1987年11月にダーク・ホース/ワーナーからリリースされたジョージ・ハリスンのアルバム「CLOUD NINE」は、先行シングル「GOT MY MIND SET ON YOU」の大ヒット(全米首位!・全英2位)でジョージの大復活作となり、1988年1月には第2弾シングル「WHEN WE WAS FAB」をリリースして全米23位・全英25位とそこそこ売れました。ジョージはアルバムからの第3弾シングルとして、1988年6月13日(英国)・同年7月25日(日本)に「THIS IS LOVE」をリリースしました。全英55位まで上がった「THIS IS LOVE」は、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)のジェフ・リンとジョージの共作で、ジェフ・リンが書いた曲の断片をジョージがまとめて1曲にしたもので、二人の共同プロデュースでのアルバム「CLOUD NINE」の中では最も「ELO」風な楽曲となっています。「THIS IS LOVE」のレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、ギター)、ジェフ・リン(バッキング・ヴォーカル、ベース、ギター、キーボード)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、レイ・クーパー(タンバリン)です。
アルバム「CLOUD NINE」は、ジョージとジェフ・リンの二人がベーシック・トラックを多重録音していて、ドラマーはジム・ケルトナーもしくはリンゴ・スター、パーカッションにレイ・クーパー、ギターでエリック・クラプトン、ピアノでエルトン・ジョンやゲイリー・ライト、サックスにジム・ホーンと云ったお馴染みの面々がサポートしています。「THIS IS LOVE」もミュージック・ヴィデオが制作されていて、海沿いの岩場でジョージがギターで弾き語りしていて、途中からピクニックに参加して、再び岩場で演奏すると云う内容です。ジョージのダーク・ホース時代の作品を集めた2004年リリースの箱「THE DARK HORSE YEARS 1976-1992」にはDVDがオマケで付いていて、「THIS SONG」と、「CRACKERBOX PALACE」と、「FASTER」と、「GOT MY MIND SET ON YOU」2種と、「WHEN WE WAS FAB」と、「THIS IS LOVE」のミュージック・ヴィデオをまとめて観る事が出来ます。これからジョージを聴く方々は、とりあえず「THE APPLE YEARS 1968-1975」と「THE DARK HORSE YEARS 1976-1992」の箱を二つ買ってしまう事をオススメします。オマケのDVDは単品でも買えましたけれど、全曲集に近い内容なので、チマチマとバラ売りで揃える心算ならば、箱を買う方が良いですよ。アルバム「電子音楽の世界」なんて、バラでは買う気もおきないでしょう。
シングル「THIS IS LOVE」は、7インチ盤、12インチ盤、CD、の3種でのリリースで、7インチ盤のB面はアルバム「CLOUD NINE」からのシングル・カットとなった「BREATH AWAY FROM HEAVEN」です。12インチ盤ではA面が「THIS IS LOVE」で、B面に「BREATH AWAY FROM HEAVEN」と、1981年リリースのアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」からのジョンへの追悼曲「ALL THOSE YEARS AGO」が収録されています。更にCDシングルには、12インチ盤の3曲に加えて、やはり1981年リリースのアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」から、ホーギー・カーマイケルのカヴァー「HONG KONG BLUES(香港ブルース)」を収録した4曲入りです。「香港ブルース」は、細野晴臣さんが1976年リリースのアルバム「泰安洋行」でカヴァーしている事でも知られています。ジョージは第1弾シングル「GOT MY MIND SET ON YOU」のB面にはアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」から差し替えになった4曲中の1曲である「LAY HIS HEAD」を、第2弾シングル「WHEN WE WAS FAB」のB面には映画「上海サプライズ」に提供した楽曲のひとつである「ZIG ZAG」と、アルバム未収録曲を入れていたし、「GOT MY MIND SET ON YOU」と「WHEN WE WAS FAB」には12インチ・ヴァージョンもあったので、アルバムのリリースから半年以上も経ってから全てがアルバム既出音源だけとなったシングル「THIS IS LOVE」は不評でした。
ところが、ジョージは当初はシングル「THIS IS LOVE」のカップリングとして、アルバム未収録の新曲で新録の「HANDLE WITH CARE」を用意していて、ジョージ、ジェフ・リン、ロイ・オービソン、ボブ・ディラン、トム・ペティの布陣で、ボブ・ディランのスタジオでレコーディングしていたのです。ドラマーは、ファン倶楽部ネタでお馴染みのジム・ケルトナーで、超豪華絢爛なメンバーです。しかし、シングルのB面でカップリング曲にするには勿体ない出来栄え(そんなの、当たり前じゃん!)だったので、シングル「THIS IS LOVE」には収録せずに、5人で覆面バンドを組む事になったわけですなあ。それが「トラヴェリング・ウィルベリーズ」となるのですけれど、アルバムまで制作したのは、ワーナーの要望でした。のんびりとジョージの新作アルバムを待ってくれていたワーナーは、アルバム「CLOUD NINE」が売れたので、ここぞとばかりにジョージで儲けようとしたわけですなあ。それから、ジョージはアルバム「CLOUD NINE」からは、表題曲の「CLOUD 9」と「DEVIL'S RADIO」もプロモーション・シングルとしてリリースしていて、2曲共に1991年12月の来日公演でも披露しています。
(小島イコ)