1969年1月に行われた「THE GET BACK SESSIONS」は頓挫してしまったビートルズですけれど、1969年4月11日に英国で、同年5月5日に米国で、それぞれアップルからリリースされたシングル「GET BACK / DON'T LET ME DOWN」は、唯一の成果で「GET BACK」は全英首位!全米首位!となりました。1969年3月には、ポールはリンダと、ジョンはヨーコさんと結婚して、ジョンは結婚の顛末を曲にしてビートルズの楽曲としてリリースしようとしました。ソレで、1969年4月14日にレコーディングしたのが「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」です。しかしながら、ソノ日にはジョージとリンゴが不在だったので、ジョンとポールだけでレコーディングしてしまったのです。ソレで、まずはジョンのギターとポールのドラムスからレコーディングして多重録音していて、ジョンがヴォーカル、ギター、パーカッションを、ポールがドラムス、ベースギター、ピアノ、マラカス、バッキング・ヴォーカルを担当して完成させています。
3か月前の険悪な「THE GET BACK SESSIONS」が嘘だった様に、ジョンとポールによるレコーディングはサクサクと進み、ポールは「これなら大丈夫」と考えてアルバム「ABBEY ROAD」へと繋がっています。ポールがサー・ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックに頭を下げてまで戻ってきてもらったのは、ビートルズを「THE GET BACK SESSIONS」で終わらせたくなかったからでしょう。ジョンは自分とヨーコさんを歌った「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」なのですからノリノリだし、ポールはジョンと一緒だったならば幾らでもレコーディングしたかったのです。映画「LET IT BE」ではポールがジョンに「君と一緒ならば、幾らでも演奏するよ」と真顔で云って、ジョンにドン引きされる場面が記録されています。二人だけのレコーディングですが、ジョンはポールに「リンゴ」と呼び掛けて、ポールもジョンに「ジョージ」と呼び掛けている和やかなセッションの様子が、2019年リリースのアルバム「ABBEY ROAD」の50周年記念盤で聴けます。
B面となったジョージ作の「OLD BROWN SHOE」は、既に「THE GET BACK SESSIONS」で何度もリハーサルされていた楽曲です。1969年2月25日のお誕生日に、ジョージはひとりだけで「OLD BROWN SHOE」と「SOMETHING」と「ALL THINGS MUST PASS」の3曲のデモ音源をレコーディングしていて、3曲共に何度もリハーサルしたのにアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」からは弾かれていました。1969年4月16日に正式にレコーディングされましたが、リンゴは映画「マジック・クリスチャン(The Magic Christian)」の撮影中だったので、ジョージ(リード・ヴォーカル、リード・ギター、オルガン)、ジョン(ピアノ、バッキング・ヴォーカル)、ポール(ドラムス、ベース、バッキング・ヴォーカル)の3人でレコーディングされています。ジョンは此のシングル「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO / OLD BROWN SHOE」を直ぐにリリースしたがったのですが、シングル「GET BACK / DON'T LET ME DOWN」のリリースが決まっていたので、ソノ後となりました。
それで、1969年5月30日に英国では20作目、同年6月4日に米国では30作目のシングル「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO / OLD BROWN SHOE」が、アップルからリリースされました。まだ前作「GET BACK」が全英首位!だった時にリリースされていて、A面の「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」は全英首位!となり、全米では8位まで上がっています。英国では初のステレオだった此のシングルは、両面共にアルバム未収録曲で、後に「青盤」に収録されています。しかしながら、米国では1970年2月26日に編集盤「HEY JUDE」をリリースして収録してしまいました。編集盤「HEY JUDE」は、A面が、1「CAN'T BUY ME LOVE」、2「I SHOULD HAVE KNOWN BETTER」、3「PAPERBACK WRITER」、4「RAIN」、5「LADY MADONNA」、6「REVOLUTION 」で、B面が、1「HEY JUDE」、2「OLD BROWN SHOE」、3「DON'T LET ME DOWN」、4「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」の、全10曲入りです。最初の2曲が場違いですけれど、他の8曲はシングルのみでアルバム未収録曲なので評判も良く、英国では1979年5月11日にシレっと出しています。2013年に「THE U.S. BOX( The U.S. Albums)」で初CD化されて、バラ売りもされていますが、音源は2009年リマスターです。
(小島イコ)