2012年2月6日にポール・マッカートニーは、ソロ名義では15作目(ポール&リンダ、ウイングスを含めて23作目)となるスタジオ・アルバム「KISSES ON THE BOTTOM」を、MPL/ヒア・ミュージックからリリースしました。内容は通常盤全14曲中オリジナルは2曲(「MY VALENTINE」と「ONLY OUR HEART」)で、他の12曲はジャズ・スタンダード曲のカヴァーです。全16曲入りの「デラックス・エディション」も出ていて、そちらには1979年リリースのウイングスのラスト・アルバム「BACK TO THE EGG」に収録されていた「BABY'S REQUEST」のセルフ・カヴァーと、やはりジャズ・スタンダード曲「MY ONE AND ONLY LOVE」のカヴァーが収録されています。つまり、全16曲中13曲がジャズ・スタンダード曲のカヴァーで、しかもポールは新たなる伴侶となったナンシー・シェベルへ捧げた新曲を2曲書いただけで、プロデュースはトミー・リピューマに任せて、音楽監督としてはダイアナ・クラールに編曲も丸投げして、演奏もダイアナ・クラールのツアー・バンドの面々などを起用して、カヴァー曲の選曲さえもトミー・リピューマとダイアナ・クラールとポールの3人で行い、ポールが知らなかった曲まで選んでいます。
ソレはどう云う事かと申しますと、ポールは新曲を2曲書いただけで、アレンジも演奏もせずに、ヴォーカリストに専念してレコーディングしたわけです。アルバムをリリースした直後の2012年2月9日にはハリウッドのキャピトル・スタジオでライヴを行っていて、ソノ映像は「LIVE KISSES」としてメイキング映像と共にDVD化されているので、モノクロ映像でポールが椅子に座ってリラックスして気持ちよさそうに歌っている姿を観る事が出来ます。レコーディングは24曲で、ソノ内の14曲が通常盤に、16曲が「デラックス・エディション」に収録されたのです。つまり、8曲は未発表となったわけです。が、しかし、2012年12月3日に7インチ・シングル「CHRISTMAS KISSES」が「2千枚限定」でMPL/ヒア・ミュージックからリリースされて、残る8曲の内1曲がリリースされたのでした。ソレが「THE CHRISTMAS SONG(CHESTNUTS ROASTING ON AN FIRE) / WONDERFUL CHRISTMASTIME」です。A面の「THE CHRISTMAS SONG」は、ナット・キング・コールのヴァージョンで有名なクリスマス・スタンダード・ナンバーのカヴァーで、アルバム「KISSES ON THE BOTTOM」のセッションでレコーディングされていたのをクリスマス・シーズンまで取っておいたわけです。
此の楽曲はナット・キング・コールの他にも、ドリス・デイ、アリアナ・グランデ、カーペンターズ、セリーヌ・ディオン、エラ・フィッツジェラルド、フランク・シナトラ、ジャクソン5、ジョン・レジェンド、ジャスティン・ビーバー、ルーサー・ヴァンデラス、等々、数多くのミュージシャンがカヴァーしていて、日本では竹内まりやさんもカヴァーしているのでお馴染みかもしれません。そんな超有名曲を、歌手に専念したポールが歌っているわけで、もうそれだけで格別です。B面は、1979年リリースのポール自作のクリスマス・ナンバー「WONDERFUL CHRISTMASTIME」のオリジナル・ヴァージョンがカップリングされているので、配信音源の「THE 7‘’ SINGLES」では重複するのでカットされています。A面の「THE CHRISTMAS SONG」は此のシングルでしか聴けませんし、7インチ・シングル「CHRISTMAS KISSES」は前述の通り「2千枚限定」で、中味は赤盤と緑盤の2種があって開封するまでどちらか分からない仕様だったらしいのですが、何せ数がないのでシングルは入手困難です。ソレが「THE 7‘’ SINGLES BOX」には米国仕様の黒盤で71枚目で復刻されているのですが、此の木箱も「3千セット限定」なのです。コレクターでなければ、配信音源やブートレグCD9枚組の「THE 7‘’ SINGLES」で聴けます。
(小島イコ)