前回のピーター&ゴードンへポールが書いた「A WORLD WITHOUT LOVE(愛なき世界)」は名曲だと褒めましたが、つづく1964年5月8日に英国フィリップスからリリースされたザ・ストレンジャーズ・ウィズ・マイク・シャノンにポールが書いたレノン=マッカートニー作品である「ONE AND ONE IS TWO」は、ひとことで云って酷い出来栄えです。タイトルからして「1と1で2」って、小学生が書いた様な詞で、曲も滅茶苦茶です。ザ・ストレンジャーズ・ウィズ・マイク・シャノンはヒット曲が1曲もないB級バンドですが、だからと云って天下御免の「レノン=マッカートニー」作品としてこんな駄曲を提供してしまってよいのでしょうか。いやいや、ダメでしょう。案の定、チャート入りしていません。1964年にレノン=マッカートニー作品を提供されて売れないって、そりゃあ大変な事ですよ。
この曲は「ETERNAL GROOVES」からのハーフオフィシャル盤「LENNON & McCARTNEY SONGBOOK」に収録されているので、悪い事は云わないのでソレを買って聴いて下さい。ポールによるデモ音源も入っているし、「BAD TO ME」や「I'M IN LOVE」や「A WORLD WITHOUT LOVE」などの名曲も入っているので、こうしたポールの駄作が混じっていても「ま、仕方ないか」で済みます。ところが、ライナーノーツには「「ONE AND ONE IS TWO」で永遠に記憶されるバンドとなった」とか「ビートルズ・ファンに密かに人気があるこのポールの曲」とか「隠れた名曲「ONE AND ONE IS TWO」」などと持ち上げているのです。が、しかし、ちゃんと「稚拙な歌詞のせいか、ジョンは「ポールの駄作だ」と切り捨てています」と落としています。ヒット曲がないバンドなのでレアですが、それは売れなかっただけですし、B面の「TIME AND THE RIVER」は、ビートルズとは関係がない曲です。
あたくしは「ONE AND ONE IS TWO」がビートルズ・ファンに人気だなんて、このライナーノーツを読むまで知らなかったし、ジョンが云った通りに「ポールの駄作」だと思います。演奏もガチャガチャしていて下手っぴだし、ヴォーカルもジャイアン唱法で聴くに堪えず、リンゴのマネでもしている心算なのかもしれませんが、リンゴが素晴らしい歌手に思えるほどに下手です。1964年5月と云えば、ビートルズは全米制覇を成し遂げて、1964年4月4日の全米ビルボード・チャートで首位!から5位までを独占していたのです。同年7月10日には英国では3作目のアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」をリリースして、全13曲全てがレノン=マッカートニー作のオリジナルだったのです。ところが、内訳はジョンが10曲でポールが3曲だったわけで、そりゃあポールが「ONE AND ONE IS TWO」みたいな曲ばっか書いていたんじゃ、そうなりますわなあ。
(小島イコ)