1965年に公開されたビートルズの2作目の映画「HELP!」の関連曲は、英国では1965年4月9日に9作目で先行シングル「TICKET TO RIDE / YES IT IS」を、同年7月23日に10作目の先行シングル「HELP! / I'M DOWN」を、同年8月6日に5作目のアルバム「HELP!」を、それぞれパーロフォンからリリースしています。シングルB面の「YES IT IS」と「I'M DOWN」は、英国ではアルバム未収録曲です。英国盤オリジナルのアルバム「HELP!」は、A面が、1「HELP!」、2「THE NIGHT BEFORE」、3「YOU’VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」、4「I NEED YOU」、5「ANOTHER GIRL」、6「YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL」、7「TICKET TO RIDE」で、B面が、1「ACT NATURALLY」、2「IT'S ONLY LOVE」、3「YOU LIKE ME TOO MUCH」、4「TELL ME WHAT YOU SEE」、5「I'VE JUST SEEN A FACE」、6「YESTERDAY」、7「DIZZY MISS LIZZY」の、全14曲入りで、レノン=マッカートニー作が10曲、ジョージ作が2曲、カヴァーが2曲です。
ところが、米国キャピトルでは前回までに紹介した通りに1965年4月19日にキャピトルでは9作目(米国では17作目)のシングル「TICKET TO RIDE / YES IT IS」を、同年7月19日にキャピトルでは10作目(米国では18作目)のシングル「HELP! / I'M DOWN」をリリースしたところまでは良いとして、同年8月13日にサントラ盤でキャピトルでは7作目(米国では9作目)のアルバム「HELP!」全12曲入りをリリースして、サントラ盤なのでビートルズが演奏しているのは映画で使われて英国盤「HELP!」のA面に収録されている7曲のみで、残りの5曲はケン・ソーンによるオーケストラとなっているのです。ソレでケン・ソーンがシタールを使っているので、ジョージが興味を示して、間を端折ると、ノラ・ジョーンズが誕生するわけですなあ。サー・ジョージ・マーティンではなくケン・ソーンが起用されたのは、マーティンが監督のリチャード・レスターとケンカしたからとも云われています。ソレでマーティンは、独自に「HELP!」関連曲をインストゥルメンタルにしたアルバムをリリースしています。
ソレは兎も角、英国盤のB面曲を丸々浮かせてしまったキャピトルは、ソノ7曲を1965年6月14日リリースの編集盤アルバム「BEATLES Y」と、1965年12月6日リリースの米国盤アルバム「RUBBER SOUL」と、1966年6月20日リリースの編集盤アルバム「YESTERDAY AND TODAY」と、3作のアルバムに散らして収録してしまうのです。そして、1965年9月13日には後に編集盤「YESTERDAY AND TODAY」に収録される新曲としてシングル「ACT NATURALLY / YESTERDAY」をリリースしたのです。英国では両面共にシングル・カットはされていなくて、1966年3月4日になってEP「YESTERDAY」として4曲入り(「YASTERDAY」、「ACT NATURALLY」、「YOU LIKE ME TOO MUCH」、「IT'S ONLY LOVE」)でリリースされています。「YESTERDAY」は1976年3月8日になって、ようやく英国で「YESTERDAY / I SHOULD HAVE KNOWN BETTER」のカップリングでシングル・カットされています。
米国と日本(1965年11月15日)でシングル・カットされたシングルは、本日7月7日にめでたくも84歳のお誕生日を迎えたリンゴが歌うバック・オーウェンスのカヴァー「ACT NATURALLY」がA面で、ポール作の「YESTERDAY」はB面でした。米国ではリンゴが一番人気があったし、映画「HELP!」の主役もリンゴなので、と云うか、おそらく何も考えないで「ACT NATURALLY」をA面にしたのでしょう。しかし、A面の「ACT NATURALLY」は全米47位までしか上がらず、B面だった「YESTERDAY」が全米首位!となってしまったのです。ソレで、最初から「YESTERDAY」がA面だった様にされてしまったものの、米国でも日本でもジャケットを見ればA面は「ACT NATURALLY」だったと分かります。英国でEP「YESTERDAY」が1966年になってからリリースされたのは、全米首位!になってしまったからでしょう。ソノ「YESTERDAY」ですが、ポール作でレコーディングもポールと弦楽四重奏によるもので、他の3人は演奏には参加していません。
ソレで、コレはビートルズではなくポールのソロなんじゃないのか、とも云われます。しかし、レコーディングは1965年6月14日(米国編集盤「BEATLES Y」リリースと同日)なので、ソノ日にビートルズは「I'M DOWN」と「I'VE JUST SEEN A FACE」を4人で演奏していて、つまりは「YESTERDAY」のレコーディングにも他の3人が立ち会っているのです。それで、4人でポールのみで演奏し歌う事に決めたわけです。そして、ポールしか演奏して歌っていない「YESTERDAY」を、堂々とビートルズ名義で発表しちゃった事実が重要です。コレによって、4人が揃っていなくともビートルズと云う前例ができてしまったので、ビートルズの楽曲の振り幅はとんでもなく広くなったのです。大瀧師匠が「イエロー・サブマリン音頭」をプロデュースしてアタマが固いビートルズ・ファンに罵倒された時に、1965年の「クリスマス・レコード」(ビートルズが4人で「YESTERDAY」を「XMAS DAY」と変えてふざけて大声で歌っている)をかけて「本人たちも、ふざけている」と云っておりました。
(小島イコ)