ビートルズの全米デビューは弱小レーベルであったヴィー・ジェイからで、1963年2月20日にシングル「PLEASE PLEASE ME / ASK ME WHY」(英国では2作目のシングル)が、同1963年5月6日にシングル「FROM ME TO YOU / THANK YOU GIRL」(英国では3作目のシングル)が、同1963年7月22日にアルバム「INTRODUCING THE BEATLES」(英国でのデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」を元にしている)が、それぞれリリースされましたが、リリース当時の1963年には何れもヒットしていません。ヴィー・ジェイがビートルズのマネジャーであるブライアン・エプスタインと交わした契約は、英国では1963年3月22日にパーロフォンからリリースされたデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」(1作目シングル「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」と2作目シングル「PLEASE PLEASE ME / ASK ME WHY」を含む全14曲)と3作目シングル「FROM ME TO YOU / THANK YOU GIRL」までの16曲だけで、翌1964年にキャピトル盤が売れた事に便乗して、ヴィー・ジェイはソノたったの16曲を何度も繰り返しリリースしてゆきます。
1962年から1963年までの英国でのリリースは、まずは1962年10月5日にデビュー・シングル「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」がリリースされて、翌1963年1月11日には2作目のシングル「PLEASE PLEASE ME / ASK ME WHY」がリリースされて大ヒットして、同1963年3月22日にはデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」全14曲(既発シングル4曲も含む)をリリースして全英30週連続首位となりました。同1963年4月12日には3作目シングル「FROM ME TO YOU / THANK YOU GIRL」が、同年8月23日には4作目シングル「SHE LOVES YOU / I'LL GET YOU」が、同年11月29日には5作目シングル「I WANT TO HOLD YOUR HAND / THIS BOY」が、それぞれリリースされて3作共に全英首位の大ヒット曲となり、同1963年11月22日には早くも2作目のアルバム「WITH THE BEATLES」がリリースされて、前記の3作6曲のシングル曲は未収録なのにアルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」に代わって全英21週連続首位で、つまりビートルズが2作合わせて全英51週連続首位となりました。
レコード会社の意向でデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」では既発シングル2作4曲も収録したビートルズは、早くも2作目のアルバム「WITH THE BEATLES」ではシングル曲を一切含まない方針をとっていて、アルバムからのシングル・カットも1曲もありません。しかし、アルバムが高くて買えないファンに向けて4曲入りのEPをリリースしてゆきます。英国盤のEPは4曲入りですが、基本的にはモノラルでシングル盤と同じ45回転です。最初にリリースしたのは、1963年7月12日の「TWIST AND SHOUT」で、デビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」から「TWIST AND SHOUT」と「A TASTE OF HONEY」がA面で、「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」と「THERE'S A PLACE」がB面で、全英4位まで上がっています。つづいて、同1963年9月6日には2作目のEP「THE BEATLES' HITS」をリリースしていて、A面が「FROM ME TO YOU」と「THANK YOU GIRL」で、B面が「PLEASE PLEASE ME」と「LOVE ME DO」です。こちらはシングルA面曲が3曲も入っていたものの全英17位でした。
同1963年11月1日には3作目のEP「THE BEATLES No.1」をリリースしていて、A面が「I SAW HER STANDING THERE」と「MISERY」で、B面が「ANNA(GO TO HIM)」と「CHAINS」と云う、アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」の最初の4曲をそのまんま並べただけと云うテキトーなカップリングでジャケット写真もアルバムと同じで、24位までしか上がっていません。翌1964年2月7日には4作目のEP「ALL MY LOVING」をリリースしていて、A面が「ALL MY LOVING」と「ASK ME WHY」で、B面が「MONEY」と「P.S. I LOVE YOU」で、なかなか良い選曲で全英13位まで上がっています。こちらのジャケット写真もアルバム「WITH THE BEATLES」と同じだし、シングル曲を入れるよりもアルバムの曲を入れた方がファンには喜ばれたのでしょうなあ。ソレを感じ取ったのか、次の5作目のEPはスゴイ事となります。
ビートルズにしてはEPの順位が低く感じられるかもしれませんが、当時はEPもシングル・チャートでの成績だったので、EPだけなら全てが首位だったと云っても良いでしょう。何にしろ、1963年の段階ではビートルズの人気は本国英国や欧州での出来事で、米国ではヴィー・ジェイから出た2作目のシングル「FROM ME TO YOU / THANK YOU GIRL」も鳴かず飛ばずだったのでした。英国では3作目だったシングル「FROM ME TO YOU / THANK YOU GIRL」は、レノン=マッカートニーによる本当の共作で、英国では文句なしの初の全英首位を獲得したシングルだったのですけれどね。しかし、そんな中でエド・サリヴァンが1963年10月31日にロンドンのヒースロー空港でスウェーデン公演から凱旋したビートルズを出迎えるビートルマニアの熱狂ぶりを目撃して、直ぐにブライアン・エプスタインにコンタクトを取り自分の番組に出演させる事になって、事態は大きく変わるのでした。
(小島イコ)