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2024年11月14日

「ポールの道」#374「GEORGE'S SINGLES」#18「WAKE UP MY LOVE / GREECE」

ゴーン・トロッポ


1976年にダーク・ホースをレーベルごと移籍させたワーナーは、当然の事ですが、ジョージ・ハリスンのソロ・アルバムをリリースしたかったわけで、実際に他のミュージシャンのレコードをリリースしたのは1978年までで、1979年以降はジョージのレコードしかリリースしていません。それはそうなんでしょうけれど、ジョージは移籍後に1976年リリースのアルバム「THIRTY THREE & 1/3」の次は、1979年リリースのアルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」で、その次が1981年リリースのアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」で、そのまた次が1982年リリースのアルバム「GONE TROPPO」で、その次は1987年リリースのアルバム「CLOUD NINE」なのです。アルバム「THIRTY THREE & 1/3」からアルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」までのインターバルは2年半もあるし、1981年のアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」は全10曲中4曲を差し替えてレコーディングし直しさせているし、アルバム「GONE TROPPO」からアルバム「CLOUD NINE」までのインターバルは5年もあります。現在では2年半とか5年とかのインターバルは珍しくないでしょうけれど、1970年代や1980年代には普通は1年に1枚のアルバムを制作していたし、1960年代には1年に2枚とか3枚とか出しているのが普通でした。

ジョン・レノンは、1975年リリースのシングル集「SHAVED FISH」から1980年リリースのアルバム「DOUBLE FANTASY」まで5年のインターバルがありましたが、それはジョンがどこのレコード会社とも契約しなかったからで、ずっとジョージと契約していたワーナーは、そう云った面では随分と辛抱強かったとも云えます。但し、前述の様にジョージ以外のダーク・ホースのレコードは一切出さなくなったし、ジョージのアルバムの内容にもイチャモンを付けて半数近い曲をレコーディングし直しさせたりもしています。でもですね、だとすると1982年10月27日にリリースされたアルバム「GONE TROPPO」は、一体何なのでしょうか。内容は、A面が、1「WAKE UP MY LOVE(愛に気づいて)」、2「THAT'S THE WAY IT GOSE」、3「I REALLY LOVE YOU」、4「GREECE」、5「GONE TROPPO」で、B面が、1「MYSTICAL ONE」、2「UNKNOWN DELIGHT」、3「BABY DON'T RUN AWAY」、4「DREAM AWAY」、5「CIRCLES」の、全10曲入りなんですけれど、マジでこの時のジョージは「キレちゃいないよ、俺をキレさせたら大したもんだよ」なのです。リリース当時には、ビートルズのファンからまで酷評されまくったアルバムでした。

アルバム「GONE TROPPO」は、全米108位で全英や日本ではチャート入りさえしていません。レコーディング・メンバーは、ジョージ(リード・ヴォーカル、ギター、ベース)の他は、ヘンリー・スピネッティ(ドラムス)、ハービー・フラワーズ(ベース)、レイ・クーパー(パーカッション)、デイヴ・マタックス(ドラムス)、ビリー・プレストン(キーボード)、マイク・モラン(シンセサイザー、ピアノ)、ディープ・パープルのジョン・ロード(キーボード)、シリータ(ヴォーカル)などが参加しています。第1弾シングルは、1982年10月27日にリリースされた「WAKE UP MY LOVE(愛に気づいて) / GREECE」です。アルバム冒頭を飾ったA面の「WAKE UP MY LOVE」は、シンセサイザー・ポップ路線の佳曲です。全米53位とアルバムよりは売れていて、ジョージはビートルズにシンセサイザーを導入した男ですので、こうしたニューウェーブ風な楽曲は、元祖で本家でお手の物なんですけれど、アタマが固いビートルズ・ファンには到底受け入れる事は出来なかったわけですよ。B面の「GREECE」もアルバムからのシングル・カットで、トロピカルなインストゥルメンタル曲(実際にインストゥルメンタル曲とクレジットされている)かと思う程にイントロとアウトロが長くて、中盤と終盤にチラリンコと歌が入っているヘンチクリンな曲です。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする