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2024年11月20日

「ポールの道」#560「GEORGE'S SINGLES」#24「WHEN WE WAS FAB / ZIG ZAG / THAT’S THE WAY IT GOES」

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1987年11月にダーク・ホース/ワーナーからリリースされたジョージ・ハリスンの5年ぶりの復帰アルバム「CLOUD NINE」は、先行シングルだった「GOT MY MIND SET ON YOU」が全米首位!・全英2位の特大ヒットとなり、アルバムも全米8位・全英10位と売れました。ジョージは1988年1月25日(英国)・同年1月30日(米国)・同年2月25日(日本)に、第2弾シングルとして「WHEN WE WAS FAB / ZIG ZAG」をリリースしています。こちらのシングルは全米23位・全英25位と、スマッシュ・ヒットしています。このシングルは、7インチ盤と、7インチの箱と、12インチ盤と、12インチのピクチャー盤と、8センチCDの、5種類でリリースされています。7インチは「WHEN WE WAS FAB / ZIG ZAG」のカップリングで、12インチとCDは、それに加えて「THAT'S THE WAY IT GOES」のリミックス・ヴァージョンと、「WHEN WE WAS FAB」のリヴァース・エンド・ヴァージョンが収録されています。12インチ盤とCDに収録された「WHEN WE WAS FAB」は「UNEXTENDED VERSION」と書いてありますが、つまりは「拡大していないヴァージョン」で、7インチ・シングルと2秒違うだけで、基本的には同じなので、シャレなんでしょう。

表題曲の「WHEN WE WAS FAB」のレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、ギター、シタール)、リンゴ・スター(ドラムス)、ジェフ・リン(ギター、ベース、キーボード)、レイ・クーパー(パーカッション)、ボビー・コック(チェロ)、ゲイリー・ライト(ピアノ)です。「WHEN WE WAS FAB」は、ビートルズのパロディで、しかもジョージの曲を焼き直した「THIS GUITAR(CAN'T KEEP FROM CRYING)」や「HERE COMES THE MOON」の様な路線ではなく、1967年のサイケデリック期のビートルズを意図的にパロディ化しています。具体的にはジョンが主導で書いた「レノン=マッカートニー作品」である「I AM THE WALRUS」や「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」などを下敷きにして、ジョージらしいシタールも使っています。12インチ盤に収録されている「リヴァース・エンド・ヴァージョン」は、エンディングが逆回転になっている長尺版で、ビートルズの1966年のアルバム「REVOLVER」なども思い起こさせる出来栄えになっています。ドラムスはリンゴ・スターが叩いていて、本物のビートルズの半分が参加しているので、ラトルズやユートピアでも本物には敵いません。

ジャケットもクラウス・フォアマンが手掛けていて、ビートルズのアルバム「REVOLVER」の1966年のジョージと1987年のジョージを描いたものとなっています。ミュージック・ヴィデオはゴドレイ&クレームが監督していて、1カメで長回しした様に見せかけて、色んな遊びが入っていて、壁の前でジョージがギターを弾いて歌っていると、リンゴ、ジェフ・リン、エルトン・ジョン、ポール・サイモン、レイ・クーパーなどが出て来て、中盤にはジョージ、リンゴに加えて、セイウチの被り物で左利きのリッケンバッカー・ベースを弾く人物が加わり、その前をニール・アスピノールがジョンのアルバム「IMAGINE」の裏ジャケットを持って通り過ぎる場面があって、つまりはビートルズの4人が再集結しています。セイウチの中身はジョージ自身が「ポールだ」と云っていたのに、ポールが「別人に代わってもらった」と暴露しちゃって、そう云う夢のない話はしないで欲しいですよ、サー・ポール・マッカートニー。MVの最後ではジョージが千手観音みたいになっちゃうのも見どころですし、高い評価を得ています。

ポール・サイモンの出演に関しては、ゴドレイ&クレームは「出演させた覚えはない」と云っていて、ロル・クレームに至っては「ポール・サイモンとは会った事もない」とまで云っていますが、ジョージとポール・サイモンは1976年に共演しているので、旧知の仲なのでありえない話ではありません。ちなみに、ゴドレイ&クレームは、10ccの前に「英国版のサイモン&ガーファンクル」として売り出されそうになった過去があります。B面になった「ZIG ZAG」は、映画「上海サプライズ」用にジョージが提供した楽曲のひとつで、アルバム未収録曲です。「ZIG ZAG」は、現在ではアルバム「CLOUD NINE」のボーナス・トラックとして収録されているので、容易に聴く事が出来ます。12インチ盤とCDに収録されている「THAT'S THE WAY IT GOES」は、1982年のアルバム「GONE TROPPO」に収録されていた曲をリミックスした音源です。この楽曲はジョージ自身が選曲したベスト盤「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」にも収録されていたばかりか、1991年12月の来日公演でのセットリストの最終35曲に残り、リハーサルまでやったのに本番では演奏されなかった楽曲です。そうした事実を知ると、ジョージ自身は酷評されたアルバム「GONE TROPPO」を気に入っていたんだろうなあ、と思えます。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする