1982年11月にリリースされたジョージ・ハリスンのアルバム「GONE TROPPO」からは、全世界でのシングル・カットをしたのは「WAKE UP MY LOVE(愛に気づいて) / GREECE」だけでしたけれども、米国とオランダでは1983年2月に第2弾シングル「I REALLY LOVE YOU / CIRCLES」がダーク・ホース/ワーナーからリリースされています。日本ではそのカップリングではリリースされず、1983年2月25日に第2弾シングルとして「DREAM AWAY(オ・ラ・イ・ナ・エ) / UNKNOWN DELIGHT」が、日本独自でワーナー・パイオニアからリリースされています。両面共にアルバム「GONE TROPPO」からのシングル・カットですけれど、A面の「DREAM AWAY(オ・ラ・イ・ナ・エ)」は、ジョージが設立した映画会社であるハンド・メイド・フィルムズが制作したテリー・ギリアム監督の映画「TIME BANDITS(バンデットQ)」の主題歌で、邦題の「オ・ラ・イ・ナ・エ」はコーラスされる呪文の様なフレーズから名付けられています。映画「バンデットQ」は、ハンド・メイド・フィルムズが制作した映画の中では最も有名でヒットしていて、日本での公開に合わせるカタチでシングル・カットされています。つまり、映画「バンデットQ」は、ジョージが制作総指揮と主題歌を担当した映画です。
映画の主題歌になった事で、全米108位と沈没したアルバム「GONE TROPPO」の中では有名な曲となっていて、レコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(リード・ヴォーカル、ギター、バッキング・ヴォーカル)、マイク・モラン(ピアノ、シンセサイザー)、アラン・ジョーンズ(ベース)、デイヴ・マタックス(ドラムス)、レイ・クーパー(パーカッション)、ビリー・プレストン(バッキング・ヴォーカル)、シリータ(バッキング・ヴォーカル)、サラ・レコー(バッキング・ヴォーカル)となっていて、コーラス部分ではシリータの声が目立っています。当時のシリータはビリー・プレストンとデュエット・アルバムをリリースしていたので、その繋がりで参加したのでしょう。ジョージらしいポップ路線で、コーラスは一度聴いたら忘れられない佳曲だと思います。B面には、これまたジョージの泣き節が全開の「UNKNOWN DELIGHT」がカップリングされています。ジョージは、アルバム「GONE TROPPO」で好き放題やって5年間も音楽活動から離れてしまうので、このシングルを最後に引退状態となってしまいます。
それでですね、一体、ダーク・ホースとワーナーの契約はどうなっていたのでしょうか。大瀧師匠のナイアガラは、1976年に3年で12枚などと云う、後で考えたらトンデモナイ契約をコロムビアと結んでいたわけで、大瀧師匠は「ココナツ・バンク」や「SUGAR BABE」も居るから大丈夫だろうと契約したら、みんないなくなってしまい、ノルマ達成の為にほとんどひとりでレコードを作ってはリリースするハメになったのですけれど、同じ1976年にジョージはダーク・ホース・レーベルごとワーナーに移籍していて、ワーナーはジョージのソロ・アルバムしか求めていなかったので、1979年以降は事実上はジョージのソロ・レーベルとなったのです。そして、ジョージは、1976年にアルバム「THIRTY THREE & 1/3」を、1979年にアルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」を、1981年にアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」を、1982年にアルバム「GONE TROPPO」をリリースしていて、ここまで6年間で4作のスローペースなのですけれど、次が5年後の1987年のアルバム「CLOUD NINE」なので、12年間で5作しかアルバムをリリースしていないわけですよ。ワーナーは、何故にそんなにのんびりと構えていたのでしょうか。大瀧師匠に比べたら、随分とゆっくりでしたけれど、まあ、ソニーに移籍後の大瀧師匠も同じ様なスローペースになるんですけれどね。
それから、評論家は勿論、ファンにまで酷評されたアルバム「GONE TROPPO」ですけれど、ジョージ本人の自己評価は高かったとも思えます。それは、1989年にジョージが自分で選曲したベスト盤「BEST OF DARK HORSE YEARS 1976-1989」に表れていて、内容は、1「POOR LITTLE GIRL」(1989)、2「BLOW AWAY」(1979)、3「THAT'S THE WAY IT GOSE」(1982)、4「COCKAMAMIE BUSINESS」(1989)、5「WAKE UP MY LOVE」(1982)、6「LIFE ITSELF」(1981)、7「GOT MY MIND SET ON YOU」(1987)、8「CRACKERBOX PALACE」(1976)、9「CLOUD 9」(1987)、10「HERE COMES THE MOON」(1979)、11「GONE TROPPO」(1982)、12「WHEN WE WAS FAB」(1987)、13「LOVE COMES TO EVERYONE」(1979)、14「ALL THOSE YEARS AGO」(1981)、15「CHEER DOWN」(1989)の、全15曲入りなのですけれど、なんと、アルバム「GONE TROPPO」から「WAKE UP MY LOVE」と「THAT'S THE WAY IT GOSE」と「GONE TROPPO」と3曲も収録しています。満遍なく各アルバムから選んでいる様に見えて、アルバム「THIRTY THREE & 1/3」からは「CRACKERBOX PALACE」しか収録されていないし、アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」からも2曲で、アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」とアルバム「CLOUD NINE」と同数の3曲なんですから、的外れではないでしょう。
(小島イコ)