1973年11月にアップルからリリースされたリンゴ・スターのアルバム「RINGO」には、元ビートルズのジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンが楽曲提供してレコーディングにも参加しています。ジョンが書いたアルバム1曲目の「I'M THE GREATEST」では、ジョン、ジョージ、リンゴが共演しています。元ビートルズの3人の中では、ジョージの貢献度が最も高いのですけれど、それは次回に回して、今回は連載500回なので、ポールが関わった2曲について書きます。お忘れかもしれませんが、この連載のタイトルは「ポールの道」です。まずは、アルバムのA面5曲目(A面の最後)に収録された「YOU'RE SIXTEEN(YOU'RE BEAUTIFUL AND YOU'RE MINE)」で、この楽曲は1960年にジョニー・バーネットが発表して全米8位と大ヒットさせた曲のカヴァーです。結果から云うと、アルバム「RINGO」から第2弾シングル・カットされて、全英4位・2曲連続で全米首位!(第1弾はジョージとリンゴの共作「PHOTOGRAPH(想い出のフォトグラフ)」で、全英8位・全米首位!)となりました。
「YOU'RE SIXTEEN(YOU'RE BEAUTIFUL AND YOU'RE MINE)」のレコーディング・メンバーは、リンゴ・スター(ヴォーカル、ドラムス)、ニッキー・ホプキンス(ピアノ)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、ジミー・カルヴァート(ギター)、ポール・マッカートニー(カズー風のマウス・サックス)、クラウス・フォアマン(ベース)、ハリー・ニルソン(バッキング・ヴォーカル)、ヴィニ・ポンシア(ハーモニー・ヴォーカル)となっていて、ポールは本当のカズーを担当したとも云われています。ポールは全身楽器みたいな人なので、どっちでもやれてしまうので記録が曖昧なのでしょう。それにしても、リンゴのシングルが2曲連続で全米首位!となってしまったのは、見逃せません。どちらも、ジョージやポールの手助けがあったとは云え、1970年代前半は、世の中が狂っていたのでしょうか。この頃までに、ポールとジョージは全米首位!となった大ヒット・シングルがありましたが、ジョンは1974年の「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT(真夜中を突っ走れ)」が初めての全米首位!曲だったわけですよ。ジョンよりもリンゴが売れているなんて、今となっては「摩訶不思議な時代」でした。
そして、ポールは「YOU'RE SIXTEEN(YOU'RE BEAUTIFUL AND YOU'RE MINE)」に参加しただけではなく、ポールとリンダの共作と云う事になっているB面3曲目の「SIX O'CLOCK」を提供して、レコーディングにも参加しています。こちらのレコーディング・メンバーは、リンゴ・スター(ヴォーカル、ドラムス)、ポール・マッカートニー(ピアノ、シンセサイザー、バッキング・ヴォーカル、フルート、ストリングスアレンジ)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、ヴィニ・ポンシア(アコースティックギター、パーカッション)、クラウス・フォアマン(ベース)です。ポールの曲なのに、ベースをクラウス・フォアマンが弾いているのが珍しいです。手抜きなしで文句なしの名曲ですが、実はリンゴが先にジョンとジョージからの楽曲提供とレコーディング参加を決めてから、ポールに「またハブにされたくないだろう?」と誘って実現したので、ポールも燃えたのでしょう。この曲にはロング・ヴァージョンもあって、何故かアルバム「GOODNIGHT VIENNA」のCDの方にボーナス・トラックとして収録されているのですけれど、ポールが暴走していて、誰のレコードなのか分からなくなっています。
(小島イコ)