ジョージ・ハリスンとボブ・ディランの交流は深く、ジョージは1970年11月にリリースしたアナログ3枚組の大作「ALL THINGS MUST PASS」のA面1曲目に収録された「I'D HAVE YOU ANYTIME」をジョージとディランで共作(1968年作)していて、ディランが1970年9月にリリースしたアルバム「NEW MORNING(新しい夜明け)」に収録した「IF NOT FOR YOU」を、B面2曲目でカヴァーしています。ジョージが呼び掛けた1971年8月1日の「バングラデシュ・コンサート」にも、ボブ・ディランは出演しています。1989年には、以前に書いた通りに、ジョージ、ジェフ・リン、ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソンで覆面バンド「トラヴェリング・ウィルベリーズ」を結成して、2作のアルバムを制作しています。トラヴェリング・ウィルベリーズのアルバムは「VOL.1」と「VOL.3」しか発表されていませんが、1988年に「VOL.1」をリリース後に、同じメンバーで「VOL.2」を制作し始めたらロイ・オービソンが亡くなってしまい、代わりにデル・シャノンを加えて「VOL.2」を制作中にデル・シャノンも亡くなってしまったので、「VOL.2」は幻のアルバムとなったのです。1992年10月26日に行われたボブ・ディランの「デビュー30周年記念コンサート」にも、ジョージは参加していて、「ABSOLUTELY SWEET MARIE」や「MY BACK PAGES」や、ライヴ盤には入っていないものの「IF NOT FOR YOU」も歌っています。
その「IF NOT FOR YOU」は、ディラン・ヴァージョンにもジョージがセッションで参加していて、1991年にリリースされたCD3枚組のレア音源集「THE BOOTLEG SERIES VOLUME 1-3(Rare & Unreleased)1961–1991」に、ジョージがスライド・ギターを弾いたヴァージョンが収録されています。この時のセッションの全貌は、2021年にリリースされたCD3枚組の「BOB DYLAN 1970 With Special Guest George Harrison」で聴く事が出来ます。名曲「IF NOT FOR YOU」は、1971年リリースのオリビア・ニュートン=ジョンのデビュー・アルバムの表題曲にもなっていて、シングル・ヒットしたので、オリビアのヴァージョンが一番有名なのかもしれません。オリビアはジョージの奥さん(区別する為に「オリヴィアさん」と表記している)と名前が同じですが、ジョージが好きらしく「IF NOT FOR YOU」もジョージのヴァージョンを参考にしているし、「WHAT IS LIFE」と「BEHIND THE LOCKED DOOR」もカヴァーしています。ジョージの参加作品に戻ると、ジョン・レノンの長男であるジュリアン・レノンの1991年リリースのアルバム「HELP YOURSELF」に収録された「SALTWATER」でのスライド・ギターがジョージに酷似していて、コレはですね、ジョージ本人が弾いている説と、ジョージが弾いたデモ音源をそのまんまコピーして別人が弾いている説があります。どちらにしろ、かつてのバンド仲間の息子の曲に関与していたのは確かです。1992年リリースのアルバム「THE BUNBURY TAILS」に収録された「RIDE RAJBUNS」では、ジョージが曲を書いて、ジョージとダニーの親子でデュエットしています。
同1992年リリースのアルヴィン・リーのアルバム「ZOOM」に収録された「REAL LIFE BLUES」に、スライド・ギターで参加して、翌1993年の同じくアルヴィン・リーのアルバム「NINETEENNINETYFOUR」に収録された、ジョンが主導で書いた「レノン=マッカートニー」作のビートルズのカヴァー「I WANT YOU」と、「THE BLUEST BLUES」でスライド・ギターを弾いています。1992年リリースのジミー・ネイルのアルバム「GROWING UP IN PUBLIC」に収録された「REAL LOVE」(ビートルズとは同名異曲)では、スライド・ギターを弾いています。1995年リリースのゲイリー・ライトのアルバム「FIRST SIGHS OF LIFE」に収録された「DON'T TRY TO OWN ME」では、バッキング・ヴォーカルで参加しています。1996年リリースのカール・パーキンスの遺作アルバム「GO CAT GO!」に収録された「DISTANCE MAKES NO DIFFERENCE WITH LOVE」ではスライド・ギターを弾いていて、このアルバムにはポール・マッカートニーとリンゴ・スターもそれぞれ別の曲ですが参加しています。カール・パーキンスとは、1985年の特番でも共演しています。1997年にリリースされたラヴィ・シャンカールのアルバム「CHANTS OF INDIA」には、アコースティック・ギター、ヴィブラフォン、オートハーブ、コーラスで参加しています。ジョージの場合、自分の仲間との共演が多く、義理堅いのです。
(小島イコ)