現在ではアップル・レコードのコンピレーション盤のタイトルにもなっているバッドフィンガーの「COME AND GET IT」ですが、そこまでの道のりは平坦ではなく、その後の道のりもまた平坦ではありません。アップルと契約した時には、バンド名は「バッドフィンガー」ではなく「アイヴィーズ」で、メンバーは、ピート・ハム(ギター、ヴォーカル)、マイク・ギビンズ(ドラムス、ヴォーカル)、ロン・グリフィス(ベース、ヴォーカル)、トム・エヴァンス(ギター、ヴォーカル)の4人でした。トニー・ヴィスコンティのプロデュースでアイヴィーズ名義でのデビュー・シングル「MAYBE TOMORROW」を1968年11月15日にアップル第5弾シングルとしてリリースするものの、何故かオランダのチャートで15位とヒットしたものの、全米67位・全英ではチャート入りしていません。それで次のシングルはドイツとフランスと日本のみでのリリースとなり、1969年7月4日リリースのファースト・アルバム「MAYBE TOMORROW」も、ドイツとイタリアと日本でしかリリースされなかったのです。何故、日本ではリリースされたのかは謎です。
シングルやアルバムがリリースさえされなかったのですから、売れる売れない以前の問題です。そこで、ポール・マッカートニー大明神様の登場です。元々、アイヴィーズの初代マネジャーだったビル・コリンズは、ポールの父親ジェームズのバンド仲間だった縁もあって、ポールはマッカートニー単独名義で「COME AND GET IT」を書いて、ビートルズのアルバム「ABBEY ROAD」のレコーディング中だった1969年7月24日に、全ての楽器とヴォーカルをひとりで1時間足らずで多重録音したデモを制作しました。そのデモ音源の「COME AND GET IT」は、1996年リリースの「ANTHOLOGY 3」や、2019年リリースのアルバム「ABBEY ROAD」50周年記念盤に収録されているので、容易に聴く事が出来ます。但し、前者にはリミックス音源を、後者にはオリジナル・デモ音源を収録しています。それで、バンド名をポールとジョンとニール・アスピノールで協議して、ニールの案でビートルズの楽曲「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」の原題だった「BADFINGER BOOGIE」から「BADFINGER」と名付けられたのです。
そして、再デビュー・シングルとして「COME AND GET IT」を、ポールは自分が制作したデモ音源の通りにコピーして演奏する様に命令して、バッドフィンガーが自分たち流のアレンジにしたいと云ったのに却下したのです。ポール曰く「間違いなくヒットするから、この通りに演奏しろ」なのです。バンド名も、再デビュー曲も、そのアレンジまでも、他人に勝手に決められてしまった哀れなバッドフィンガーでしたが、1969年12月5日(英国)・1970年1月12日(米国)にリリースされたポールがプロデュースした再デビュー・シングル「COME AND GET IT」(B面はバッドフィンガーのオリジナル「ROCK OF ALL AGES」)は、ポールの目論見通りに全英4位・全米7位と大ヒットしました。「COME AND GET IT」の邦題は「マジック・クリスチャンのテーマ」で、この曲はピーター・セラーズとリンゴ・スターが主演した映画「マジック・クリスチャン」のテーマ曲です。
映画には主題歌の「COME AND GET IT」と、シングルB面だった「ROCK OF ALL AGES」(ポールがピアノで参加)と「CARRY ON TILL TOMORROW」(事実上ポールがプロデュース)の、合計3曲が使われています。シングル・ヒットの勢いで、バッドフィンガーとしての1作目のアルバム「MAGIC CHRISTIAN MUSIC」が、1970年1月9日(英国)・同年2月16日(米国)にリリースされています。このアルバムの制作中にベースのロン・グリフィスは脱退して、トム・エヴァンスがベースに転向していて、まだジョーイ・モーランド(ギター、ヴォーカル)は加入していません。全14曲の内容はアイヴィーズのアルバムから半数の7曲を再収録していて、急場で作った感じです。アルバムは全米55位で、全英ではチャート入りしていません。「ビートルズの弟バンド」と云われたバッドフィンガーが本領発揮するのは、1970年11月9日(英国)・同年11月27日(米国)にリリースされたバッドフィンガー名義では2作目のアルバム「NO DICE」からです。
(小島イコ)
さて、本日(9月4日)は、長濱ねるちゃんのお誕生日です。近年はずっと連続ドラマに出演されているし、TIFのチェアマンなどもやられているので、ファンとしては嬉しい限りです。欅坂46を卒業された頃には引退するのかなぁ、と思っていたし、1年間休んで復帰された時にもタレント業でゆくのかなぁ、と思っていたので、まさか女優として朝ドラや月9に出る様になるとは思っておりませんでした。女優としては、最初の内はハラハラしながら観ていたけれど、場数を踏んで素人目でも演技が上手くなってるのが分かります。今後も、いい意味でファンの期待を裏切るご活躍を期待しております。お誕生日おめでとうございます。
(小島イコ/姫川未亜)