ビートルズの米国盤シングルも1965年の終盤となりましたので、ココでまた日本での1965年を振り返りましょう。日本でのビートルズのレコードは、公式盤は東芝音楽工業のオデオン・レーベルからリリースされていたのですが、日本デビューだった1964年だけでシングル13作、EP2作、アルバム3作の合計18作もリリースしています。翌1965年には、ソレにも増して鬼の様に連発してゆきます。まず、シングルは1月5日に14作目「すてきなダンス(I'M HAPPY JUST TO DANCE WITH YOU) / テル・ミー・ホワイ」(日本独自盤)と15作目「アイ・フィール・ファイン / シーズ・ア・ウーマン」を、2月5日に16作目「のっぽのサリー(LONG TALL SALLY) / アイ・コール・ユア・ネーム」(日本独自盤)と17作目「ノー・リプライ / エイト・デイズ・ア・ウィーク」(日本独自盤)と18作目「ロック・アンド・ロール・ミュージック / エヴリー・リトル・シング」(日本独自盤)を、それぞれオデオンからリリースしています。
3月15日には19作目「ミスター・ムーンライト / ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」(日本独自盤)と20作目「カンサス・シティ / アイル・フォロー・ザ・サン」(日本独自盤)を、4月15日には21作目「パーティーはそのままに(I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY) / みんないい娘(EVERYBODY'S TRYING TO BE MY BABY)」(日本独自盤)を、5月15日には22作目「涙の乗車券(TICKET TO RIDE) / イエス・イット・イズ」を、8月15日には23作目「ヘルプ / アイム・ダウン」を、9月15日には24作目「ディジー・ミス・リジー / アンナ」(日本独自盤)を、10月5日には25作目「恋のアドバイス(YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL) / テル・ミー・ホワット・ユー・シー」(日本独自盤)を、11月15日には26作目「ザ・ナイト・ビフォア / アナザー・ガール」(日本独自盤)と27作目「アクト・ナチュラリー / イエスタディ」(米国キャピトルに沿った日本盤)をリリースしています。
1964年のシングル13作もスゴイのですけれど、1965年だけでソレを上回る14作ものシングルが出ていて、10作が日本独自シングル盤です。ちなみに英国オリジナルでは「HELP! / I'M DOWN」が10作目で、キャピトルでは「ACT NATURALLY / YESTERDAY」が11作目(米国では19作目)だったので、日本の27作が尋常ではなかったと分かります。「すてきなダンス / テル・ミー・ホワイ」は映画「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!(A HARD DAY'S NIGHT)」関連では5作目のシングルで、日本ではアルバム13曲中10曲がシングル化されています。それよりスゴイのがアルバム「ビートルズ '65(BEATLES FOR SALE)」からのシングルで、英国オリジナルでは全14曲中1曲もシングル・カットがないのに、「ノー・リプライ / エイト・デイズ・ア・ウィーク」と「ロック・アンド・ロール・ミュージック / エヴリー・リトル・シング」と「ミスター・ムーンライト / ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」と「カンサス・シティ / アイル・フォロー・ザ・サン」と「パーティーはそのままに / みんないい娘」と5作10曲もシングル化してしまったのです。アルバム「4人はアイドル」からも、全14曲から6作9曲もシングルになっています。
更に、4曲入りのEPとして1965年3月5日に3作目「オール・マイ・ラヴィング」(「オール・マイ・ラヴィング」、「恋におちたら」、「すてきなダンス」、「テル・ミー・ホワイ」)を、5月5日に4作目「のっぽのサリー」(「のっぽのサリー」、「マッチボックス」、「アイ・フィール・ファイン」、「スロー・ダウン」)を、6月5日に5作目「ロック・アンド・ロール・ミュージック」(「ロック・アンド・ロール・ミュージック」、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」、「ミスター・ムーンライト」、「カンサス・シティ」)を、12月5日に6作目「ヘルプ」(「ヘルプ」、「涙の乗車券」、「アイム・ダウン」、「ディジー・ミス・リジー」)と、1965年だけで4作もリリースしています。そして、肝心なアルバムですが、1965年3月15日に4作目のアルバム「ビートルズ '65(BEATLES FOR SALE)」を、5月5日に日本では5作目の編集アルバム「ビートルズ No.5」を、9月15日に日本では6作目となる「4人はアイドル(HELP!)」と3作リリースしていて、1965年だけでオデオンからの公式盤を21作も連発しています。オデオンは、ビートルズの新作をリリースしないと死ぬ病に罹っていたのでしょうか。
此の内「BEATLES FOR SALE」と「HELP!」はそれぞれ全14曲入りで曲目は英国オリジナル盤と同じですが、ステレオのみのリリースです。問題の編集盤「ビートルズ No.5」は、A面が、1「のっぽのサリー」、2「シー・ラヴズ・ユー」(ドイツ語ヴァージョン)、3「アンナ」、4「マッチボックス」、5「ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー」、6「シーズ・ア・ウーマン」、7「アスク・ミー・ホワイ」で、B面が、1「アイ・フィール・ファイン」、2「抱きしめたい」(ドイツ語ヴァージョン)、3「チェインズ」、4「スロー・ダウン」、5「オール・アイヴ・ゴット・トゥ・ドゥ」、6「アイ・コール・ユア・ネーム」、7「ジス・ボーイ」の、全14曲入りでモノラル盤のみのリリースです。内容は、1964年にリリースしたアルバム「ビートルズ!」と「ビートルズ No.2!」から弾かれた英国では1963年リリースのアルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」から3曲とアルバム「WITH THE BEATLES」から2曲に、シングルB面のみが1曲、1964年のEP「LONG TALL SALLY」全4曲とシングル「I FEEL FINE / SHE'S A WOMAN」全2曲、ドイツ語ヴァージョン2曲と云う、出鱈目な選曲です。ジャケット写真は、1964年のキャピトル編集アルバム「BEATLES ’65」と同じです。
ソレで、日本独自にシングル「ディジー・ミス・リジー / アンナ」などと云う不可解なカップリングがリリースされていて、ソレは日本ではアルバム「4人はアイドル」に収録されている「ディジー・ミス・リジー」に、日本では1965年まで未収録だった「アンナ」がアルバム「ビートルズ No.5」で初めて発表されたので、当時の日本では最新アルバム2作からのカップリングだったわけです。此のシングルはリアルタイムでタツローが買ったビートルズのシングルで、大瀧師匠が「山下くんが買った、と云うのがスゴイね」と云っていました。前述した様に英国オリジナルでは1曲もシングル・カットされていないアルバム「BEATLES FOR SALE」から5作10曲のシングル・カットが日本独自で敢行された件も、「ノー・リプライ / エイト・デイズ・ア・ウィーク」と「ロック・アンド・ロール・ミュージック / エヴリー・リトル・シング」を2月5日に先行シングルにしていて、3月15日にアルバム「ビートルズ '65(BEATLES FOR SALE)」と同時に「ミスター・ムーンライト / ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」と「カンサス・シティ / アイル・フォロー・ザ・サン」もシングル・カットするなど、商魂逞しいオデオンはキャピトルをも凌駕しています。
便乗盤のポリドールからは、1965年9月21日にEP「ビートルズがやってくる」が出ていて、A面が、1「マイ・ボニー」、2「ホワイ」で、B面が、1「いい娘じゃないか(AIN'T SHE SWEET)」、2「クライ・フォー・ア・シャドウ」と云う内容です。誰だか分からないイラストのジャケットで便乗盤とは云え、A面の「マイ・ボニー」と「ホワイ」はトニー・シェリダンのバック・バンドにすぎないものの歴史的なレコーディング曲ですし、B面の2曲はビートルズだけのレコーディングで、ジーン・ヴィンセントのカヴァー「いい娘じゃないか」ではジョンのドスが効いたヴォーカルが聴けるし、「クライ・フォー・ア・シャドウ」はジョンとジョージが共作したオリジナルのインストゥルメンタル曲なので、かなりビートルズに近い音源とは云えます。ポリドール音源は何度もレコード化されてはいるものの、ビートルズが関わったのは8曲のみです。後に1995年に「ANTHOLOGY 1」に収録されたポリドール音源は、米国のアトコ制作でピート・ベストによるドラムスにスタジオ・ミュージシャンがドラムスをオーバーダビングした音源なので、本来のレコーディングが聴きたい場合には沢山出ているポリドール盤の何れかひとつを買えば事足ります。
(小島イコ)