1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」では、スタジオに徒歩で来れる近くに家があったポールは他の3人よりも早くスタジオに入って、ピアノの弾き語りをやっていました。それで、1969年9月にリリースされたビートルズのアルバム「ABBEY ROAD」のジャケットで、ポールが裸足で歩いているのは、家が近かったのと暑かったのでポールがサンダルを履いて来たからで、撮影中はサンダルを脱いで歩いたからです。そんなに近くに住んでいたのに、ポールはアルバム「ABBEY ROAD」のセッションに遅刻した事があって、怒り狂ったジョンがポールの家に乗り込んで、壁に飾ってあったジョンが自分で描いてポールにプレゼントした絵をズタズタにしたりしたそうです。その時にポールはリンダとのんびりとしていたので、ジョンは「何でレコーディングに来ないでいちゃついているんだ?」と云う心境だったのでしょう。でもね、自分はヨーコさんをスタジオに入れていたのに、もう訳が分かりません。
ジョンもジョンで、アルバム「GET BACK」やアルバム「ABBEY ROAD」のジャケットでは髪と髭を伸ばし捲っていますが、ある日、ジョンがビートルズの今後について重大な発表をすると他の3人やスタッフを呼びつけて、ひとこと「俺はキリストだ!」と云って去っていったとか、まあ、狂っていたんでしょうね。それで、ポールは「THE GET BACK SESSIONS」でピアノの弾き語りをしていて、中にはソロになって発表する「ANOTHER DAY」や「THE BACK SEAT OF MY CAR」なども既に披露しています。そんな中で「PENINA」と云う曲も歌っていて、ビートルズでもリハーサルしていて、かなりテキトーに歌っているのですけれど、あんまり有名ではありません。この「PENINA」と云う曲は、1968年にポールがリンダとポルトガルに旅行して、現地の「ペニーナ・ホテル」滞在していて、そこで演奏していたヨッタ・ヘレと云うバンドの為に書いた曲です。
ヨッタ・ヘレは1969年4月に「PENINA」をリリースするのですが、ポールが書いた曲なのにチャート入りしていません。更に、同じく1969年4月にポルトガルの歌手・カルロス・メンデスがレコーディングしてリリースしていて、チャート入りしていません。ポルトガルの人が歌っていますが、どちらも英語です。楽曲的にはクズ曲「THAT MEANS A LOT」や、ソコソコの出来の「WOMAN」路線で、ポールとしては例によって「ビートルズで演奏するレベルには達していない」曲のひとつです。名義も「レノン=マッカートニー」ではなく「マッカートニー」単独で、ポールとしてもポルトガルのホテルで箱バンの為に洒落で書いたのでしょう。厄介なのは、1969年リリースで、しかもアップル・レコードからのリリースではないので、どちらのヴァージョンも公式のコンピレーション盤CDではなかなか聴けないと云う事でしょう。まあ、大した曲ではないし、提供曲のブートレグには大抵は収録されているので、公式盤に拘らないのならば容易に聴けます。
(小島イコ)