ビートルズの米国盤シングル47枚も、ポール・マッカートニーの80枚組シングルの箱も、4人の提供曲も、ジョージ・ハリスンのシングル36枚も書き終えたので、次の連載はもう決めているのですけれど、その前に一寸寄り道して、ビートルズの「パチモン」について書きます。以前もビートルズの「パチモン」については書いていて、それで聴き比べしようと旧CDでアルバムを全て二束三文で買い戻した話をしました。それでも「パチモン」には魅力があって、かつての1977年縛りと、現在の1967年縛りの箱なんかを見つけると、中古盤が3枚組で280円位で叩き売りされているので買ってしまいます。公式盤の旧CDが1枚で380円位なので、当然ながら「パチモン」はもっと安くなるわけです。それで、一体いつから1977年縛りが1967年縛りになったのかを探ると、どうやら1992年からそうなったみたいなのです。大抵の「パチモン」は、制作年月日が明記しておらず、それが謎だったのですけれども、1991年頃に売られた「絶滅シリーズ」と云う「パチモン」があってですね、堂々とジャケットにはビートルズの写真を載せているのですけれど、それの帯に「最終入手可能日:平成3年(1991年)12月31日」と書いてあるのです。
それで、1992年からは1967年縛りになったのではないか、と推察されるわけで、ビートルズのCDだと「A HARD DAY'S NIGHT SPECIAL」と「HELP! SPECIAL」と「RUBER SOUL SPECIAL」と「REVOLVER SPECIAL」と「S.G.T. PEPPER'S SPECIAL」と「HEY JUDE SPECIAL」と「ABBEY ROAD SPECIAL」の7枚は集めました。「ABBEY ROAD SPECIAL」が第9巻目になっているので、少なくともあと2枚はあるのでしょう。これらの特徴は、オリジナル・アルバムをそのまんま入れた後に、ボーナス・トラックとしてライヴ音源やアウトテイクを入れているのです。つまり、パイレート盤とブートレグを合わせたカタチで、しかも「A HARD DAY'S NIGHT」の様に当時は公式盤CDがモノラルだけだったアルバムもステレオになっています。このシリーズには、ジョンやポールやローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンもあってですね、ジョンの「SOUL OF JOHN LENNON」と「IMAGINE WORLD」は持っています。それぞれがアルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」とアルバム「IMAGINE」の本編に、それぞれのアウトテイクを加えた構成で、水増し「なんちゃってリミックス」を入れた公式盤の箱なんかよりも良い感じです。
箱の「パチモン」も以前に紹介した以降で2箱買っていて、まずは「THE BEATLES BEST SELECTION 1962-1970」3枚組全60曲で、1977年縛り時代のCDです。コレがマタ、「赤盤」と「青盤」をCD3枚組にしたものではなくてですね、独自の選曲になっているのです。1曲目が「LOVE ME DO」なのは「赤盤」と同じですけれど、2曲目が「P.S. I LOVE YOU」で、3曲目が「BOYS」です。他にも「PLEASE MR POSTMAN(原文ママ)」、「I WANNA BE YOUR MAN」、「TWIST AND SHOUT」、「ASK ME WHY」、「I SAW HER STANDING THERE」、「ROLL OVER BEETHOVEN」、「ANNA(GO TO HIM)」、「MONEY(THAT'S WHAT I WANT)」、「ANYTIME AT ALL」、「IF I FELL」、「LONG TALL SALLY」、「ROCK AND ROLL MUSIC」、「SLOW DOWN」、「DIZZY MISS LIZZY」、「I'VE JUST SEEN A FACE」、「I'M DOWN」、「GOOD DAY SUNSHINE」、「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、「OH! DARLING」、「BECAUSE」、「RAIN」、「BIRTHDAY」、と云ったオリジナルの「赤盤」と「青盤」には未収録だった曲も多く選曲されています。「青盤」にも入っている「GET BACK」と「LET IT BE」は、こちらではアルバム・ヴァージョンです。音源は、旧CDをコピーしたと思われます。歌詞カードが付いていて「ROCK AND ROLL MUSIC」の歌詞が出鱈目なのも、旧CDと同じです。
もうひとつの「パチモン」箱もCD3枚組全60曲入りなのですが、タイトルが「THE BEATLES STORY 1962-1967」となっていて、1967年縛りになってからの「パチモン」です。こちらは「SUPER HITS」と「ROCK'N ROLLS」と「LOVE BALLADES」と1枚づつテーマがあってですね、1枚目の「SUPER HITS」は「LOVE ME DO」、「PLEASE PLEASE ME」、「FROM ME TO YOU」、「SHE LOVES YOU」、「I WANT TO HOLD YOUR HAND」と云った大ヒット曲を1962年から1967年までの音源で収録しています。公式盤の「1」から1968年以降の曲を抜いた様な構成ですが、2位止まりだった「PLEASE PLEASE ME」と「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」が収録されているので「1」よりも良い出来栄えです。「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」が♪ビーリーシアーズ♪まででフェイドアウトするのも一興です。2枚目の「ROCK'N ROLLS」は、公式盤で未CD化の「ROCK’N'ROLL MUSIC」を元ネタにした様なロックンロール集で、カヴァー曲が多く、カヴァーの帝王・ジョン・レノンの魅力がたっぷりなのですが、何故かポールの駄作「HOLD ME TIGHT」なども選曲されています。こちらでは簡単な解説と歌詞カードが付いていますが、同じく「ROCK AND ROLL MUSIC」の歌詞が出鱈目のままです。ちなみに、この「ROCK'N ROLLS」全20曲は、オリジナルの「赤盤」と「青盤」と被っているのは1曲もありません。
3枚目の「LOVE BALLADES」は、公式盤で未CD化の「LOVE SONGS」が元ネタの様な構成で、どうしてもポールの寝ぼけ節が中心となってしまいます。1曲目から「YESTERDAY」で、1枚目の「SUPER HITS」と重複しているので、本当は全59曲です。ジョンの歌も入れようとしたのか、「ASK ME WHY」や「ALL I'VE GOT TO DO」や「YOU REALLY GOT A HOLD ON ME」と云った渋いところも入っています。音源に関しては、「LOVE ME DO」と「SHE LOVES YOU」と「SHE'S A WOMAN」と「YES IT IS」以外は全てがステレオになっています。と云う事はですね、アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」とアルバム「WITH THE BEATLES」とアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」とアルバム「BEATLES FOR SALE」の4作は旧CDではモノラルだったので、ソレが元になっているのではないのです。だったら2009年リマスターが元ネタかと云えば、それも怪しいのです。何故ならば、その時点では「LOVE ME DO」と「SHE LOVES YOU」はモノラルだったけれど、「SHE'S A WOMAN」と「YES IT IS」は旧CDの1988年の「PAST MASTERS」の時点でステレオだったのですよ。何故にモノラルを入れたのかの説明がつかないし、前述の通り「ROCK AND ROLL MUSIC」の歌詞が出鱈目だし、「LOVE ME DO」はリンゴ・ヴァージョンだし、「PLEASE PLEASE ME」は歌詞を間違えるステレオ・ヴァージョンだし、一体、何からコピーしているんでしょうなあ。
(小島イコ)