
ジョン・レノンが、1971年9月9日(米国)・同年10月8日(英国)にアップルからリリースした2作目のソロ・アルバム「IMAGINE」の、B面2曲目に収録されているのは「OH MY LOVE」です。オリジナルのリリース当時には、全10曲中で、この「OH MY LOVE」だけがジョンとヨーコさんの共作になっていました。2017年になって、タイトル曲である「IMAGINE」もジョンとヨーコさんの共作になったのですけれど、一体どう云う事なのでしょうか。確かに「IMAGINE」は、ヨーコさんの詩集「グレープフルーツ」から引用した部分もあって、生前のジョンは「自分に意気地がなかったから、ヨーコとの共作とは云えなかった、後悔している」などと云っていたものの、だったら何故に「OH MY LOVE」は、堂々と共作として発表したのでしょうか。この楽曲も、1968年には出来ていた楽曲で、つまりはジョンとヨーコさんが「不倫カップル」だった頃に書かれた楽曲です。それが「OH MY LOVE」なんですから、困ったちゃんなのです。前作アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」に収録された名曲「LOVE」の二番煎じみたいな、繊細で美しい曲ではありますけれど、正に不倫ど真ん中に二人で書いたのですから、「IMAGINE」を共作にするよりも、ずっと開き直っています。
レコーディングは1971年5月28日に、ジョンの自宅にあるアスコット・サウンド・スタジオで行われていて、レコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、ピアノ)、ジョージ・ハリスン(エレクトリック・ギター)、ニッキー・ホプキンス(ピアノ)、クラウス・フォアマン(ベース)、アラン・ホワイト(シンバル)です。前曲である「GIVE ME SOME TRUTH」と同じで、ジョージがギターを弾いているし曲自体もビートルズ時代のものなので、アルバム「IMAGINE」のB面は、とっても「ビートリー」に進行してゆきます。その中間に、ポール・マッカートニーをケチョンケチョンに貶した「HOW DO YOU SLEEP?」がサンドウィッチされていて、やはりジョージがスライド・ギターを弾いているわけで、その後の「HOW?」は明らかにポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作のビートルズ・ナンバーである「THE LONG AND WINDING ROAD」を意識した展開の曲ですし、最後の「OH YOKO!」も1969年には出来ていた曲なのです。A面の「JEALOUS GUY」も含めて、アルバム「IMAGINE」にはビートルズ時代のストックが多く収録されていて、前にも書きましたけれど「ビートルズを信じない」と云い切った「GOD」から後退しています。
勿論、ジョンこそがビートルズを結成して、ビートルズのリーダーであり続けた張本人であって、どんなに「脱・ビートルズ」や「脱・ポール・マッカートニー」を掲げても、元々一人で曲を書いていたジョージの様には上手くゆくわけがないのです。どんなにどちらか片方が書いていたとしても「レノン=マッカートニー」は史上最高のソングライター・チームだったわけで、この「OH MY LOVE」の様に「レノン=オノ」にしても、ジョンが「ビートルズ」や「レノン=マッカートニー」から完全に離れる事は出来ないのです。それは、ポールにも云える事でした。ジョンが甘口にしたと云うアルバム「IMAGINE」が売れたのは、やはりファンが、ジョンにビートルズをやって欲しかったからに他なりません。美しい曲なので「OH MY LOVE」にはカヴァー・ヴァージョンも多く、ワッカーズによるビートルズ風なカヴァーはブートレグではジョンのアウトテイクとして収録されていました。珍品では日本の「元祖・笑わないアイドル」である「Wink」が、日本語でカヴァーしています。また、ジョンのファンだった坂井泉水さんは、ZARDで同名異曲を発表していますし、「MIND GAMES」と云う同名異曲もあります。「OH MY LOVE」のPVは1971年の「IMAGINE / THE FILM」などで観れますし、デモやアウトテイクは、1998年の「JOHN LENNON ANTHOLOGY」や、2018年のアルバム「IMAGINE」の箱などで聴けます。
(小島イコ)