1967年6月1日(実際には5月26日)に英国パーロフォンから、同年6月2日に米国キャピトルからリリースされた、英国では8作目でキャピトルからは11作目(米国では13作目)のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、大きな衝撃と共に世に問われました。アルバムの内容は、A面が、1「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、2「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、3「LUCY IN THE SKY WIYH DIAMONDS」、4「GETTING BETTER」、5「FIXING A HOLE」、6「SHE'S LEAVING HOME」、7「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!」で、B面が、1「WITHIN YOU WITHOUT YOU」、2「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、3「LOVELY RITA」、4「GOOD MORNING GOOD MORNING」、5「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND(Reprise)」、6「A DAY IN THE LIFE」の、全13曲入りです。此のアルバムから米国キャピトル盤も英国オリジナルと同じになったのですが、最後に収録されている意味不明なおしゃべり(通称「SGT. PEPPER INNER GROOVE」)は、米国キャピトル盤には未収録です。
ポールの発案でピーター・ブレイクが手掛けたジャケットからして只事ではないアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、レノン=マッカートニー作が11曲(「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND(Reprise)」は除く)とジョージ作が1曲(「WITHIN YOU WITHOUT YOU」)ですが、ポールが主導で書いた曲が5曲(「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、「GETTING BETTER」、「FIXING A HOLE」、「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、「LOVELY RITA」)と目立っています。ジョン主導は3曲(「LUCY IN THE SKY WIYH DIAMONDS」、「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!」、「GOOD MORNING GOOD MORNING」)ですが、リンゴに歌わせた「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」と「SHE'S LEAVING HOME」、そしてアルバムの最後を飾る大傑作「A DAY IN THE LIFE」は「レノン=マッカートニー」による共作です。架空のバンドによる架空のコンサートと云うコンセプトで制作されているので、ビートルズではなく「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」による演奏なわけで、過大評価されている部分もあるものの、此のアルバムの影響は強く、他のバンドも挙って同時代に後追いでマネしてこうしたアルバムをリリースしています。
当のビートルズはコンサート活動を止めたので、特にポールはやる気マンマンで、まだアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」をリリースする前に「MAGICAL MYSTERY TOUR」のアイデアが浮かんでレコーディングしています。ジョンは、1967年頃はポールがドンドン曲を書いてくるので追いつけなくなった、と語っていました。故にアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、ポールとサー・ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックによる作品だとも揶揄されています。確かにバンドとしてのビートルズのアルバムならば、アルバム「RUBBER SOUL」やアルバム「REVOLVER」やアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」やアルバム「ABBEY ROAD」の何れかの方が「レノン=マッカートニー」のバランスはとれているとも思えます。楽曲単位で云えばそれらのアルバムの収録曲の方が良いのですが、やはりジャケットの仰々しさと、曲間もなくつづく構成や、何と云っても最後の「A DAY IN THE LIFE」が傑作なので、祀り上げるには充分な要素が満載のアルバムではあります。でも、もしもビートルズを初めて聴こうとしている方々へは、此のアルバムは勧めませんなあ。
さてさて、稀代の傑作アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」をリリースしたビートルズは、1967年6月25日に放送される「OUR WORLD(われらの世界)」に英国代表として出演する事をBBCから要請されました。そこで、ジョン作の「ALL YOU NEED IS LOVE」を公開レコーディングする様子を全世界に衛星中継で流す事になり、ビートルズは予めレコーディングしていたベーシック・トラックに合わせて、ライヴでジョンが歌い、ポールがベースを弾いてバッキング・ヴォーカルを、ジョージがギターとバッキング・ヴォーカルを、リンゴがドラムスを叩き、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、マリアンヌ・フェイスフル、ジェーン・アッシャー、パティ・ハリスン、キース・ムーン、ゲイリー・リーズ、グレアム・ナッシュ、マイク・マクギア、ハンター・デイヴィス、と云った著名人がコーラスで参加して、オーケストラも生演奏したのです。ジョンは翌6月26日にはヴォーカルを録音し直して、1967年7月7日(リンゴのお誕生日)に15作目のシングル「ALL YOU NEED IS LOVE / BABY, YOU'RE A RICH MAN」としてパーロフォンから緊急リリースしたのです。
B面の「BABY, YOU'RE A RICH MAN」は、ジョンがヴァースを書いてポールがコーラスを書いた、本当の「レノン=マッカートニー」による共作で、ビートルズはアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」用に1967年5月11日にレコーディングしていた曲です。ビートルズはアニメ映画に乗り気ではなく、出来が悪い曲を「コレはアニメ用だな」などと公然と云っていたので、コノ「BABY, YOU'RE A RICH MAN」も出来損ないだと思っていたのでしょうなあ。英国ではA面の「ALL YOU NEED IS LOVE」が、当然の如く全英首位!となっています。米国キャピトルでは1967年7月17日にキャピトルでは17作目(米国では25作目)のシングルとしてリリースしていて、A面の「ALL YOU NEED IS LOVE」が全米首位!となり、B面の「BABY, YOU'RE A RICH MAN」も全米34位まで上がっています。此のシングル「ALL YOU NEED IS LOVE / BABY, YOU'RE A RICH MAN」も両面共にキャピトル編集盤「MAGICAL MYSTERY TOUR」に収録されて、現在ではオリジナル・アルバムの様な扱いになっているものの、英国ではアルバム未収録曲でした。英国パーロフォンがキャピトルと同内容の編集盤「MAGICAL MYSTERY TOUR」をリリースしたのは、ビートルズが解散後の1976年11月19日になってからです。
(小島イコ)