ジョージ・ハリスンは、1982年リリースのアルバム「GONE TROPPO」から1987年リリースのアルバム「CLOUD NINE」まで、5年間もアルバムをリリースしませんでした。ジョージの個人レーベルと化したダーク・ホースを抱えたワーナーは、よく辛抱したものだと思います。しかしながら、1987年リリースのアルバム「CLOUD NINE」でジョージが大復活を遂げた事で、1988年には「TRAVELING WILBURYS VOLUME 1」を、1989年にはベスト盤「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」を、1990年には「TRAVELING WILBURYS VOLUME 3」と、毎年アルバムをリリースしていて、1992年には2枚組の「LIVE IN JAPAN」をリリースしているので、6年間で6枚出していて、それまでのスローペースを取り返しています。さて、覆面バンドであるトラヴェリング・ウィルベリーズは、1作目がヒットした事でツアーも計画されるのですけれど、1988年12月6日にレフティ・ウィルベリーことロイ・オービソンが心臓発作で急死したのでツアーはなくなりました。それでも、1作目がヒットしたので、ワーナーは2作目もイケると考えて、レコーディングする事となりました。当初は、当然ですが「TRAVELING WILBURYS VOLUME 2」としてレコーディングされています。
ところが、ロイ・オービソンが亡くなった事や、ボブ・ディランがごねたとか、ロイ・オービソンの代わりにデル・シャノンを加えたら1990年2月8日に自殺してしまったとか、諸説あるものの、結局は「TRAVELING WILBURYS VOLUME 2」はお蔵入りとなったのです。それでも、トラヴェリング・ウィルベリーズの活動は続いていて、1990年10月29日に2作目のアルバム「TRAVELING WILBURYS VOLUME 3」をリリースしたのです。亡くなったレフティ(ロイ・オービソン)以外の4人によるこのアルバムの内容は、1「SHE'S MY BABY」、2「INSIDE OUT」、3「IF YOU BELONGED TO ME」、4「THE DEVIL'S BEEN BUSY」、5「DEADLY SINS」、6「POOR HOUSE」、7「WHERE WERE YOU LAST NIGHT?」、8「COOL DRY PLACE」、9「NEW BLUE MOON」、10「YOU TOOK MY BREATH AWAY」、11「WILBURY TWIST」の、全11曲入りです。アルバムは、全英14位・全米11位とヒットしていて、同時期にポール・マッカートニーがリリースしたアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」(全英首位!・全米21位)と比べても、米国ではトラヴェリング・ウィルベリーズが勝っています。
2作目のアルバム「TRAVELING WILBURYS VOLUME 3」では、亡くなったレフティ以外のメンバーが、それぞれ、スパイク・ウィルベリー(ジョージ・ハリスン)、クレイトン・ウィルベリー(ジェフ・リン)、ブー・ウィルベリー(ボブ・ディラン)、マディ・ウィルベリー(トム・ペティ)、と改名していて、ボブ・ディランなんか「ブー」ですから、もはや日本のドリフターズです。どうやら「ブー」ことボブ・ディランが自分のツアーをやる為に脱退を望んでいたらしく、ジャケットで他の3人はサングラスをかけているのに、ブーはやる気がなくなったのか顔出ししていて、ボブ・ディランそのまんまです。第1弾シングルはアルバム冒頭の「SHE'S MY BABY」で、7インチ盤、12インチ盤、CDの3種類が出ています。ゲイリー・ムーアが参加したA面の「SHE'S MY BABY」は、1976年リリースのウイングスとは同名異曲です。7インチ盤のB面は、インストゥルメンタル曲「NEW BLUE MOON」で、12インチ盤とCDには、アルバム未収録でデル・シャノンのカヴァー「RUNAWAY(悲しき街角)」が追悼曲として収録されています。「RUNAWAY」は、現在ではボーナス・トラックで聴ける様になりました。
(小島イコ)