元ビートルズのメンバーとしては初の北米ツアー(1974年11月2日〜12月20日、全45公演)を終えたジョージ・ハリスンは、1975年9月22日(米国)、同年10月3日(英国)、同年10月20日(日本)に、アルバム「EXTRA TEXTURE(READ ALL ABOUT IT)(ジョージ・ハリスン帝国)」をアップルからリリースしました。翌1976年2月でビートルズ時代の1967年に交わした9年間の契約が満了するので、このアルバム「EXTRA TEXTURE(READ ALL ABOUT IT)」は元ビートルズのオリジナル・アルバムとしては最後の作品となっていて、リンゴのマークが芯だけになっていると云う、ジョージらしい遊び心もあります。アルバムの内容は、A面が、1「YOU(二人はアイ・ラヴ・ユー)」、2「THE ANSWER'S AT THE END(答は最後に)」、3「THIS GUITAR(CAN'T KEEP FROM CRYING)(ギターは泣いている)」、4「OOH BABY(YOU KNOW THAT I LOVE YOU)(ウー・ベイビー、わかるかい)」、5「WORLD OF STONE(悲しみの世界)」で、B面が、1「A BIT MORE OF YOU(君を抱きしめて)」、2「CAN'T STOP THINKING ABOUT YOU(つのる想い)」、3「TIRED OF MIDNIGHT BLUE(哀しみのミッドナイト・ブルー)」、4「GREY CLOUDY LIES(暗い偽り)」、5「HIS NAME IS “LEGS”(LADIES & GENTLEMAN)(主人公レッグス)」の、全10曲です。
A面1曲目の「YOU(二人はアイ・ラヴ・ユー)」は、B面1曲目の「A BIT MORE OF YOU(君を抱きしめて)」でリプライズされていて、シングル「YOU(二人はアイ・ラヴ・ユー) / WORLD OF STONE(悲しみの世界)」は、1975年9月15日に先行シングルとしてアップルからリリースされています。前述の通り、アルバムではA面1曲目とB面1曲目に収録されている「YOU」は、アルバムの核となった名曲ですが、この曲は1971年にロニー・スペクターの為にジョージが書いたものです。レコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、ギター)、レオン・ラッセル(ピアノ)、ゲイリー・ライト(エレクトリック・ピアノ)、カール・レイドル(ベース)、ジム・ゴードン(ドラムス)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、ジム・ホーン(サックス)、デイヴィッド・フォスター(オルガン、シンセサイザー)です。ベーシック・トラックは1971年にロニー・スペクター用としてレコーディングされていて、キーが高いのでテープ・スピードを落としてジョージが歌入れして元のスピードに戻しているので、ジョージの声が甲高くなっています。参加メンバーでも分かる通り、ジョージの1970年11月リリースのアルバム「ALL THINGS MUST PASS」に近いメンバーでのベーシック・トラックに、デイヴィッド・フォスターがシンセサイザーなどをダビングして完成させた楽曲です。
全米20位・全英38位と、かつての栄光と比べたら低い成績ではありましたが、ズバリ云って「YOU」は名曲です。1991年12月の来日公演では演奏されていないし、ジョージはこの曲を一度もライヴで披露した事がありませんが、ソレは前述した様なレコーディングだったので、そもそもライヴでは再現不可能だったのです。EMIが1976年11月に勝手に選曲して出した「THE BEST OF GEORGE HARRISON」は、「BANGLA-DESH」のシングル・ヴァージョンと、この「YOU」を収録している点では高評価出来ます。今年(2024年)に再発されたので現在入手可能な2009年リリースのオールタイム・ベスト盤「LET IT ROLL」は、本当にオリヴィアさんが選曲したのかが怪しい訳が分からない代物で、1974年リリースのアルバム「DARK HORSE」や、1975年リリースのアルバム「EXTRA TEXTURE(READ ALL ABOUT IT)」や、1976年リリースのアルバム「THIRTY THREE & 1/3」や、1982年リリースのアルバム「GONE TROPPO」からは1曲も選ばれていないダメダメ盤です。せめて「DARK HORSE」や「DING DONG, DING DONG」や「YOU」や「THIS GUITAR(CAN'T KEEP FROM CRYING)」や「THIS SONG」や「CRACKERBOX PALACE」や「WAKE UP MY LOVE」などのシングル曲は、当然のことながら選曲されるべきです。だから、こうしてジョージのシングル曲について書いているわけです。
シングルのB面となったのは、「WORLD OF STONE(悲しみの世界)」で、同じくアルバム「EXTRA TEXTURE(READ ALL ABOUT IT)」からのシングル・カットです。アナログ盤だと、A面最初の1曲目とA面最後の5曲目をカップリングした強力盤だったわけですなあ。こちらのレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、エレキ・ギター、バッキング・ヴォーカル)、デイヴィッド・フォスター(ピアノ、ARPシンセサイザー)、ゲイリー・ライト(オルガン)、ジェシ・エド・デイヴィス(エレキ・ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、ジム・ケルトナー(ドラムス)です。こちらは、アルバム「EXTRA TEXTURE(READ ALL ABOUT IT)」の為に集まったメンバーで構成されています。アルバムのレコーディングは、「YOU」以外は1975年6月から7月にかけて行われていて、英国ではチャート入りしていませんが、全米8位まで上がっています。但し、幾ら名曲とは云え、1971年作の「YOU」を当時のベーシック・トラックのまんまで目玉にしている点や、ソレにつづくメロウなバラードの連発(個人的には嫌いではない)や、やっとロックっぽくなる最後の「HIS NAME IS “LEGS”(LADIES & GENTLEMAN)(主人公レッグス)」でゲスト・ヴォーカルを本物のレッグス・ラリー・スミス(元・ボンゾ・ドッグ・バンドでジョージ宅に居候していた程の親友)に任せていたりと、何だかバラバラな印象がするアルバムではあります。
(小島イコ)