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2024年10月22日

「ポールの道」#531「FAB4 GAVE AWAY」#73 「PAUL McCARTNEY 1992-1996」

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1986年7月にリリースされたポール・マッカートニーのアルバム「PRESS TO PLAY」は、現在でも駄作と云われていて、その責任は全13曲中8曲をポールと共作した10ccのエリック・スチュワートにある、などと云う出鱈目な事を書いているバカな評論家もいます。アルバム「PRESS TO PLAY」は、全米30位と落ち込みましたけれど、全英8位と、本国である英国では普通にヒットしています。バカな評論家は、次作となった1989年リリースのアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」を絶賛しているものの、全英首位!は立派ですけれど、全米では21位までしか上がっていません。ポールは当時「今回のアルバムはまだ300万枚しか売れていないから、世界ツアーをやってもっと売らなきゃいけない」などと信じられない発言をしていて、思わず「まだ300万枚?」とテレビ画面のポールに向かってツッコミを入れてしまいました。ポールが復活したのは、アルバム「FLOWERS IN THE DIRT」だけではなく、その直後に行ったワールド・ツアーとセットで考えないと話がおかしくなるのです。1989年から来日公演も含めた1990年までのワールド・ツアーで、ポールはアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」から6曲も披露していますが、次の1993年のワールド・ツアーでは1曲も披露していないどころか、現在(2024年)までつづくライヴではアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」からは全く演奏していません。個人的には、1993年2月リリースのアルバム「OFF THE GROUND」の方が、シングル・カップリング曲も含めて充実していると思います。何せ、カップリング曲だけを集めた盤との2枚組CDまでリリースしているのです。

さて、1987年8月に、10ccとゴドレイ&クレームの合同ベスト盤「CHANGING FACES」が、ポリドールからリリースされました。当時は、1983年にエリック・スチュワートとグレアム・グールドマンの10ccは解散していて、ゴドレイ&クレームは翌々1989年にコンビを解消する事となり、4人がバラバラになっていました。ところが、合同ベスト盤「CHANGING FACES」が思ったよりも売れて、プラチナ・アルバムとなり、ポリドールは、エリック・スチュワート、グレアム・グールドマン、ロル・クレーム、ケヴィン・ゴドレイのオリジナル10ccによる再結成を打診したのです。その流れで、エリック・スチュワートとグレアム・グールドマンによる再結成となり、1992年5月にアルバム「...MEANWHILE」が10cc名義でポリドールからリリースされました。内容は、1「WOMAN IN LOVE」、2「WONDERLAND」、3「FILL HER UP」、4「SOMETHING SPECIAL」、5「WELCOME TO PARADISE」、6「THE STARS DIDN'T SHOW」、7「GREEN EYED MONSTER」、8「CHARITY BEGINS AT HOME」、9「SHINE A LIGHT IN THE DARK」、10「DON'T BREAK THE PROMISES」の全10曲入りです。現在では、シングル・ヴァージョンなどをボーナス・トラックとした、15曲入りと16曲入りもあります。

この中で「WONDERLAND」と「SOMETHING SPECIAL」と「WELCOME TO PARADISE」と「THE STARS DIDN'T SHOW」と「CHARITY BEGINS AT HOME」と「SHINE A LIGHT IN THE DARK」の6曲ではロル・クレームが、「WELCOME TO PARADISE」と「CHARITY BEGINS AT HOME」の2曲ではケヴィン・ゴドレイが、バッキング・ヴォーカルで参加していて、「THE STARS DIDN'T SHOW」はケヴィンが歌っています。ロル・クレームとケヴィン・ゴドレイが参加しているのは、前述の流れでオリジナル10ccの4人での再結成が要請されていたのと、ゴドレイ&クレームが契約が残っていたのに勝手にコンビを解消したペナルティーだった為です。前置きが長くなりましたが、アルバム「...MEANWHILE」本編で最後を飾る「DON'T BREAK THE PROMISES」は、ポールのアルバム「PRESS TO PLAY」の時にポールとエリック・スチュワートが共作した楽曲を元にして、グレアム・グールドマンも加えた3人による共作となっています。エリック・スチュワートは事後承諾でこの曲を収録したらしく、アルバムがリリースされた後でポールに電話でお礼を云ったら、ポールは「何だか分からない印税が振り込まれていたけど、アレはエリックか。だったら、もっとボツ曲をレコーディングして儲けさせてくれよ」と応えたそうです。

その為なのか、エリック・スチュワートは1995年の10cc名義でのアルバム「MIRROR MIRROR」で、やはりポールと共作した「YVONNE'S THE ONE(イヴォンヌこそ我が本命)」を収録していて、ポールはリズム・ギターも弾いています。エリックの単独作「CODE OF SILENCE(沈黙の法則)」でも、ポールはストリングスとエレクトリック・ピアノとパーカッションなどで参加しています。アルバム「MIRROR MIRROR」は日本のカッティング・エッジ(エイベックス)が原盤で、日本盤が全15曲入りで、英国盤が全14曲入りで、米国盤が全10曲入りです。10cc名義になっていますが、内容はエリック・スチュワートとグレアム・グールドマンのそれぞれのソロを収録していて、10ccとは思えないからか、今年(2024年)にリリースされた10ccの全集BOX「20 Years: 1972-1992」には未収録です。「DON'T BREAK THE PROMISES」のポール・ヴァージョンはダンサブルなアレンジとなっていて、かなり印象が違います。「YVONNE'S THE ONE」のポール・ヴァージョンはエリック・ヴァージョンとあまり変わりませんが、エリック・ヴァージョンでもポールがリズム・ギターを弾いているので、もしかしたらポールのアルバム「PRESS TO PLAY」の時の音源を元にしているのかもしれません。同1995年には、スモーキング・モジョ・フィルターズによるビートルズのカヴァーでジョンが主導で書いた「レノン=マッカートニー」作の「COME TOGETHER」に参加しているのですが、コレはですね、ポール・ウェラーとノエル・ギャラガーが二人で演奏していたら、隣のスタジオにいたポールが顔を出して、半ば無理矢理に参加したのです。

さて、1993年にはエディ・マーフィーのアルバム「LOVE'S ALRIGHT」に収録された「YEAH」で、ポールがひとこと「YEAH」と云っています。1996年リリースのエルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションのアルバム「ALL THIS USELESS BEAUTY」に収録された「SHALLOW GRAVE」では、久しぶりにポールとコステロが共作しています。1995年から1996年と云えば、本隊であるビートルズの「ANTHOLOGY」が絶賛進行中で、ポールは自分のソロ・アルバムをリリース出来なかった時期です。故にエリック・スチュワートのレコーディングや、エルヴィス・コステロとの共作をする時間はあったとも考えられますが、それぞれが1980年代に既にあった曲の蔵出しだったかもしれません。同1996年には、カール・パーキンスの遺作となるアルバム「GO CAT GO!」に収録された「MY OLD FRIENDS」をカール・パーキンスとポールで共作して、ギター、ベース、ピアノ、ドラムスを演奏して、ポールとサー・ジョージ・マーティンで共同プロデュースしています。コレは、ポールの1982年リリースのアルバム「TUG OF WAR」の時の音源を元にしていると思います。このアルバムには、ジョージ・ハリスンとリンゴ・スターも参加しています。同1996年には、アレン・ギンズバーグの「THE BALLAD OF THE SKELETONS」に、ギター、ドラムス、オルガン、マラカスで参加しています。この曲は、2020年にリイシューされたアルバム「FLAMING PIE」の4万円とか14万円とか法外な値段の箱に入っていますが、2枚で千円ブートレグで容易に聴けます。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする