ビートルズは1965年4月9日に、英国パーロフォンから9作目のシングル「TICKET TO RIDE / YES IT IS」をリリースしました。米国キャピトルも1965年4月19日に同じカップリングでシングル「TICKET TO RIDE / YES IT IS」をリリースしたのですが、キャピトルでは9作目であっても米国では17作目のシングルでした。此のシングルは1965年公開のビートルズ2作目の主演映画「HELP!」からの先行シングルとなったものの、映画「HELP!」は元々は「EIGHT ARMS TO HOLD YOU」と云うタイトルだったので、米国キャピトル盤のレーベルには其のタイトルが載っています。此のシングルは両面共にジョンが主導で書いた曲ですが、A面の「TICKET TO RIDE」はポールがベースだけではなくリード・ギターも弾いていて、ドラムスもポールが考案した通りにリンゴに叩かせています。云わばソングライティングはジョンでアレンジはポールなわけで、ソレが「レノン=マッカートニー」と云うわけです。B面の美しい楽曲「YES IT IS」に関しても、ジョンとポールとジョージの3人でコーラスしているので、ソレが「ビートルズ」と云うわけです。
ジョンが「元祖ヘヴィーメタル」と語ったA面の「TICKET TO RIDE」は映画「HELP!」にもスキーをする場面で使われていて、英国で1965年8月6日リリースの5作目のアルバム「HELP!」にも収録されています。後にカーペンターズがバラードでカヴァーしているので、楽曲自体は美しい旋律だと分かります。アルバム「HELP!」の英国盤は例によって、アナログ盤のA面が映画で使われた曲で、B面が映画用ではない新曲でした。此のシングルのB面曲「YES IT IS」は、英国ではシングルB面のみでアルバムには未収録曲でした。ところが、米国キャピトルでは映画用の7曲は1965年8月13日にリリースしたサントラ盤「HELP!」に収録して、他の英国盤ではB面だった楽曲は「水増しアルバム」へと回してしまったのです。ソノひとつが、1965年6月14日リリースでキャピトルでは6作目(米国では8作目)の編集アルバム「BEATLES Y」です。キャピトルで6作目だから「BEATLES Y」と云う、タイトルからしてやる気が全く感じられませんし、ジャケットの何やら優等生風なポートレートも、もうコノ時期のビートルズとは思えないものですが、シングルもアルバムも軽く100万枚も売れ捲って全米首位になっています。
アルバム「BEATLES Y」の内容は、A面が、1「KANSAS CITY」(「KANSAS CITY〜HEY, HEY, HEY, HEY!」の当時の表記)、2「EIGHT DAYS A WEEK」、3「YOU LIKE ME TOO MUCH」、4「BAD BOY」、5「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」、6「WORDS OF LOVE」で、B面が、1「WHAT YOU'RE DOING」、2「YES IT IS」、3「DIZZY MISS LIZZIE」(「DIZZY MISS LIZZY」の表記違い)、4「TELL ME WHAT YOU SEE」、5「EVERY LITTLE THING」の、全11曲入りです。英国では4作目だったアルバム「BEATLES FOR SALE」からの曲でキャピトルでは4作目だったアルバム「BEATLES ’65」から抜いた6曲(「KANSAS CITY~HEY, HEY, HEY, HEY!」、「EIGHT DAYS A WEEK」、「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」、「WORDS OF LOVE」、「WHAT YOU'RE DOING」、「EVERY LITTLE THING」)に、まだ英国ではリリースされていなかった5作目のアルバム「HELP!」から3曲(「YOU LIKE ME TOO MUCH」、「DIZZY MISS LIZZY」、「TELL ME WHAT YOU SEE」)に、シングルB面「YES IT IS」、そしてアルバム「HELP!」のアウトテイクで英国では1966年12月10日リリースのベスト盤「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES」に収録されるまで未発表だった「BAD BOY」からなっています。
アルバム「HELP!」から英国でのリリース(1965年8月6日)の2か月近く前の1965年6月14日に3曲も先出しさせていて、アウトテイクだった「BAD BOY」まで持って来て、シングルB面も平然と収録しちゃう感覚は、正に米国キャピトル盤ならではなのですが、シングル「TICKET TO RIDE」で分かる様にもうビートルズは新たな世界へと踏み出していたので、キャピトルの「シングルの寄せ集め」的な編集盤には苦い感情を持っていたでしょう。ソレが英国では1965年12月3日リリースの6作目のアルバム「RUBBER SOUL」全14曲入りを、1965年12月6日リリースの米国キャピトル盤「RUBBER SOUL」では全12曲にされて、しかも英国オリジナル盤からは4曲抜いて、アルバム「HELP!」から2曲加えると云う何も考えていない編集盤にされてしまった事で、怒りは頂点に達して「ブッチャー・カヴァー」へと進むわけですなあ。個人的にはキャピトル編集盤もミックス違いも多いのでそれなりに楽しめるものの、アルバム「REVOLVER」全14曲入りから3曲抜いて同じタイトルで出しちゃったのはいただけませんなあ。
(小島イコ)