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2024年08月22日

「ポールの道」#470「FAB4 GAVE AWAY」#14 「IT'S FOR YOU」

Completely Cilla (1963-1973)


1963年9月27日に、英国・パーロフォンからポールが書いたレノン=マッカートニー作品である「LOVE OF THE LOVED」でデビューしたシラ・ブラックは、本名は「プリシラ・マリア・ヴェロニカ・ホワイト」と云います。ところが「マージー・ビート」紙でビル・ハリーが間違えて「シラ・ブラック」と紹介したので、それが芸名になってしまったのです。其の辺は、1960年代らしいいい加減さです。ビートルズの「公式の妹」として、マネジャーはブライアン・エプスタイン、プロデュースはサー・ジョージ・マーティンで、レノン=マッカートニー作品だった「LOVE OF THE LOVED」は、全英35位と微妙な成績だったので、やはりビートルズが演奏しないと売れないと云われたでしょう。しかしながら、翌1964年にリリースされたシラ・ブラックの2作目のシングル「ANYONE WHO HAD A HEART」も、3作目のシングル「YOU'RE MY WORLD」も、全英首位!の大ヒットとなりました。

勿論、マネジャーはブライアン・エプスタインで、プロデュースはサー・ジョージ・マーティンなので、これではポールが書いた「LOVE OF THE LOVED」がヘッポコ曲だったから売れなかったと断じてもよろしいでしょう。それで火がついたのか、1964年7月31日(英国・パーロフォン)、同年8月17日(米国・キャピトル)にリリースされたシラ・ブラックの4作目のシングル「IT'S FOR YOU」は、ポールの書き下ろしの提供曲(ポールによるデモ音源も残っている)のレノン=マッカートニー作品で、全英7位まで上がるヒット曲となっています。B面の「HE WON'T ASK ME」は、ビートルズ関連曲ではありません。ポールとしても、デビュー・シングルだった「LOVE OF THE LOVED」は1962年1月1日の「デッカ・オーディション」でビートルズでも演奏していた蔵出し曲だったので、其の後にシラ・ブラックが歌う曲が連続首位!と売れてしまったので焦ったのでしょう。

ワルツ調の楽曲「IT'S FOR YOU」は、一寸バート・バカラックに寄せすぎだとは思いますが、シラ・ブラックは2作目のシングル「ANYONE WHO HAD A HEART」や1966年には「ALFIE」と云ったバカラック作品を大ヒットさせているので、狙って書いたと思われます。そして「IT'S FOR YOU」がスゴイのは、そうしてポールが真面目にシラ・ブラックの為にヒットを念頭に置いて書いているところです。当然ながら、当時のビートルズでの作風とは異なっていて、こうした楽曲も書けるのがポールであって、1964年のビートルズでは圧倒的にジョンが優っていたのに、ポールは提供曲でじっくりと腕を磨いていて、それは後のビートルズでのポール大爆発!に繋がっています。尚、この曲のプロモ盤では、曲紹介をジョンが担当していて「綺麗な女の子が、綺麗な歌を歌うよ」とか云っています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする