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2025年01月05日

「ポールの道」#606「LENNON SONGS」#031 「HOW DO YOU SLEEP?」

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1970年4月10日に、ポール・マッカートニーは「ビートルズからの脱退」を宣言しました。それで、同年4月17日には初のソロ・アルバム「McCARTNEY」をアップルからリリースしたわけですけれど、当然の事ですがレコーディングはまだビートルズが存在していた時で、愛妻・リンダが僅かにヴォーカルで参加しているものの、ほとんどの楽器と歌をポールが一人で宅録したものでした。それで、ビートルズ解散後にポールが最初にレコーディングしてリリースしたのは、ポール&リンダ・マッカートニー名義で、1971年5月17日(米国)・同年5月21日(英国)にアップルからリリースしたアルバム「RAM」と云う事になります。現在ではポールの最高傑作と云う評価まであるアルバム「RAM」ですけれど、リリース当時の評価はそれ以上ない程に酷くて、「ローリング・ストーン」誌では「変質した60年代ロックが生んだ、これまでで最低のアルバム」とまで書かれてしまったばかりか、リンゴ・スターにまで「ポールは、自分の才能をスポイルしている」などと貶されたのです。しかしながら、ポールにとってはそんな事よりもジョン・レノンの反応が気になっていたでしょう。すると、ジョンはアルバム「RAM」を聴いて怒り狂ったのでした。それは、アルバム「RAM」の収録曲が自分を攻撃していると感じたからでした。

ジョンは「他の奴が聴いても分からないかもしれないけれど、俺には分かる」と云って、具体的には「TOO MANY PEOPLE」や「3 LEGS」や「DEAR BOY」や「SMILE AWAY」や「LONG HAIRD LADY」と云った楽曲が気に食わなかったのです。ポールも「TOO MANY PEOPLE」に関しては、ジョンへ向けて書いたと認めています。怒ったジョンは、1971年9月9日(米国)・同年10月8日(英国)にリリースした2作目のソロ・アルバム「IMAGINE」のB面3曲目に収録した「HOW DO YOU SLEEP?」と云う、史上最低最悪の悪口ソングを書いて対抗したのです。レコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、エレクトリック・ギター)、ジョージ・ハリスン(スライド・ギター)、ニッキー・ホプキンス(エレクトリック・ピアノ)、ジョン・タウト(ピアノ)、テッド・ターナー(アコースティック・ギター)、ロッド・リントン(アコースティック・ギター)、アンディ・デイヴィス(アコースティック・ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、アラン・ホワイト(ドラムス)、ザ・フラックス・フィドラーズ(ストリングス)で、楽曲的にはファンク調で、フィル・スペクターの「音の壁」も存分に味わえるものとなっています。しかし、内容はジョージが「コレ、本当にレコーディングする気なの?」と怖気付く程に酷い歌詞なのです。

イントロではビートルズのアルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」を思わせるストリングスの調弦があって、詞の全体でポールをこれでもか、とばかりに貶し捲っています。そもそも「HOW DO YOU SLEEP?」と云うのはですね、ポールの目が大きいので、他のビートルズのメンバーから「そんなに目が大きくて眠れるの?」と云われていたジョークだったのです。そのフレーズをサビにして、「お前が出来たのはYESTERDAYだけ、今のお前はANOTHER DAY」とか「あいつらがお前が死んだと云っていたのは、本当だった」とか「お前が作るのは、俺の耳にはムーザックだ」とか、滅茶苦茶に云っています。余りにも酷い内容で、リンゴがスタジオに来て聴いて「もういいよ、やめようよ、ジョン」と忠告したそうです。歌詞の内容に関しては、ヨーコさんとアラン・クレインが悪ノリして手伝ったらしく、ポールは気にしていないと云っているものの、アルバム「IMAGINE」にはポール&リンダのアルバム「RAM」のジャケットをからかった「ブタとジョン」のポートレートまで付けているんですから、悪意丸出しなのです。ジョンは後年になって、ポールへの個人攻撃ではないなどと言い訳をしていますけれど、どう聴いてもポールの全人格まで否定した酷い歌なんですよ。

この曲が収録されているのですから、どんなに「IMAGINE」などと「愛と平和」を唱えても、説得力はありません。そもそも、ジョンはこうした底意地の悪さを持っている人だったわけで、どこが「愛と平和のジョン・レノン」なんだと云う話です。ポールは、1971年にウイングスを結成して、同年12月には早くもアルバム「WINGS WILD LIFE」をリリースしています。そのB面に収録された「TOMORROW」と「DEAR FRIEND」で、ジョンの「HOW DO YOU SLEEP?」へ返答しています。「TOMORROW」は「YESTERDAY」のコード進行を使った楽曲で、最後に「DON'T LET ME DOWN」と絶唱するので、明らかにジョンへ向けています。そして「DEAR FRIEND」で大人の対応をして「SONG WAR」の決着を図ったと云われています。しかしながら、その「DEAR FRIEND」が書かれたのは1970年なのです。つまり、ポールは初めから落としどころを用意して、「TOO MANY PEOPLE」などでジョンを攻撃したと云うわけですなあ。「HOW DO YOU SLEEP?」は他の楽曲と同じで、PVは1971年の「IMAGINE / THE FILM」に、デモやアウトテイクは1998年の「JOHN LENNON ANTHOLOGY」や、2018年のアルバム「IMAGINE」の箱などに収録されています。珍しいところでは、2006年のサントラ盤「THE U.S. VS JOHN LENNON」にインストゥルメンタル・ヴァージョンが収録されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする

「43分44秒のIWGP世界ヘビー級選手権と、8分46秒のIWGP女子選手権」



今年(2025年)も、新日本プロレスが「1・4東京ドーム大会」と「1・5東京ドーム大会」を行いました。「1・4」はCSでの生中継があったので、テレビ桟敷で観戦したのですけれど、メインエベントではIWGP世界ヘビー級選手権の「王者・ザック・セイバーJr. X 挑戦者・海野翔太」の試合が行われて「43分44秒」でザックが勝ちました。40分を超える激闘だったのか、と云うと、それは違っていて、ズバリ云って「しょっぱい試合」でした。試合と云うよりも、ザックが海野を公開スパーリングしている様な、ダラダラとつづくよどこまでもな展開で、負けてヘトヘトになっている海野を見下ろして、ザックはピンピンしているんですから、力の差がありすぎて、予想された通りに「海野にはドームのメインは早い」を証明しただけの試合でした。解説のミラノさんは「海野は、何をやりたいんでしょうね」とか呆れているし、ロープ・ブレイクで反則カウントを数えているレフェリーを突き飛ばしたら、ゲスト解説の蝶野さんが「オヤジをどついた」とか喜んでいる始末でした。説明するとですね、メインを裁いたレフェリーのレッドシューズ海野さんは、海野翔太の実の父親なのです。新春早々に親子喧嘩みたいな事を見せられて、困ったちゃんなのでした。

かつての「猪木 X ロビンソン」とか「猪木 X 藤波」とか60分フルタイムだった名勝負は、1時間たっぷりと見せ場があってですね、全く退屈しなかったし、何度も鑑賞に耐えうるからこそ「名勝負」なのですよ。いえね、別に昔は良かった、と云いたいわけではなくてですね、試合は長ければ良いと云うわけじゃないって事なのです。「1・4」の第2試合では、IWGP女子選手権の「王者・岩谷麻優 X 挑戦者・AZM」の試合が行われていてですね、そちらは前座みたいなもんですから「8分46秒」で岩谷が勝って防衛したのです。スターダムでやったのなら20分位はかけた試合でしょうけれど、それがたったの9分足らずなのに、メインエベントよりもずっと良い試合だったのですから、本当に困ったちゃんなのです。日本人は国技と云われる大相撲が好きですけれど、あれって仕切りの時間は長いけれど、実際の勝負時間だと秒殺なんですよ。1分でも長いし、4分超えしたら水入りです。最近のプロレスはメインエベントを長くやれば良いとでも思っているのか、IWGP世界ヘビー級選手権だと30分超えは当然で、今回は海野を売り出す為に更に長くして40分超えにしたのでしょうけれど、アレじゃあ逆効果です。長引けば長引くほどに、ザックの強さばかりが目立ち、海野はしょっぱくなるばかりって、わざわざ東京ドームへ足を運んで、海野へのブーイング以外では静まり返った観客の皆さんも、お疲れ様でしたとしか云えませんなあ。

そして「1・5」ですけれど、第0試合でスターダムの渡辺桃が優勝して、第3試合ではスターダムの白川未奈がメルセデス・モネにタイトルマッチで負けてしまいました。しかしながら、試合時間も「14分6秒」とそこそこ長くて、昔はビジュアル先行だった白川が東京ドームでシングルマッチをする位置まで這い上がって来たのには「夢」があります。メインエベントではIWGP世界ヘビー級選手権で「王者・ザック・セイバーJr. X 挑戦者・リコシェ」が行われて「20分57秒」でザックが勝ちました。2連戦でベルトを守ったのは、ザックが史上初です。前日の半分以下の時間でしたけれど、キリリと締まって良かったのではないでしょうか。セミファイナルの「ケニー・オメガ X ゲイブ・キッド」が「31分55秒」の激闘だったので、それでメインも40分とかやられたら、ちょっと勘弁して欲しいところです。そして、観客動員数は「1・4」が2万4千百7人で「1・5」が1万6千3百人だったそうで、久しぶりに2連戦にした結果ですけれど、2日合計でも4万人では、櫻坂46の東京ドーム公演の1回分(5万5千人・2日で11万人)にも満たないわけでして、困ったちゃんですなあ。かつての「新日 X UWF」とか「猪木引退」とかサバを読んではいたけれど6万人とか7万人とか発表していて、事実として立錐の地なく入っていたわけで、海野は「俺が超満員にする!」とか根拠もなく云っている場合じゃないでしょう。

(小島イコ)

posted by 栗 at 22:00| KINASAI | 更新情報をチェックする