW HER STANDING THERE」の3曲を披露していて、全て1990年の箱「LENNON」などに収録されています。
ジョンの生前に全米首位!を獲得したのは「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」だけですけれど、その勢いで、1974年にエルトン・ジョンがカヴァーしたジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作品であるビートルズの「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」(ジョンがギターとヴォーカルで参加)も全米首位!となり、翌1975年にデヴィッド・ボウイとカルロス・アロマーとジョンで共作した「FAME」(ジョンがアコースティック・ギターとバッキング・ヴォーカルで参加)も全米首位!となっていて、ジョン絡みの楽曲が短期間に3曲も全米首位!を獲得する快挙となったのです。ジョンが全米首位!を獲得した事によって、元ビートルズの4人が全てソロでも全米首位!を獲得した事となりました。ビートルズは勿論の事、メンバー全てがソロ(但し、ポールは「ポール&リンダ」もしくは「ウイングス」名義)でも全米首位!となったわけで、そんな例は外には見当たりません。と云うか、ポールは兎も角として、ジョージやリンゴの方がジョンよりも先にソロで全米首位!となっていたのですから、不思議な時代でした。1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」にはデモ音源が収録されていて、前述のライヴ音源は2005年のアルバム「WALLS AND BRIDGES」のリミックス盤でも聴けます。ジョンの死後に、ジョンのイラストを元にしたアニメーションによるミュージック・ヴィデオが制作されていて、DVD「LENNON LEGEND」や「POWER TO THE PEOPLE THE HITS」で観る事が出来ます。
(小島イコ)