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2024年11月11日

「ポールの道」#371「GEORGE'S SINGLES」#15「FASTER / YOUR LOVE IS FOREVER」

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1979年2月20日にリリースされたジョージ・ハリスンの傑作アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」は、内容の素晴らしさとは反して余りヒットしていません。故に、第1弾シングル「BLOW AWAY」(全米16位・全英51位)と第2弾シングル「LOVE COMES TO EVERYONE(愛はすべての人に)」(全米・全英共にチャート入りせず)と、シングルもヒットせず、米国や日本では第2弾シングルまでで打ち止めになっています。しかし、英国では1979年7月13日に、第3弾シングル「FASTER / YOUR LOVE IS FOREVER」が初回盤はピクチャーディスクでリリースされていて、結果から云えば全く売れなかったので、コレクターの方々にとっては貴重なシングルとなっています。このカップリングがシングル化された事で、アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」からは、全10曲中、「LOVE COMES TO EVERYONE(愛はすべての人に)」と「SOFT-HEARTED HANA」と「BLOW AWAY」と「FASTER」と「YOUR LOVE IS FOREVER(永遠の愛)」と「SOFT TOUCH」と「IF YOU BELIEVE」の、7曲がシングル化された事になりました。しかも、英国盤と米国盤と日本盤では、それぞれ違ったカップリングになっているので、これまたコレクターの方々にとっては集め甲斐があるアイテムなのでしょう。

A面の「FASTER」は、ジョージの趣味のひとつであるF1観戦から出来た楽曲で、レコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、12弦アコースティック・ギター、スライド・ギター、エレキ・ギター、ベース、バッキング・ヴォーカル)、ニール・ラーセン(ピアノ)、アンディ・ニューマーク(ドラムス)、レイ・クーパー(タンバリン)、デル・ニューマン(ストリングス・アレンジ)で、ジョージが各種ギターだけではなく、ベースも弾いています。この辺には、ポール・マッカートニーに対抗意識があったのかもしれません。実は、ジョージはビートルズ時代にもベースを弾いている曲があって、1969年リリースのアルバム「ABBEY ROAD」のB面メドレーでポールがピアノを弾いている曲(「GOLDEN SLUMBERS」〜「CARRY THAT WEIGHT」)では、ジョージがベースを弾いています。ピクチャーディスクは、A面がワールド・チャンピオン・ドライバーの顔で、B面はジョン・プレイヤー・スペシャルのレーシング・カーとなっています。F1カーのエンジン音が効果音として使われていて、アルバムではB面1曲目に収録されているのですけれど、A面の最後が「BLOW AWAY」で、ひっくり返すと「FASTER」のエンジン音と云うのは、アナログ盤ならではの趣向でした。

B面の「YOUR LOVE IS FOREVER」は、当初はインストゥルメンタル曲として書かれていて、歌詞は後付けです。ジョージ本人が「SOMETHING」に匹敵するメロディーと自画自賛した曲で、アルバムの中でも屈指の美しい楽曲となっています。こちらのレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、エレキ・ギター、スライド・ギター、バッキング・ヴォーカル)、スティーヴ・ウィンウッド(シンセサイザー)、ウィリー・ウィークス(ベース)、アンディ・ニューマーク(ドラムス)です。こうして見ると、アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」は、しっかりとベーシック・トラックをレコーディングして、そこにジョージが各種ギターやヴォーカルをオーバーダビングしていると分かります。特にスティーヴ・ウィンウッドによるシンセサイザーが効果的で、前々作である1975年リリースのアルバム「EXTRA TEXTURE(READ ALL ABOUT IT)(ジョージ・ハリスン帝国)」や、前作である1976年リリースのアルバム「THIRTY THREE & 1/3」での、デイヴィッド・フォスターによる「AOR路線」とは違ったアレンジになっている「ポップ路線」や「ロック路線」への回帰が傑作となった理由のひとつでしょう。アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」には、2004年にリイシューされた際には「HERE COMES THE MOON」のデモ音源が、2007年の配信限定ではそれに加えて「BLOW AWAY」のデモ音源が、ボーナス・トラックとして収録されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする