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2025年01月07日

「ポールの道」#608「LENNON SONGS」#033 「OH YOKO!」

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ジョン・レノンが、1970年12月11日にアップルからリリースした初のソロ・アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」は、詞も曲も当時のジョンの心情を反映した作品で、「私小説」的なアルバムです。しかしながら、ジョンはビートルズ時代からそうした私小説的な楽曲を多く発表していました。例えば、1964年の「I'M A LOSER」では、全世界を制覇したビートルズのリーダーが「僕は負け犬」と歌っていて、世界的なスーパースターになってみたら、それは想像していたのとは違っていた、と云うわけです。1965年の「HELP!」も、心の底から救済を求めている内容でしたし、同年の「IN MY LIFE」ではまだ25歳なのに人生を振り返っています。1966年の「I'M ONLY SLEEPING」や「SHE SAID SHE SAID」、そして1967年の「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」や「A DAY IN THE LIFE」、1968年の「I'M SO TIRED」や「YER BLUES」、1969年の「I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY)」等々、全てはジョンの心情から出来た楽曲でした。1969年のビートルズのシングル「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」になると、結婚の顛末を歌うと云う、完全な私小説になっています。1969年4月14日に行われた「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」のレコーディングは、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの二人だけで行われていて、それを「ビートルズ」名義でリリースしてしまったのです。

ちなみに、そのシングルのB面はジョージ・ハリスン作の「OLD BROWN SHOE」で、ジョージは当然参加しているものの、リンゴ・スターは映画の撮影中だった為に不参加だとも云われています。それは初めての事ではなくて、1968年のアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」のセッション中にリンゴが脱退していて、それなのにポールがドラムスを叩いてレコーディングは続行されていて、リンゴ不参加の「BACK IN THE U.S.S.R.」と「DEAR PRUDENCE」の2曲がA面1曲目と2曲目に収録されているのです。さて、既にビートルズ時代に「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」を発表していたジョンは、1971年9月9日(米国)・同年10月8日(英国)にアップルからリリースした2作目のソロ・アルバム「IMAGINE」のB面5曲目でアルバムの最後に「OH YOKO!」を収録しています。この楽曲も、元々はビートルズ時代にインドで書き始めていて、1969年には出来ていたと思われる楽曲です。自分の奥さんを歌った曲ですから、ビートルズではレコーディング出来なかったのかと云うと、そうではないのです。既に「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」をビートルズとしてリリースしていたわけですから、ジョージやリンゴは嫌がったとしても、ポールは当然の如く協力したはずなので、ジョンがやる気だったならば、普通にビートルズとして発表していたでしょう。

愛妻賛歌ならば、ポールもジョンよりも前の1970年4月リリースの「McCARTNEY」のA面1曲目に「THE LOVELY LINDA」を収録しているわけで、どっちもどっちなのです。「OH YOKO!」のレコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、エレクトリック・ギター、ハーモニカ)、ニッキー・ホプキンス(ピアノ)、クラウス・フォアマン(ベース)、アラン・ホワイト(ドラムス)、フィル・スペクター(ハーモニー・ヴォーカル)、ロッド・リントン(アコースティック・ギター)、アンディ・デイヴィス(アコースティック・ギター)です。アウトテイクを聴くと、元々はジョンがピアノの弾き語りで完成版よりもずっとスローに演奏して歌っていますが、レコードになったのはアップテンポで軽快な曲になっていて、久しぶりにジョンがハーモニカを吹いていて、「A DAY IN THE LIFE」にも出てきていた「TURN YOU ON」と云うフレーズもあります。良い曲だと思いますし、シングル・カットも検討されたものの、ジョンが照れくさいと却下しています。だったら、そもそもレコーディングしてアルバムに収録するな、って話ですけれどね。「OH YOKO!」のPVは1971年の「IMAGINE / THE FILM」に、デモやアウトテイクは2018年のアルバム「IMAGINE」の箱などに収録されています。この曲の元ネタはロニー・ドネガンの「LONG LOST JOHN」で、1998年の「JOHN LENNON ANTHOLOGY」に、それをジョンが歌っているヴァージョンが収録されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする