1965年12月3日に英国パーロフォンから、ビートルズの11作目のシングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」(初の両A面)と6作目のアルバム「RUBBER SOUL」が同時発売されました。英国盤アルバム「RUBBER SOUL」は、A面が、1「DRIVE MY CAR」、2「NORWEGIAN WOOD」、3「YOU WON'T SEE ME」、4「NOWHERE MAN」、5「THINK FOR YOURSELF」、6「THE WORD」、7「MICHELLE」で、B面が、1「WHAT GOES ON」、2「GIRL」、3「I'M LOOKING THROUGH YOU」、4「IN MY LIFE」、5「WAIT」、6「IF I NEEDED SOMEONE」、7「RUN FOR YOUR LIFE」の、全14曲入りです。レノン=マッカートニー作が11曲で、レノン=マッカートニー=スターキー作が1曲で、ジョージ作が2曲の全曲オリジナルで、同時発売のシングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」は未収録です。アルバム「RUBBER SOUL」は、明らかに何歩も進んだビートルズが聴けますし、レノン=マッカートニーのバランスとしても最高の時期でした。無論、シングルもアルバムも全英首位!を獲得しています。
英国では1965年12月6日に10作目のEP「THE BEATLES’ MILLION SELLERS」(「SHE LOVES YOU」、「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、「CAN'T BUY ME LOVE」、「I FEEL FINE」)がリリースされていて、100万枚以上も売れたシングルA面曲のカップリングでしたが、それ程には売れていません。さて、米国キャピトルでは12作目(米国では20作目)のシングルとして「WE CAN WORK IT OUT / DAY TRIPPER」が1965年12月6日にアルバム「RUBBER SOUL」と同時発売されています。米国では「WE CAN WORK IT OUT」がA面となっていて、全米首位!となり、B面の「DAY TRIPPER」は全米5位まで上がっています。キャピトルは此のシングル2曲を米国編集アルバム「RUBBER SOUL」には収録していませんが、翌1966年6月20日にリリースした米国編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」に両面共に収録してしまうのです。アルバム「YESTERDAY AND TODAY」は、英国でのアルバム「HELP!」と「RUBBER SOUL」と「REVOLVER」をごちゃ混ぜにした米国編集盤史上最悪なへんてこりん盤です。
さて、キャピトルでは8作目(米国では10作目)の米国編集盤「RUBBER SOUL」ですけれど、A面が、1「I'VE JUST SEEN A FACE」、2「NORWEGIAN WOOD」、3「YOU WON'T SEE ME」、4「THINK FOR YOURSELF」、5「THE WORD」、6「MICHELLE」で、B面が、1「IT'S ONLY LOVE」、2「GIRL」、3「I'M LOOKING THROUGH YOU」、4「IN MY LIFE」、5「WAIT」、6「RUN FOR YOUR LIFE」の、全12曲入りですが、英国オリジナルから4曲(「DRIVE MY CAR」、「NOWHERE MAN」、「WHAT GOES ON」、「IF I NEEDED SOMEONE」)を抜いて、英国盤アルバム「HELP!」から2曲(「I'VE JUST SEEN A FACE」、「IT'S ONLY LOVE」)を、しかもそれぞれA面とB面の最初に収録すると云う、無茶苦茶な事をしています。ソレでジャケットは英国盤とタイトル文字の色が違うだけで同じなのですから、悪質です。アルバム「RUBBER SOUL」はブライアン・ウィルソンが聴いて、ビーチ・ボーイズのアルバム「PET SOUNDS」の構想を得たと云うエピソードがありますが、ブライアン・ウィルソンは「フォーク・アルバムだ」と云っているので改悪された米国盤「RUBBER SOUL」を聴いたのではないか、と考えられます。
1965年の暮れともなるとビートルズを米国で最初にリリースしたヴィー・ジェイが倒産寸前だったし、そもそもヴィー・ジェイとの契約は2年だったと云われているので1965年1月で切れていたので、キャピトルは1965年3月22日に編集盤「THE EARLY BEATLES」をリリースしていて、1965年10月11日にはシングル「TWIST AND SHOUT / THERE’S A PLACE」と「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」と「PLEASE PLEASE ME / FROM ME TO YOU」と「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET / THANK YOU GIRL」と「ROLL OVER BEETHOVEN / MISERY」と「BOYS / KANSAS CITY〜HEY, HEY, HEY, HEY!」の6作を同時にリリースしています。これらのシングルは、ほとんどがヴィー・ジェイやソノ子会社だったトリーからリリースされていたもののリイシュー盤なので、公式な米国盤ディスコグラフィでは無視されていますし、余り売れてもいません。ビートルズ解散後に、ビートルズの楽曲がジュークボックス用に独自のカップリングでリリースされてもいますが、それらも正式なディスコグラフィではスルーされている様です。
さて、シングル「WE CAN WORK IT OUT / DAY TRIPPER」ですが、米国ではA面の「WE CAN WORK IT OUT」はポールがヴァースを書いてジョンがミドルを書いた本当の「レノン=マッカートニー」共作曲です。ミドル部分でワルツになるアイデアはジョージによるものなので、ジョージもアレンジでは大きく貢献しています。初期とは違ってジョンとポールが全面的に共作した楽曲は減っているものの、此の「WE CAN WORK IT OUT」の様に別々に書いた曲を合体させた共作は解散直前までつづいていました。「WE CAN WORK IT OUT」は、1968年にディープ・パープルが、1970年にスティーヴィー・ワンダーがカヴァーしていて、スティーヴィーのヴァージョンは全米13位まで上がるヒットとなりました。米国ではB面だった「DAY TRIPPER」はギター・リフ中心で主にジョンが書いた曲ですが、ポールが歌い出しを担当していて、近年のライヴでも演奏しています。オーティス・レディングが1966年のアルバム「ソウル辞典(Complete & Unbelievable: The Otis Redding Dictionary of Soul)」でカヴァーしていて、1979年にYMOがカヴァーしたのはオーティス・レディング盤を参考にしているので、カヴァーのカヴァーとなります。
(小島イコ)