ビートルズが他者に楽曲を提供していたのは、1963年から1964年位の初期に集中しています。最初に「レノン=マッカートニー」が楽曲を提供したのは、1963年4月26日(英国・パーロフォン)・同年6月10日(米国・リバティー)にリリースされたビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスのデビュー・シングル「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET / I'LL BE ON MY WAY」です。A面の「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」は、ジョンが書いてビートルズが1963年3月22日に英国・パーロフォンからリリースしたデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」に収録してジョージが歌っている曲と同じですので、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスがカヴァーしたカタチになっています。しかしながら、ビートルズは英国ではシングル・カットしていないので、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスのヴァージョンが全英2位を獲得しています。
遅れてリリースされた米国では、1963年にはまだビートルズ人気が沸騰する前であった為にチャート入りしていません。しかし、1964年3月23日になってビートルズが全米制覇した後にビートルズのオリジナル・ヴァージョンがヴィー・ジェイからシングル・カットされて、全米2位まで上がっています。つまり米国では、本家であるビートルズ・ヴァージョンがシングル・カットされた為にビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスのカヴァー・ヴァージョンは無視されたわけですなあ。が、しかし、此のビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスのシングルは、B面も「レノン=マッカートニー」作の「I'LL BE ON MY WAY」なのです。A面の「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」はカヴァーしたカタチになりましたが、B面の「I'LL BE ON MY WAY」は提供曲でした。それでもB面になったのは、曲の出来が「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」よりも悪いからでしょう。単調な感じで、ポールが10代の頃に書いたと思われます。
ポールの手癖だけで書いたみたいな「I'LL BE ON MY WAY」は、現在ではビートルズ・ヴァージョンが「LIVE AT THE BBC」で聴けるわけですが、1963年当時にはビートルズはラジオで演奏しただけで公式レコーディングはしていません。ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスには、この後も「レノン=マッカートニー」作品が提供されてゆきますけれど、レコード会社も同じだし、プロデュースはサー・ジョージ・マーティンで、マネジメントも同じブライアン・エプスタインの会社・NEMSだったので、身内でした。ビートルズ・ヴァージョンは1963年4月4日に収録されて同年6月24日にラジオ番組「SIDE BY SIDE」で放送されましたが、公式盤となるのは1994年11月30日リリースの「LIVE AT THE BBC」と、31年後だったのです。「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」に関してはジョンがジョージ用に書いたので、同時期にビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスが大ヒットさせて提供曲の範疇に入る気もしますが、「I'LL BE ON MY WAY」は何となくB面用に回した感じです。それでも出来栄えはスタジオ・ライヴのビートルズ・ヴァージョンの方が良いので、こりゃまた困ったちゃんなのです。
さて、全然関係がないようである話なんですけれど、先月にNHKの「うたコン」にアキラ(小林旭さん)が出演して「自動車ショー歌」も歌ったとニュースになっていました。令和ではNHKでもアレ(自動車メイカーや車種名を歌い込んでいる)を歌えるんだ、と話題になったのですけれど、えっとですね、CSの「歌謡ポップスチャンネル」で1993年5月17日に本放送されたNHKの「ふたりのビッグショー」小林旭さん&坂本冬美さん編が再放送されていて、その中でふたりで「自動車ショー歌」も堂々と熱唱していたんですよ。流石に歌詞テロップは「自動車ショー歌」だけなしでしたけど、アキラも冬美さんもノリノリでNHKホールで歌っておりました。実は、もう31年前にはNHKで解禁されていたわけですなあ。と云うか、それよりもバックダンサーのおねえさんたちがシルバーのハイレグ・レオタード姿で踊っていて、そっちの方が「本当にNHKの番組なのか?」と思わされました。
(小島イコ)