
ビートルズが1969年1月に行った「THE GET BACK SESSIONS」は、1970年にマイケル・リンゼイ=ホック監督が映画「LET IT BE」として1時間半弱に編集して完成させていますが、ピーター・ジャクソン監督で2021年に配信されて2022年にBD化されたドキュメンタリー「GET BACK」では、8時間近い映像で大幅に拡大されてパワーアップされました。だからと云って元々の映画「LET IT BE」には価値がなくなったかと云うと、描かれ方が全く違っているので、両方共に必見です。ドキュメンタリー「GET BACK」を配信したディズニー・プラスは、昨年(2024年)になって、今度は映画「LET IT BE」を配信したのですから、全く阿漕な商売をやっておりますなあ。その内に映画「LET IT BE」もBD化して、何度でも商売する気マンマンなのでしょう。さて、そのドキュメンタリー「GET BACK」で、最も感激した場面は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが二人で「GIVE ME SOME TRUTH」を歌っているところでした。ジョンが1971年9月9日(米国)・同年10月8日(英国)にアップルからリリースした、2作目のソロ・アルバム「IMAGINE」のB面1曲目に収録されている「GIVE ME SOME TRUTH」は、実はビートルズ時代に書かれた曲で、それをポールの方から「アレをやろう」と云って演奏して、二人で歌っているのですから、もう堪りませんなあ。
結局、ビートルズでは正式にレコーディングされなかった「GIVE ME SOME TRUTH」は、近年では「GIMME SOME TRUTH」と表記される様になり、ベスト盤のタイトルに2回も名付けられていますし、アルバム「IMAGINE」のドキュメンタリー作品のタイトルにもなっています。1971年5月に、ジョンの自宅にあるアスコット・サウンド・スタジオでレコーディングされた「GIVE ME SOME TRUTH」のレコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、エレクトリック・ギター)、ジョージ・ハリスン(エレクトリック・ギター、スライド・ギター)、ニッキー・ホプキンス(ピアノ)、ロッド・リントン(アコースティック・ギター)、アンディ・デイヴィス(アコースティック・ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、アラン・ホワイト(ドラムス)です。アルバム「IMAGINE」では、B面1曲目に収録されている重要曲です。1968年にインドで書き始めたと云う曲で、前述の通り1969年1月にビートルズの「THE GET BACK SESSIONS」でも演奏しています。そして、ジョージのリード・ギターが滅茶苦茶にカッコイイのです。もしもビートルズでレコーディングしていたのならば、ポールに文句を云われて、ジョージはこれほどにも自由にリード・ギターを弾かせてはもらえなかったでしょう。
ジョンは初のソロ・アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」では、プライマル・スクリームの影響で新たに曲を書いていたので、ビートルズ時代の曲は「LOOK AT ME」位しか収録していません。その分、アルバム「IMAGINE」では、「JEALOUS GUY」や「GIVE ME SOME TRUTH」や「OH MY LOVE」と云った、明らかにビートルズ時代に書き始めていた曲を正式にレコーディングしています。最後に収録されている「OH YOKO!」も、書き始めたのは1969年ですから、ビートルズ時代に既にあった曲なのです。レコーディングも、剥き出しの状態だったアルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」とは違っていて、フィル・スペクターとガッツリと組んでいて、明らかにヒットを狙っています。特にB面の流れは、楽曲の多くがビートルズ時代に既に書いていた事もあって、ポールをこき下ろした「HOW DO YOU SLEEP?」も含めて、とっても「ビートルズ風」に作っています。そりゃあ、売れますわなあ。「GIVE ME SOME TRUTH」は、ジョンの死後の1982年11月にはシングル「LOVE」のB面になってシングル・カットまでされていますし、前述の通りベスト盤などのタイトルにもなっています。PVは「IMAGINE / THE FILM」に、デモやアウトテイクはアルバム「IMAGINE」の箱などに収録されていて、ジョンの代表曲のひとつとなりました。
(小島イコ)