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2024年08月30日

「ポールの道」#478「FAB4 GAVE AWAY」#22 「SOUR MILK SEA」

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1968年8月30日(英国)・同年8月26日(米国)に、ビートルズが立ち上げたアップル・レコードは、いきなりシングルを4作も同時にリリースしました。それは、ビートルズの「HEY JUDE / REVOLUTION」と、メリー・ホプキンの「THOSE WERE THE DAY(悲しき天使) / TURN TURN TURN」と、ブラック・ダイク・ミルス・バンドの「THINGUMYBOB / YELLOW SUBMARINE」と、ジャッキー・ロマックスの「SOUR MILK SEA / THE EAGLE LAUGHS AT YOU」です。前回に取り上げた通りに、ビートルズの「HEY JUDE」は全英・全米首位!となり、特に米国では9週間連続首位!となり、ビートルズのシングルで最も売れたと云われています。そこへ、ポールがプロデュースしたメリー・ホプキンの「THOSE WERE THE DAY」が全英では割って入り、「HEY JUDE」を首位!から蹴落として6週間連続首位!となる特大ヒットとなったのです。いくらポールがプロデュースしたからと云って、18歳のポッと出の新人歌手だったメリー・ホプキンの大成功は、アップルとしても嬉しい誤算だったでしょう。

ブラック・ダイク・ミルス・バンドに関しては次回で取り上げますが、ひとことで云えばインストゥルメンタル曲なので、そんなにヒットは期待されていなかったでしょう。そこで、ジャッキー・ロマックスです。ジ・アンダーテイカーズで1963年にデビューしていたジャッキー・ロマックスは、生前のブライアン・エプスタインがNEMSでマネジメントしていて、旧知の仲だったビートルズがブライアン・エプスタインの死後にも面倒をみるカタチでアップル・レコード所属となりました。再出発のシングルA面「SOUR MILK SEA」は、ジョージ・ハリスンがアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」用に書いた曲のひとつで、現在ではアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」50周年記念盤の「イーシャー・デモ」でジョージが歌ったヴァージョンを聴く事が出来ます。個人的には、1968年頃のジョージ節が全開の名曲のひとつだと思うし、何だかお化け屋敷のBGMみたいな「LONG, LONG, LONG」を収録するくらいなら、「SOUR MILK SEA」をビートルズで演奏して欲しかったです。と云うか、ここに来て初めてジョージが提供曲を手掛ける事となったわけです。

それで、ジャッキー・ロマックスの新たなる門出にジョージが曲をプレゼントして、プロデュースして、アコースティックギターも弾いていて、他にリードギターがエリック・クラプトン、ベースがポール・マッカートニー、ドラムスがリンゴ・スター、ピアノがニッキー・ホプキンスと云う、トンデモナイ布陣でレコーディングしています。つづいて1969年3月21日に英国でリリースされたアルバム「IS THIS WHAT YOU WANT?」の邦題は「驚異のスーパー・セッション / ジャッキー・ロマックス・ファースト」となっていて、そちらもジョージがプロデュースしていて、ジョージ、リンゴ、ポール、クラプトン、クラウス・フォアマンなどによるロンドン・セッションと、ハル・ブレイン、ジョー・オズボーン、ラリー・ネクテルなどのレッキング・クルーによるLAセッションで、兎に角、メンバーが豪華過ぎます。ところが、コレが全く売れず、期待度や製作費だったならメリー・ホプキンよりもこっちだったはずなのに、困ったちゃんなのです。

「SOUR MILK SEA」のエンディングでは「GET BACK」と連呼されていて、こっちの方が先なので、ポールは頂いたんでしょうね。ドキュメンタリー作品「GET BACK」では、ポールがヘフナーのベースをストローク奏法して、ジョージとリンゴの目の前(ジョンは遅刻して不在)で「GET BACK」を作曲する場面がありますが、ジョージは特に文句は云っていません。そんな事よりも自分のギターに一々イチャモンをつけるポールに、ジョージは苛ついています。ジョージもジョージで、ジェームス・テーラーがアップルからリリースしたアルバム「JAMES TAYLOR(邦題「ニュー・フォークの旗手 / ジェームス・テーラー登場」)」に収録された「SOMETHING IN THE WAY SHE MOVES」からそのまんま冒頭の歌詞に頂いて、あの名曲「SOMETHING」を書いているので、身内だからいいやって感じだったのでしょうか。あと「SOUR MILK SEA」は、クラプトンのリードギターがうるさくて、歌が入ってきません。売れなかったのは、逆にバックが凄過ぎたからかもしれません。ジャッキー・ロマックス本人も、余りにも豪華なバックに「自分のレコードじゃないみたいだ」と発言しています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする