全英首位!全米首位!の特大ヒットとなったレノン=マッカートニー作品で実際にはポールが書いた「A WORLD WITHOUT LOVE(愛なき世界)」につづいて2作目のシングルとして、やはりレノン=マッカートニー作品でポールが書いた「NOBODY I KNOW(二人だけのパラダイス)」は、ビートルズとは関係がないB面の「YOU DON'T HAVE TO TELL ME(恋の嘘っぱち)」とのカップリングで、1964年5月29日に英国(EMI・コロムビア)、同年6月15日に米国(キャピトル)でリリースされました。このシングルは、全英10位・全米12位と「A WORLD WITHOUT LOVE」に比べれば低かったものの、充分にヒットしています。ポールは「A WORLD WITHOUT LOVE」が売れたので、思いっ切り二番煎じの曲を提供しています。ピーター&ゴードンは英国よりも米国で人気があったらしいのですけれど、ポールが書いたキャッチー過ぎる曲がウケたのでしょう。
とは云え、相手は義理の兄になるはずだったピーター・アッシャーなので、そこはポールも手抜きなしの佳曲を提供しています。ポールが書いたここまでの提供曲は、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスの「I'LL BE ON MY WAY」と、トミー・クイックリーの「TIP OF MY TONGUE」と、シラ・ブラックの「LOVE OF THE LOVED」と、ローリング・ストーンズの「I WANNA BE YOUR MAN」と、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスの「I'LL KEEP YOU SATISFIED」と、ピーター&ゴードンの「A WORLD WITHOUT LOVE」と、ザ・ストレンジャーズ・ウィズ・マイク・シャノンの「ONE AND ONE IS TWO」ときて、ピーター&ゴードンの「NOBODY I KNOW」なのですが、ビートルズがメジャー・デビューする前から演奏していた「I'LL BE ON MY WAY」や「LOVE OF THE LOVED」は、ビートルズでやるには些かお粗末だと云う事で提供曲に回されています。そう云う事を、ポールは自分で云ってしまうんですよ。
そして「TIP OF MY TONGUE」と「ONE AND ONE IS TWO」は、ズバリ云ってジョンが云った通りに「ポールの駄作」です。「I WANNA BE YOUR MAN」に関しては、セルフ・カヴァーもしているので、まあまあな出来栄えだと思ったのでしょう。それに比べて「I'LL KEEP YOU SATISFIED」や「A WORLD WITHOUT LOVE」や「NOBODY I KNOW」は出来が良くて、特に世紀の駄作「ONE AND ONE IS TWO」の前後にピーター&ゴードンへ提供した「A WORLD WITHOUT LOVE」と「NOBODY I KNOW」との落差は、ジェットコースター並みです。エヴァリー・ブラザーズを意識したデュオであるピーター&ゴードンへは、もろにエヴァリー・ブラザーズ風の楽曲を書いているのですが、♪NOBODY I KNOW〜♪と歌うとギターが♪ド、シ、ラ、ソ、ファ、ミ、レ、ド♪って合いの手を入れるんですから、ふざけています。ポールはこの技を後に本隊であるビートルズでも「HELLO GOODBYE」でやっていて、そっちではギターが♪ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド♪と合いの手を入れています。
(小島イコ)