2013年10月14日にポール・マッカートニーは、ソロとしては16作目で、ポール&リンダやウイングスを含めて24作目で、結果的にはヒア・ミュージックからは最後のオリジナル・ソロ・アルバムとなる「NEW」をリリースしました。当時のポールは2012年2月にはジャズ・スタンダード曲のカヴァーを中心にしたアルバム「KISSES ON THE BOTTOM」をリリースして、同2012年12月には同じセッションでレコーディングしていたクリスマス・シーズン向けのシングル「CHRISTMAS KISSES」をリリースしていて、年齢的にも70歳だったので、これからはそうしたソフトな路線でゆくのかとも思われていました。アルバム「KISSES ON THE BOTTOM」は成績的にも全英3位・全米5位・全米ジャズ・チャート首位!と大ヒットしていたし、グラミー賞も受賞しました。ロックンローラーとしてのキャリアならば、ビートルズ時代から数えれば既に50年となっていて、数々の名曲と傑作アルバムを残していたのですから、新作ロック・アルバムをリリースしなくとも誰にも文句は云われない実績が充分過ぎる程にあったのです。
ポールは2010年のアルバム「BAND ON THE RUN」(1973)から「アーカイヴ・コレクション」も始めていて、2011年にはアルバム「McCARTNEY」(1970)とアルバム「McCARTNEY U」(1980)を、2012年にはアルバム「RAM」(1971)を、2013年にはライヴ・アルバム「WINGS OVER AMERICA」(1976)を、2014年にはアルバム「VENUS AND MARS」(1975)とアルバム「WINGS AT THE SPEED OF SOUND」(1976)を、2015年にはアルバム「TUG OF WAR」(1982)とアルバム「PIPES OF PEACE」(1983)と、最初の内は毎年リリースしていました。単なる最新リマスター盤ではなく「デラックス・エディション」ではアルバム未収録音源や映像のDVDや豪華本とセットになった箱でリリースされていたので、ポールもキャリアをまとめに入ったのかとも思われました。ポールが「アーカイヴ・コレクション」を始めたのは、2009年9月9日にビートルズのリマスター盤が出て、1987年の初CD化以来22年もの長期間に渡っていた旧CD時代から2009年リマスター時代へと移行したからでしょう。しかし、ポールは少々豪華にし過ぎていると思います。
そんな中でリリースされたのが、2013年のアルバム「NEW」でした。ジャイルズ・マーティン、マーク・ロンソン、イーサン・ジョンズ、ポール・エプワースと、4人のプロデューサーによる内容は、1「SAVE US」、2「ALLIGATOR」、3「ON MY WAY TO WORK」、4「QUEENIE EYE」、5「EARLY DAYS」、6「NEW」、7「APPRECIATE」、8「EVERYBODY OUT THERE」、9「HOSANNA」、10「I CAN BET」、11「LOOKING AT HER」、12「ROAD」の全12曲入りで、最後にシークレット・トラックで「SCARED」が収録されています。「デラックス・エディション」には、13「TURNED OUT」、14「GET ME OUT OF HERE」ときて、隠しトラックの「SCARED」となっていて、日本盤はSHM-CDで、13「TURNED OUT」、14「GET ME OUT OF HERE」、15「STRUGGLE」と3曲がボーナス・トラックで、隠しトラックの「SCARED」はソノ後に収録されています。何より驚いたのが、コレが2007年リリースのアルバム「MEMORY ALMOST FULL」以来6年ぶりの「オリジナル・ロック・アルバム」だった事です。2013年には、11年ぶり4度目の来日公演も行っていて、現役バリバリのロックンローラーぶりを見せ付けました。
そして、来日公演も終わって翌2014年10月28日になって「コレクターズ・エディション」がリリースされたのです。CD2枚組にDVD付きで、CD1には「デラックス・エディション」の全14曲+シークレット・トラックが、CD2には、1「STRUGGLE」、2「HELL TO PAY」、3「DEMONS DANCE」、4「SAVE US(LIVE)」、5「NEW(LIVE)」、6「QUEENIE EYE(LIVE)」、7「EVERYBODY OUT THERE(LIVE)」の7曲入りで、「HELL TO PAY」と「DEMONS DANCE」はアルバム未収録曲だし、ライヴ音源の4曲は全てが「東京ドーム公演」からです。更に、DVDにはドキュメンタリー「SOMETHING NEW」やニューヨーク公演やロンドン公演の模様やMVが収録されているのです。此の後出しリリースが、ポールの意思だったのか、ヒア・ミュージックのやり方だったのかは不明ですが、まあ、おそらく間違いなくポールが決めていたのでしょう。世界のアイドルで超絶可愛いポールちゃんは、乃木坂46や櫻坂46などでは太刀打ち出来ない「アイドル商法の元祖で本家」なのです。当時は乃木坂46は既にあったけれど、櫻坂46どころか前身の欅坂46もない時代です。
アルバム「NEW」からは、2013年9月2日に先行シングルとして表題曲の「NEW」が配信限定でリリースされていて、日本の配信チャートで首位!になっていて、全米アダルト・コンテンポラリー・チャートでも18位まで上がっています。ビートリーな楽曲で、初めて聴くのに懐かしい新しい楽曲です。演奏はツアー・バンドが中心で、アルバム「NEW」は全英3位・全米3位・日本オリコン2位と大ヒットしています。それにしたって、71歳になって「NEW」と云うコンセプトで新作アルバムをリリースして全世界規模で大ヒットさせちゃうんですから、全く、若い連中は何をしているんだ、と云う話です。配信限定だったので、「THE 7‘’ SINGLES BOX」には72枚目で、A面が「NEW」、B面にジョン・レノンとの若き日を回想した「EARLY DAYS」を収録した新たな7インチ・シングル盤を制作して収録されています。ブートレグ9枚組の「THE 7‘’ SINGLES」では此のシングルで8枚目が終わっていて、次からは最後の9枚目となります。
(小島イコ)