1965年12月6日にアルバム「RUBBER SOUL」を改悪してリリースしてしまったキャピトルは、1966年2月15日にキャピトルでは13作目(米国では21作目)のシングル「NOWHERE MAN / WHAT GOES ON」をリリースしました。コレはですね、英国盤では全14曲入りで全てオリジナルの新曲でシングル・カットもしていない6作目のオリジナル・アルバム「RUBBER SOUL」(1965年12月3日リリース)を、米国キャピトルでは4曲抜いて英国盤5作目のアルバム「HELP!」から2曲加えた全12曲入りで同じタイトルのキャピトルでは8作目(米国では10作目)の編集盤「RUBBER SOUL」としてリリースしてしまったので、抜いた4曲の内2曲をシングルにしてしまったのです。「NOWHERE MAN」はジョン作の内省的な内容で、イントロなしでジョンとポールとジョージによる3声コーラスから始まる名曲ですが、全米3位でした。「NOWHERE MAN」は1966年の来日公演でも披露していて、若大将は「ノーホエアマンでイントロなしでハモる辺りは流石だと思ったね」と語っていますけれど、さり気なく「ビートルズの演奏は歓声が大きくて聴こえなかった」と云うデマを打ち消しています。
確かに欧米でのビートルズのライヴは歓声で本人たちも聴こえない事もあったらしく、日本では規制されて観客が大人しくて、久しぶりに自分たちの演奏が聴こえて「コレは下手でヤバイ」となった様です。B面の「WHAT GOES ON」はリンゴが歌っていて、英国オリジナル盤「RUBBER SOUL」ではB面1曲目でした。前作アルバム「HELP!」でもB面1曲目はリンゴが歌った「ACT NATURALLY」だったのですけれど、あたしゃカックンになるリンゴ節を置くのはソコしかなかったのでしょう。「WHAT GOES ON」はジョン作で、デビュー以前の1959年頃に書いていて、1963年のシングル「FROM ME TO YOU」のセッションでレコーディング寸前までいってお蔵入りしていました。ソノ曲を元にして、ポールとリンゴがミドル部分を新たに加えたので、作者は「レノン=マッカートニー=スターキー」となっています。リンゴが作者として加えられた初めての曲ですが、大した貢献度ではない様で、こちらは全米81位止まりでした。アルバム「RUBBER SOUL」までは邦題が付く事もあって、「NOWHERE MAN」は「ひとりぼっちのあいつ」で、「WHAT GOES ON」は「消えた恋」です。ちなみに、前回の「WE CAN WORK IT OUT」は「恋を抱きしめよう」です。
キャピトルは1966年5月16日にビーチ・ボーイズの大傑作アルバム「PET SOUNDS」をリリースしたものの、内容の素晴らしさが理解出来ず、全米10位と云う成績も不満で失敗作と断定して、2か月も経たない1966年7月11日にビーチ・ボーイズのベスト盤(全米8位)をリリースして潰してしまったのです。ソレはビートルズでも同じで、アルバム「RUBBER SOUL」を改悪しただけでは気が済まず、1966年6月20日には世にも奇怪なキャピトルでは9作目(米国では11作目)の編集盤「YESTERDAY AND TODAY」をリリースしてしまうのです。A面が、1「DRIVE MY CAR」、2「I'M ONLY SLEEPING」、3「NOWHERE MAN」、4「DR. ROBERT」、5「YESTERDAY」、6「ACT NATURALLY」で、B面が、1「AND YOUR BIRD CAN SING」、2「IF I NEEDED SOMEONE」、3「WE CAN WORK IT OUT」、4「WHAT GOES ON」、5「DAY TRIPPER」の、全11曲入りです。アルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」とアルバム「REVOLVER」とシングルからなる、呆れてものも云えない選曲となっています。出鱈目な選曲なので、リンゴの歌が2曲も入っていてトホホですよ。
内訳は「YESTERDAY」と「ACT NATURALLY」の2曲がアルバム「HELP!」からで、「DRIVE MY CAR」と「NOWHERE MAN」と「WHAT GOES ON」と「IF I NEEDED SOMEONE」の4曲がアルバム「RUBBER SOUL」からで、「I'M ONLY SLEEPING」と「DR. ROBERT」と「AND YOUR BIRD CAN SING」の3曲がアルバム「REVOLVER」からで、「WE CAN WORK IT OUT」と「DAY TRIPPER」の2曲がシングルで英国オリジナル盤には未収録曲です。キャピトルでは全11曲中6曲がシングル化されているのも酷いものの、まだ本国英国では1966年8月5日リリースなので未発表だった英国オリジナル盤7作目のアルバム「REVOLVER」から3曲も先出ししていて、ソレが3曲共にジョンの曲で、1966年8月8日にリリースする米国キャピトル盤の「REVOLVER」はソノ3曲を抜いた全11曲入りでリリースしてしまうのです。ソレでアタマにきたビートルズが、ブッチャー・カヴァーで応戦したと云われています。そんな事を当時の米国のファンは知らず、コレも普通に全米首位!となっています。1987年にオリジナル通りでCD化された時に、米国のファンはアルバム「RUBBER SOUL」やアルバム「REVOLVER」を初めてオリジナル盤で聴いたわけで、驚いたでしょうなあ。
(小島イコ)